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Fat Freddy's Drop

DowntempoDubFunkSoulTechno

Fat Freddy's Drop

Blackbird

Pヴァイン/Holiday Revolution

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野田 努   Jul 02,2013 UP

 今日は天気が良い。7人編成の大所帯、ファット・フレディーズ・ドロップの音楽からは酒場の活気、さもなければ太陽と土の匂いがするのだが、バンド名はメンバーが揃って摂取したLSDの絵柄から取られている。90年代初頭のレイヴの時代によくあった話だ。紙切れひとつで惑星の軌道に乗って宇宙を彷徨う。冷静に考えて、そんなことは長く続くものじゃない。最近ファット・フレディーズ・ドロップは彼らの母国ニュージーランドでワイン巡りのツアーをやったそうだが、僕もワインのほうが良い。
 彼らはヨーロッパのフェスティヴァルの人気者だそうだ。ヨーロッパのフェスティヴァルといえば、僕の記憶は、どこに行こうが鼻をつく強いハーブの香りと芸術的なまで汚いトイレ、日本と比較して圧倒的にリラックスしているオーディエンスの姿を思い出す。リラックスというか、そこら中でごろごろ寝転んでいる印象だ。いまはどうかわからないが、90年代はそうだったし、ファット・フレディーズ・ドロップはあの怠惰な夏にはぴったりだ。
 グラストンベリー・フェスティヴァルにだってジャズ・ステージがある。クラブ・ジャズ系のバンドも、埃と汗のなかで演奏する。ロック雑誌の表紙を飾るようなインディ・ロック・バンドが他のエリアで演奏している傍らで、せっかくの解放感ある野外にいるというのにわざわざ満員電車のなかに突っ込むようなマネはしたくないと考える連中が、ジャズ系のステージに集まる。ブライトンのフェスティヴァルに行ったときもそうだったし、フランスでもそうだった。そこに行けば、ファット・フレディーズ・ドロップのようなバンドが演奏している。僕は彼らがいることに感謝した。

 『ブラックバード』は、90年代末、ニュージーランドのウェリントンのクラブを拠点に誕生した彼らの、3枚目のスタジオ録音盤だ。ニュージーランドといえばデトロイトから彼の地に越したリクルーズ(デトロイト・テクノのプロデューサー)だろうと取材で訊いたら、メンバーの近所に住んでいるとのこと。彼らはしかも、デトロイト・テクノからの影響を受けていると主張する。言われてみれば、随所にケニー・ディクソン・ジュニア風のねっちこいファンク、デリック・メイやカール・クレイグ風のリズムを見つけることができる。だが、勇ましいブラス隊の音とソウル・ヴォーカル、エレクトリック・ギターやパーカッションが工業都市の冷たさを別のモノに書き換える。
 インナースリーヴには、使っている楽器が写っている。5本のギター、ドラム、ヤマハとコルグのシンセサイザー、ベース、アカイのサンプラー、トランペット、ディレイ、エコーマシン、フェンダーのアンプ......。その裏側では、7人の野郎がそれぞれの楽器を持ってポーズを決めている。写真を見ているだけで、音が聞こえるぞ。ソウルやダブ、ファンクを呑み込んだ、いわゆるエクレクティックなサウンドが。テクノやP-ファンクからの影響があるし、クルーダー&ドーフマイスターのダウンテンポにも似ている。あるいは、ニュージーランドにはよほど美味しいワインがあるのだろう。一杯呑んだら聴覚のバランスに影響を及ぶすような......おっと、これも90年代初頭によくあった話だ。それにいまは90年代リヴァイヴァルだった。

野田 努