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Falty DL

Falty DL

You Stand Uncertain

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野田 努   Apr 28,2011 UP
E王

 ジェームス・ブレイクの異例のヒットが意味するところは、オリジナルのダブステップそのものではなくその周辺の音、ジャンルの境界線上にいる者たち、気まぐれなスキゾフレニアの面白さがけっこうな勢いで高まりを見せているということでもある。先日紹介した2562はそのひとりだが、フェルティ・DLを名乗るブルックリンのステッパー、ドリュー・ラストマンもそうした遊牧民を代表するプロデューサーだ。彼が2009年に発表したデビュー・アルバム『ラヴ・イズ・ア・レイビリティ(愛は義務)』は"UKガラージとダブステップとIDMの接合点"と形容された作品で、僕には初期のエイフェックス・ツインやブラック・ドッグといったUKのデトロイト・テクノ・フォロワーたちの作風をダブステップの流儀で再現したアルバムに感じられた。ダブステップらしからぬスタイリッシュなアートワークも目を惹いたし、煙でむせかえるような不健康な地下室で鳴っているダークなそれとは明らかに別の魅力を持っていた。

 『ユー・スタンド・アンサーティン』は、ひらたく言えば『ラヴ・イズ・ア・レイビリティ』のポップな展開だ。女性ヴォーカリストをフィーチャーした曲が3曲収録されているのだけれど、その3曲がよくできている。
 1曲目の"ゴスペル・オブ・オパル"はドリーミーでラウンジーな2ステップ・ガラージで、いかめしいベースのかわりにキラキラしたエレクトロニクスが舞っている。アネカなる女性ヴォーカリストの囁くような歌声も、夢の入口として申し分ない。が、しかし、もしもリスナーがネオ・ソウルを求めているならリリー・マッケンジーが歌っている2曲を繰り返す聴くことになる。"ブラジル"はR&Bヴォーカルを取り入れた2ステップにおけるもっともラヴリーな瞬間を持った曲だが、何よりも我々はいま、ダブステップ時代の新しいディーヴァと出会っているのかしれない......という思いを抱くだろう。リリーが歌うもう1曲、クローザー・トラックの"ウェイティッド・ペンシェントリー"は間違いなくアルバムで最高の曲だ。うねるようなアシッド・ベースラインとジャズ・ピアノの見事な絡みのなかで、アーバン・ブルースが流れている。クラブ・ジャズのDJがこの1曲だけを聴いたら、迷うことなくアルバムを買ってしまうだろう。
 とにかくその3曲がずば抜けて良いので、全12曲のうちその他の9曲には若干の見劣りを感じてしまうかもしれないけれど、"エイト・エイティーン・テン"のコズミックなフィーリング、"イッツ・オール・グッド"のラウンジーなダブ、"ラッキー・ルチアーノ"のレイヴィーなグルーヴ、あるいは狂ったSF映画のサントラのような"ヴォエジャー"、女性のスキャットめいた囁き声とハウスのベースラインの"プレイ・ウィズ・マイ・ハート"......等々、総じて『ユー・スタンド・アンサーティン』はサーヴィス精神旺盛なアルバムと言える。ただし......、これはレコード店やレコード会社が頭を痛める作品でもある。ジェームス・ブレイクがそうだったように、これは明らかにクロイドンのダブステップとは別物で、ジャンル分けに迷う音楽だからだ。が、ここには、アルバムのタイトルが言うように、不確かなもの(アンサーティン)の面白さが詰まっている。

野田 努