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Italians Do It Better

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橋元優歩   Jul 03,2013 UP

 リヴァイヴァリストたちの命は「ダサくなるまで」。なぜそれをいま参照するのか、という批評性にリヴァイヴァルの意義があるのだから、当然だ。シーンがおそらく周期的なものとしてエイティーズ再評価の機運に巡りあわせようとしていた2007年、〈イタリアンズ・ドゥー・イット・ベター〉が鮮やかに提示してみせたエイティーズ・レトロスペクティヴは、ヴィジュアルやコンセプトの徹底的なコントロールの下に成立したひとつのアートとして、際立った存在感を残した。コピーアート風にアレンジされたネオンやファーのスタイリッシュなイメージは、彼らのやりたい音を明確にガイドしたし、イタリア人がうまくやるというセクシャルな「ソレ」にイタロ・ディスコを掛けた秀逸なレーベル名も、彼らが蘇らせようとするヴィンテージなエレクトロ・ディスコをよく物語った。

しかし、だからこそ彼らの「ソレ」(=セックス=ディスコ)は、肉体のレベルではなくコンセプチュアルな次元においてより発揮される。その年リリースされたレーベル・コンピ『アフターダーク』は、一見リッチでグラマラスなボディを持ったダンス・アルバムであるようにみえて、その実スキニーな身体による知的なリスニング・アルバムだった。絶妙につめたく、絶対に間違えない。イタロ・ディスコのベタな模倣では、「ダサかっこいい」ネタ消費の対象として終わっていたことだろう。そして、彼らがあれから6年もの時をまたいでなお間違えないのは、リヴァイヴするものに対するしなやかにして強靭な、「細身」のコンセプトを持っていたことの証である。

......そう、なんと、『アフターダーク』のvol.2がリリースされた。世間はすでにディスコ・リヴァイヴァルな気分でもないというのに、彼らは何をやろうというのだろう、という意表を突くタイミングだったが、まったく危なげない。メンツも変わらず、やっていることも変わらず、ただ、さらに締まっている。パンクやニューウェーヴのスキニーさ、アート・ムーヴメントとしての側面が正しくなぞられているようにも思われた。2007年当初はキマリすぎで鼻持ちならないと敬遠された部分もあったかもしれないが、時間が経つことで等身サイズの評価が見えてくる。

 ミラージュが本当に相変わらずなヴォコーダー使いで展開する"レッツ・キス"はミディアム・スローなディスコ・ナンバー。これを前回と変わらぬ〈イタリアンズ~〉の基準として他を比較してみると、まずグラス・キャンディやクロマティックスからブラス・アンサンブルやファンキーなビートが姿を消していることに気づく。かわりにコズミックで瞑想性を上げた"ポゼスト"や"レッドヘッズ・フィール・モア・ペイン"などがこの第二弾コンピの特徴をかたち作っている。シンメトリーの"ハート・オブ・ダークネス"も硬質でタイト。インダストリアル・ミニマル的なニュアンスをわずかに感じさせ、ひたひたとナインティーズの波がくるぶしを濡らしているシーンの状況を反映するかに見える。ツイステッド・ワイヤーズも同様だ。エメラルズやジャム・シティ後に鳴るべき音として彼らなりに時代と向かい合った、好ましい変化を感じさせる。主宰のマイク・シモネッティはさすがというべきか、1曲だけでそうした今回のコンピのキャラを立てている。
 異色なのはファラー。前回から一貫して、どこかレインコーツなどポストパンクの女流の雰囲気を漂わせているが、今回の抑えめなトーンと機械的なサウンド構築がきれいにハマった。グラス・キャンディやクロマティックスその他にも関わるジョニー・ジュエルのプロデュースが、彼女をふくめた全体に統一感を与えていることを忘れてはならない。

橋元優歩

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