MOST READ

  1. Kid Cudi - Passion, Pain & Demon Slayin' (review)
  2. Clap! Clap! - A Thousant Skies (review)
  3. Eccy――エクシー、7年ぶりのフルアルバムが〈KiliKiliVilla〉からリリース! (news)
  4. yahyel - ──この一風変わった名前のバンドをきみはもう知っているか? ヤイエルが500枚限定の初CD作品をリリース (news)
  5. Tinariwen - Elwan (review)
  6. Visible Cloaks - Reassemblage (review)
  7. interview with IO - KoolBoyの美学 (interviews)
  8. Shobaleader One──スクエアプッシャー率いる覆面バンドがアルバムをリリース、来日公演も決定 (news)
  9. KANDYTOWN - ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)
  10. interview with SHOBALERDER ONE音楽を破壊すべし (interviews)
  11. ROCKASEN──これストリートの夢心地かな、ロッカセンの素晴らしい新作が無料配信です (news)
  12. yahyel(ヤイエル)を聴いたか? - ──マット・コルトンがマスタリングを手掛ける“Once”MVが公開 (news)
  13. Clark──破壊を超えた先の絶景……クラークがニュー・アルバムをリリース (news)
  14. リヴァイヴァルじゃないのだ。 - ──行かないと何かを逃すかもしれない、DYGL(デイグロー)・ジャパン・ツアーは明日から! (news)
  15. Clap! Clap! - Tayi Bebba (review)
  16. Shackleton & Vengeance Tenfold - Sferic Ghost Transmits (review)
  17. interview with Sampha心を焦がす新世代ソウル (interviews)
  18. Dancehall - Raime - Reel Torque: Volume 13, Our Versions Of Their Versions (review)
  19. Random Access N.Y. vol. 90:南アフリカ、gqom(ゴム)ミュージック探訪 (columns)
  20. special talk : Arto Lindsay × Caetano Veloso続・特別対談:アート・リンゼイ×カエターノ・ヴェローゾ──音楽とことば (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Falty DL- You Stand Uncertain

Album Reviews

Falty DL

Falty DL

You Stand Uncertain

Planet Mu

Amazon iTunes

野田 努   Apr 28,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 ジェームス・ブレイクの異例のヒットが意味するところは、オリジナルのダブステップそのものではなくその周辺の音、ジャンルの境界線上にいる者たち、気まぐれなスキゾフレニアの面白さがけっこうな勢いで高まりを見せているということでもある。先日紹介した2562はそのひとりだが、フェルティ・DLを名乗るブルックリンのステッパー、ドリュー・ラストマンもそうした遊牧民を代表するプロデューサーだ。彼が2009年に発表したデビュー・アルバム『ラヴ・イズ・ア・レイビリティ(愛は義務)』は"UKガラージとダブステップとIDMの接合点"と形容された作品で、僕には初期のエイフェックス・ツインやブラック・ドッグといったUKのデトロイト・テクノ・フォロワーたちの作風をダブステップの流儀で再現したアルバムに感じられた。ダブステップらしからぬスタイリッシュなアートワークも目を惹いたし、煙でむせかえるような不健康な地下室で鳴っているダークなそれとは明らかに別の魅力を持っていた。

 『ユー・スタンド・アンサーティン』は、ひらたく言えば『ラヴ・イズ・ア・レイビリティ』のポップな展開だ。女性ヴォーカリストをフィーチャーした曲が3曲収録されているのだけれど、その3曲がよくできている。
 1曲目の"ゴスペル・オブ・オパル"はドリーミーでラウンジーな2ステップ・ガラージで、いかめしいベースのかわりにキラキラしたエレクトロニクスが舞っている。アネカなる女性ヴォーカリストの囁くような歌声も、夢の入口として申し分ない。が、しかし、もしもリスナーがネオ・ソウルを求めているならリリー・マッケンジーが歌っている2曲を繰り返す聴くことになる。"ブラジル"はR&Bヴォーカルを取り入れた2ステップにおけるもっともラヴリーな瞬間を持った曲だが、何よりも我々はいま、ダブステップ時代の新しいディーヴァと出会っているのかしれない......という思いを抱くだろう。リリーが歌うもう1曲、クローザー・トラックの"ウェイティッド・ペンシェントリー"は間違いなくアルバムで最高の曲だ。うねるようなアシッド・ベースラインとジャズ・ピアノの見事な絡みのなかで、アーバン・ブルースが流れている。クラブ・ジャズのDJがこの1曲だけを聴いたら、迷うことなくアルバムを買ってしまうだろう。
 とにかくその3曲がずば抜けて良いので、全12曲のうちその他の9曲には若干の見劣りを感じてしまうかもしれないけれど、"エイト・エイティーン・テン"のコズミックなフィーリング、"イッツ・オール・グッド"のラウンジーなダブ、"ラッキー・ルチアーノ"のレイヴィーなグルーヴ、あるいは狂ったSF映画のサントラのような"ヴォエジャー"、女性のスキャットめいた囁き声とハウスのベースラインの"プレイ・ウィズ・マイ・ハート"......等々、総じて『ユー・スタンド・アンサーティン』はサーヴィス精神旺盛なアルバムと言える。ただし......、これはレコード店やレコード会社が頭を痛める作品でもある。ジェームス・ブレイクがそうだったように、これは明らかにクロイドンのダブステップとは別物で、ジャンル分けに迷う音楽だからだ。が、ここには、アルバムのタイトルが言うように、不確かなもの(アンサーティン)の面白さが詰まっている。

野田 努