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Black Dice

Black Dice

Mr. Impossible

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Pekka Airaksinen

Pekka Airaksinen

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Harmonia

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三田 格   Jun 05,2012 UP

 アヴァンギャルド・ミュージックでも実験音楽でもなんでもいいけれど、いわゆるマイナーな音楽には快楽的とは言いがたい音楽が少なくない。快楽の定義も千差万別だろうし、ポップ・ミュージック=快楽的とも限らないので、そこが対立軸ではないはずだとはいえ、それにしても意図がよくわからない音楽が多い。多すぎる。そもそも何を実験しているのか。何と戦っているのか。もしかして聴いた自分が悪いのか。売った店員の責任か。盤を割って中身を調べてもやっぱり理由はわからない。教えて、クルト・ゲロン。なぜなの、ジェームズ・ホエール......(どっちも死んでるか)

 しかし、ときにはあっというほど明快に諧謔的だったり、ユーモラスであることが狙いだとわかるアンダーグラウンド・ミュージックも世にはけっこう存在している。ピエール・アンリやジャド・フェアーは結果的にそう聴こえるだけなのかもしれないけれど、ノイ!やレジデンツ、ホルガー・ヒラーやジャックオフィサーズは笑いを意識していないとはとても思えないし、トム・ハミルトンやナーキー・ブリランなど、どっちでもいいからとりあえず笑いが欲しくて再生してしまう音楽もそれなりの量はある。メルテイブル・スナップス・イット、コズモナウテントラウム、スーパーライフ、GCTTCATT、ビューボニーク......笑いの数が一種類ではない以上、各種取り揃えたくなるのも仕方がない。

 ゼロ年代以降のUSアンダーグラウンドにもこの系譜はしっかりと混在していた。ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!からドゥームなりノイズ・ドローンには流れなかった系統がそれで、それはどこかでクラウトロック・リヴァイヴァルと重なる傾向だったといえるところもある。ヴァス・ディフェレンス・オーガニゼイションからブラン(...)ポス、そして、何よりもブラック・ダイスの軌跡にそれははっきりと顕れている。かつてのハードコアは、デビューから5年も経つ頃には見る陰もなくなり、前作『リーポー』でそのメソッドは確固たるものとなった。さらに『ミスター・インポッシブル』ではいささか様式美といえるほど諧謔性はフォーマット化され、VDOがノイ!で、ブラン(...)ポスがホルガー・ヒラーなら、ブラック・ダイスは明らかにマウス・オン・マースとフザケ方が似てきた。ミニマルというよりも嫌がらせのような反復、ノイズが減って全体にビート指向となり、急にテンションを上げたり下げたりする構成も一歩間違えばクリシェになりかねない。彼らの資質からしてリズムでこれ以上、面白くするには限界があるだろうから、この次が難しいとは思うけれど、いまのところはまだ笑かしてくれる(レジデンツでいえば『インターミッション』(82)の辺りだろうか。新鮮味は薄れたけれど、笑うには充分......みたいな)。

 全曲試聴→http://soundcloud.com/ribbonmusic/sets/black-dice-mr-impossible

 解散したイエロー・スワンズのピート・スワンソンやウルフ・アイズのネイト・ヤングなど、ゼロ年代中期にはノイズ・ドローンの中核にいた人たちがこのところ相次いでエレクトロニック・ミュージックに手を出したり、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレもかくやと思えるバク・バク・ビガップスからkplrのような諧謔系ミニマルが目立ってきたことも、ブラック・ダイスの影響によるものなのだろう。マウサスやカルロス・ジッフォーニがノイズを鳴らしはじめたときとはもう季節感が変わったのである。ここへ来てエアリアル・ピンクがVDOを復活させたことが、その証といえる。

 同じようにしてアヴァンギャルド・ミュージックのバック・カタログをユーモアの文脈で再生させようとする試みもある。スクウィーの中心的存在であるランディ・バラクーダとメシャクがコンパイルしたペッカ・アイラクシネンの発掘音源がそれで、78年から85年までに録音された8曲はどこか現在のスクウィーに通じるものばかりが選ばれている。60年代からスペルマとしてフィンランドのフリー・ジャズを牽引してきたアイラクシネンは、03年に『マダム・アイム・マダム』がコンパイルされてから再評価の気運にのり、昨年はドローンをメインとしたファースト・ソロ『ワン・ポイント・ミュージック』(72)が39年ぶりに復刻された。このまま待望のセカンド・アルバム『ブッダズ・オブ・ゴールデン・ライト』(84)も再発されちゃうのでは......とワクワクしていたら、ファーストからセカンドまでの時期に録音されたマテリアルが陽の目を見るのだから、世のなか、何が起きるのかわからない(アイラクシネンといえば、国内なら京都のメディテイションズか栃木のアート・イントゥー・ライフが扱ってきたものなのに、両者とも完全にスルーで、まさかダンス・カルチャーからこのようなアプローチがあるとは誰も予想していなかったことが如実に窺える。アイラクシネン本人だって、きっとまだ文脈を呑み込めているとは思えない。DJカルチャー=聴く力の勝利だと考えたい)。フリー・インプロヴァイゼイションが往時の基調だたっとはいえ、いわゆる緊張感のある演奏という当時の様式美には習わなかったところがアイラクシネンの存在をこれほど長く闇に葬り去った理由であり、ここへ来て蘇る理由でもあるのだろう。そのユーモアによって。ダンス・カルチャーの文脈から→http://soundcloud.com/perzza/simhaghosha-1983

三田 格