ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Juan Atkins ──デトロイト・テクノの創始者、ホアン・アトキンスが日韓ツアー、来日は13年ぶり
  2. R.I.P. Sensational (Colin Julius Bobb) センセーショナルとの思い出
  3. 自転車日記 - デヴィッド・バーン 著 / 東辻賢治郎 訳
  4. The Durutti Column - Renascent | ザ・ドゥルッティ・コラム
  5. Various - Peace Anthems | レッド・フック・レコーズ
  6. Cornelius ──ドキュメンタリー映像シリーズ第4弾が公開
  7. レイヴ・カルチャー──エクスタシー文化とアシッド・ハウスの物語
  8. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  9. interview with Toru Hashimoto 橋本徹がブラジリアン&ブリージンなコンピに込めた渋谷系の哲学 | 『Free Soul』&『Cafe Apres-midi』最新作をめぐって
  10. HOUSE definitive 増補改訂版
  11. ああ、リンコ、リンコ、リンコ ──菊地凛子主演(&ブレイディみかこの息子出演)の『ラスト・サマー』がイタリア映画祭で上映へ
  12. Columns Techno Walk 大阪~ベルリン、テクノ散歩
  13. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  14. interview with Juan Atkins 愛してるぜ。オレたちはVery Sexy Funkyナイトをともにするんだ。準備をしておいてくれよ!
  15. Kassel Jaeger - Sub Re | カッセル・イェーガー
  16. Columns スクエアプッシャーはいつだってテクノロジーの限界を超えていく ――7月20日(月祝)@昭和音楽大学、特別講義のレポート
  17. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  18. Technics ──SL-1200シリーズ誕生55周年記念、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$UによるDJが配信
  19. 野田 努
  20. Hajime Tachibana ——プラスチックス結成50周年、立花ハジメがニュー・アルバム『dad bb』、12インチ・シングル「ZOUNDS!」をリリース

Home >  Reviews >  Album Reviews > Ice Choir- Afar

Ice Choir

Ice Choir

Afar

Underwater Peoples / Fastcut

Amazon

橋元優歩   Aug 20,2012 UP

 アイス・クワイアーのなかでは、『少女革命ウテナ』と鈴木英人や永井博が奇妙な回路でつながっているらしい。ようやくデビュー・リリースの運びとなった『アファー』のアート・ワークは、鈴木英人と永井博を念頭においたものだということだが、これはよくわかる話だ。デザイン自体はベタな影響関係を避け、現代的な再解釈が加えられたものだが、音はまったくAOR的でテクノ・ポップ(あえてこう記そう)的、かつて彼らのデザインが象徴したものと、現在においても消費されつづけるエイティーズ・ノスタルジーを、かなりストレートに表出するものであるからだ。だが、彼のウェブ・サイトの真ん中に97年の日本のアニメ『少女革命ウテナ』から4つのシーンが抜かれている理由は、ひとまず不明である。

 アイス・クワイアーことカート・フェルドマンは周知のとおりペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートのドラマーとして知られる人物である。彼らは2000年代においてトゥイー・ポップ概念の底を抜いたというか、こんなことをやっていいのか? と筆者のようなリスナーが一瞬ひるんでしまうほどあまりに臆面のないきらきら感で、シューゲイザーからギター・ポップ、ネオアコなど90年代未明のUKインディにまたがった空白地帯に、おそろしいインパクトをもって浮上してきた。カートによるこのソロ・プロジェクトは、そこから15度ほど方角をずらし、ティアーズ・フォー・フィアーズかというような80年代のポップ・ナンバーに、技巧的なエレクトロニクスを組み込んでいる。やはり、まよいも歪みもない。ゲート・リヴァーブをきかせたスネアにふちどられ、シンセが鮮やかにメロディをつむぎ、ジェントル・ヴォイスがソフトにヴォーカルを重ねる。フェルドマン本人はワイ・エム・オーや高橋幸宏のほか、ギャングウェイやスクリッティ・ポリッティ、そしてとくにビル・ネルソンの影響が大きいということを複数のインタヴューにおいて語っているが、なるほどアイス・クワイアーのルーツをよくあかしている。

 しかしおもしろいのは、この『アファー』が、シンセを使わ(え)なかった偽シンセ・ポップというねじれたアイデンティティを隠し持っていることである。玄人耳ならわかるのかもしれないが、筆者の耳には一聴してそんなことはわからない。さぞシンセにもこだわって作っているのだろうと思い、またそう思わせる材料が多いにもかかわらず、「すべてMIDI音源です」ときたものだ。方法自体をたどることに重要度を認めているわけではないようである。エメラルズらのようなシンセ・マニアとは異なり、彼は芯からのポップ・マニアだということだろう。


 『ウテナ』との関連はナゾだと述べたもののなんとなくわかる気もするのは、ピックアップされているのがウテナやアンシーというふたりのヒロインではなく、御影草時という、永遠を手にしようとして永遠に過去にしばられているキャラクターだという点だ。ヒロインたちは力づよく世界の小さな殻をやぶり、果敢に外を目指していく。それに比して、外見も衰えぬままほとんど幽霊のようにその卑小な世界にとどまりつづける美青年たち。その耽美な関係性を描出したシーンを4コマ掲げるのは、フェルドマン自身が自らの惑溺する音に向けた皮肉であるようにも、苦い認識であるようにも思われる。

橋元優歩

RELATED

Pains of Being Pure at Heart Slumberland Records

AmazoniTunes

Pains Of Being Pure At Heart- Days Of Abandon Yebo Music / ビッグ・ナッシング

Reviews Amazon iTunes

The Pains of Being Pure at Heart- Belong Slumberland Records/Yoshimoto R & C

Reviews Amazon