Home > Reviews > Album Reviews > Hudson Mohawke- Butter
春先の6曲入り「ポリフォーク・ダンス」に続くエレクトロニック・アブストラク・ヒップホップのファースト・フル・アルバム。これまでにリリースしてきたヘラルズ・オブ・チェインジ名義のEP群やルーキッドなどに提供したリミックス・ワークなどをまとめて使いまわしたような仕上がりで、いささか新鮮味には欠けてしまったものの、「プリンス+エイフェックス・ツイン」ともいえる音楽性は方向性も定められて、ひとつの終わりとして聴くには充分ではないかと(プリンスに寄ったプロジェクトとしてはオリヴィエ・デイ・ソウル『キロワット』、エイフェックス・ツインに寄ったものとしてはヘラルズ・オブ・チェインジ「シークリッツEP」がグー)。そういう意味ではフライング・ロータスをスラップスティックに解釈し直したクップ・ケイヴ『ガーベイジ・ペイル・ビーツ』(08)と共有しているものは多く、ブラック・ミュージックとヨーロッパ的なディスロケイション趣味が結びつこうとする衝動には一種の高まりが感じられる(シングル単位でいうとドリアン・コンセプトは控えめな方で、ショートスタッフやスターティング・ティースはあっという間にクルクルパー。ジェイミー・ヴェクスドによるスターキーのリミックスもいい線行ってます)。
グラスゴーという土地柄とはどうも結びつかないので、グローバルな気運を体現してると考える方がよさそうだし、昨年、実際に粉川哲夫氏がグラスゴーに行くというので彼のライヴがあったら観て下さいとサジェスチョンしたところ、土地の人でモーホークの名前を知っていた人はひとりもいなかったそうだ(氏は同地で行われた音楽イヴェントのために渡英している)。つまり、どこからどこへ向かう音楽なのか全体的にはまだ把握しきれていないということですね。必要なのはリアクションという時期だということでしょう。前述「ポリフォーク・ダンス」とのダブりはなし。オール・シティからリリースされて、すぐに売り切れたハドスン・モー名義の7インチ・シングル「スター・クラックアウト」は再録(これはドローンとはいわないけれど、プリンスともエイフェックス・ツインとも違う賛美歌風チル・アウト)。オリヴィエ・デイ・ソウルも2曲でヴォーカル参加。
三田 格