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Photodisco

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言葉の泡

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野田 努   Oct 28,2011 UP

 チルウェイヴ、ポスト・ロック、ネオアコ、エレクトロ、シューゲイザーとJ-POP......そういったものがフォトディスコの音楽には混在している。今年の初めにリリースされ、渋谷の某レコード店でベストセラーになったというCDR作を経ての本作『言葉の泡』は、公式では最初のアルバムとなる。日本のポップ史学的な見地から言えば、これは思春期をスーパーカーとともに過ごした世代による最良のベッドルーム・ポップ集のひとつで、UMA UMAの胸がすくような叙情性、エレクトロの下世話さ、そして中村弘二の物静かな幻覚との奇妙な融合と喩えられるだろう。
 アルバムにおいてもっとも印象的な曲のひとつに"盆踊り"という曲がある。ビートはゆっくりと時間を刻み、音数少ないメロウなギターの反復には"間(沈黙)"がある。その"間"にはフィールド・レコーディングによる虫の声がミックスされる。ここで聴ける叙情性、"盆踊り"が表すところは、とりあえず生きていると毎年この時期に感じてしまうあの切ない感覚だ。こうした生活のなかの陶酔感がフォトディスコの音楽の根幹にはある。それがたまたまアメリカのチルウェイヴの初期衝動と近かったという話で、スクリュー(サンプリング)を用いているわけではないし、音楽の方法論としてはまた別物だ。が、フォトディスコは現代のベッドルーム・ポップ・ムーヴメントにおける日本からのアクションのひとつではある。タイトル曲の"言葉の泡"は切ないラヴ・ソングだが、言葉少なく、説明も情念もない。ネオアコのチルウェイヴ的展開とも言えるこの曲は、そして生活のなかの陶酔感を極限にまで引き延ばそうとする。これがフォトディスコの、いまのところの最高の魅力で、そしてその感性において彼の音楽のポップとしての高みがある。

 "フェイク・ショー"や"ゴースト"、あるいは"ミッドナイト"のようなメランコリーとディスコ・ビートを擁する曲、いわばチルウェイヴィな曲もある。ネオンライトのなかを4/4のキックドラムが脈打つ"トーキョー・ナイト"、ダフト・パンクがアンビエントをやったような"アイ"、メロウなギター・ポップをディスコに落とし込んだような"サケ"といった曲も面白い。ポリゴン・ウィンドウの『サーフィン・オン・サイン・ウェイヴ』からアシッド・ハウスを差し引いて、代わりにここ数年のシンセ・ポップ(トロ・イ・モワからウォッシュト・アウト、ジェームス・ブレイクなど)からの影響を注いだような感じというか......。
 もしこの『言葉の泡』を『サーフィン・オン・サイン・ウェイヴ』に喩えられるなら、"Quino-phec"の蜃気楼のようなアンビエントに相当するのは"言葉の泡"のメタン(DJメタルとタンゴによるユニット)によるヘリウム・ミックスだ。8分以上にもおよぼドローンはリスナーを恐ろしく虚無な眠りへと連れて行くだろう(そしてこのリミックスを聴けば、なぜメタルがもう原稿を書けないのか、読者はよく理解できるに違いない)。

野田 努