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電気グルーヴ vs 神聖かまってちゃん

電気グルーヴ vs 神聖かまってちゃん

LIQUIDROOM 8th ANNIVERSARY

@恵比寿 LIQUIDROOM

Jul 25, 2012

文:三田格、橋元優歩文:三田格、橋元優歩  
写真:Kenji Kubo   Aug 02,2012 UP
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■電気グルーヴ1 橋元→三田

三田さんへ

 ああ......。三田さんのおっしゃることは、言われればどれもそのとおりだと思います。たしかに、こんなにきっちりしたものなのかというふうには感じました。ちゃんとしたライヴをやるんだなと。なにが起こるかわからないというふうではなかったです。そこは数々つたえられているような不安定で緊迫したステージを観てみたかったとは思います。ただ、そういう事件性が目的化してしまうのは最悪なので、そのときそのときの自然さに合わせてやるのは間違ってないとも思います。以前のような種類のエネルギーとのギャップをまだ肯定的に解決できていないことは、「目をむく」ことにあらわれているわけですから、在り方の模索が大きい課題になっているわけですよね。お客さんの雰囲気はほぼ見守る体勢だと思われますが、そのように流動性の低い客層を抱えることは諸刃というか、「泉谷しげる」を超先鋭化させる方法があればそれもよしと思いますが、なにかすごくオリジナルなやり方で、まためちゃくちゃな層を巻き込んでほしいです。

 「若さ」の問題はわたしも気になりました。それは言わない方がいいというか、当人的にも偽りのある言い方じゃないかと思いました。「目をむく」同様に、過去と比較しての不全感とか焦りとかから出てきているように見えます。

 電気グルーヴのほうもうかがっていきたいと思います。わたしでも知っている有名な曲ばかりでしたが、わー歴史的なユニットのライヴを観た! というミーハーなテンションの上がり方以外には、わたしのテクノ・ヴォキャブラリーの貧困さのせいかあまりどう楽しんでいいかわかっていなかった部分があります。いろんなジョークなんかが散りばめられているのかもしれない、でもきっと自分には何割かしかわかってないのかも、という具合です。そこのところを解説いただけませんでしょうか。トークもおもしろいし、笑顔もピースフルで、居酒屋のマスターが「楽しんでいってよ」って言って調理場に消えていく感じがよかったです。すごく上級の芸をみんなでおおらかに満喫するといったアダルトな雰囲気を感じました。

 後ろの映像が「アシッド・ハウス」とか「ボディ・ジャック」とか身体的に音楽を受け取るようにというようなメッセージをサブリミナルに発信しつづけるのが不思議でした。脳でキャッチするメッセージを用いて、身体的快楽もしょせん脳で感じていることだというようなアイロニーを表現しているのでしょうか?

 あとは「富士山」の大合唱がみるみるうちにビートを骨抜きにして、日本的な一気コールみたいにベタッとしたものへと変貌していったのが、インスタレーションのようでおもしろかったです。


■電気グルーヴ2 三田→橋元

橋元さんへ

 ローリング・ストーンズは70年代にライヴで「サティスファクション」だけはやらなかったらしいんだけど、80年代になるとまた演奏し始めたんだって。要するに「お望みのローリング・ストーンズをお見せしましょう」という境地だよね。いまの電気グルーヴもそれだと思う。石野卓球という人は調子が悪くても絶対にそれを気取らせないから、本当に楽しいのか、楽しそうにしているだけなのか、まったくわからない。とんでもないショーマン・シップの持ち主だよね。の子と違って、音が鳴り出した途端に、自分が真っ先に音のなかに埋没していったように見えたし、それだけでオーディンスも引きずられる。余計なことを考えさせずに、掛け値なしに楽しませてくれたと思います。20周年のときは、あれが5時間続いてもまったく飽きなかった。最近、よく言っている「電気グルーヴでございます」というのは、僕にはどうしても「三波春夫でございます」に聞こえるよね。

 神聖かまってちゃんのライヴが40点ぐらいだとしたら、電気グルーヴは90点以上の満足度だったかな。ただ、結果を知った上で、どっちかひとつしか見てはいけないといわれたら、やっぱり神聖かまってちゃんを観たいなと思うんだよ。それは、いま、かまってちゃんが変化し続けているからで、電気グルーヴはいつ観ても同じともいえるから。こういうのは週刊誌的な興味でしか観ていないとも言えるので、自分を「金髪豚野郎」並みの下衆だと自覚することも必要だとは思う。どっちに転ぶかわからない不安定な「人間」に対する興味が優先して、完成された芸を楽しめないんじゃ、ワイドショーと視線は同じだから。人間が大事なのか、音楽が大事なのか、切り離せるのか、切り離せないのか、といった議論はさておくとして。

 「ジャック・ユア・ボディ」とかはサブリミナル・メッセージじゃなくて、曲に合わせてアシッド・ハウスの曲名を羅列してるだけで、「みんな、あの時は楽しんだよね」ということだと思うよ。『あの花』でアナルたちが「ハム太郎」の落書きを見つけた時と同じ? だから、橋元さんみたいに受け止めてしまう世代がいることはきっと想定してないだろうねw。「身体的快楽もしょせん脳で感じている」のは多分、橋元さんだけで、あの時、ときどき、橋元さんが視界に入ったんだけど、あれだけみんなが踊りまくっているフロアーでたったひとりだけ鍾乳洞かと思うほど微動だにしなかったでしょう。僕は橋元さんがいちばん恐ろしかった。しかも、本人的には「ミーハーなテンションの上がり方」だと言うじゃないですか。計り知れない溝を感じます。電気グルーヴが終わっていくとしたら、こういうところからかもしれない......とか。

 あと、『ガリガリ君』を聴いていて、いまニコ動なんかでアニメのシーンにブレイクコアなんかを勝手に合わせている「作品」は全部、電気グルーヴの拡大再生産でしかないなーとも思った。コミュニケイション機能としての部分を除いてしまったら、20年前と同じことをやっているだけで、なにも新しさはないなーと。電気グルーヴが世の中に訴えかけたことがまだ有効だから、ああいうことになっているんだなと。

文:三田格、橋元優歩