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LAMPGOD, **Ł_RD//$M$

Chopped & ScrewedHip HopR&BVaporwave

LAMPGOD, **Ł_RD//$M$

??LAMPGOD??**Ł_RD// $M$??**$$EXT8PE??

Bandcamp

天野龍太郎   Oct 28,2013 UP

 先週の金曜日、渋谷のハイブリッドな放送局、2.5Dから放送されたプログラム「10代からのエレキング!」の記念すべき第一回目、「いまさらきけないSEAPUNK & Vaporwave」はご覧になられましたでしょうか? 僕はといえば、おおいに楽しませてもらいました。とても興味深い内容だったと思います。
 さて。ヴェイパーウェイヴを巡る対話のなかで、登壇者の竹内正太郎はこのような趣旨のことを言っていました。いわく、ヴェイパーウェイヴはレア・グルーヴを反転させたものだ。レア・グルーヴは忘れられた良い音楽を復活させたが、ヴェイパーウェイヴは忘れられるべくして忘れられた音楽に再び息を吹き込んだ……。
 今回はもしかしたら、その両者にまたがるような作品、かもしれません。

 〈ブートレッグ・テープス〉。ブルックリンで共同生活を営んでいるらしい連中によって今年発足されたバンドキャンプ・レーベル。既に3作のアルバムと1つのDJミックス作品を、MP3+ヴィデオテープ+カセットテープなどの変則的な形式(いまやそれは変則的でもなんでもないのかもしれない)でリリースしている。
 レーベル名としてはふざけているとしか言いようがないこの〈ブートレッグ・テープス〉という名前は、いたって真剣に名付けられたものかもしれないと考えることもできるだろう。それは、この疑問符に包まれたレーベルが発しているとっちらかった音を聴けば、あるいは彼らがアップロードしている猥雑なヴィデオの数々を視聴すればわかるだろう。なぜならここにあるのは剽窃による創作行為だからだ。〈ブートレッグ・テープス〉の作品はカットアップ、コラージュ、サンプリング、そしてチョップト・アンド・スクリュードによって生み出されている。そしてもちろんこのファースト・リリースも例外ではない。

 ヴィデオテープ+カセットテープでリリースされた、LAMPGODとŁ_RD//$M$の共作によるビート・テープ、『??LAMPGOD??**Ł_RD//$M$??**$$EXT8PE??』(あるいは単に『**$$EXT8PE』)は、主にリズム・アンド・ブルースや80年代までのソウル・ミュージック、ファンク、ヒップホップ、もちろんフュージョン、そしてサウンドトラックやテレビ・プログラムのBGMらしきものからの痙攣したコピー/カット/ペースト/チョップ/スクリュー/ループで構築されている。YouTubeからリッピングされたかのような劣悪な音質とテープに起因するヒス・ノイズに彩られたこのショート・ループ中心のビート集は、J・ディラの『ドーナッツ』のディストピア・ヴァージョンだと言ってもいい。しかし、LAMPGODとŁ_RD//$M$はディストピアの世界で笑っている、というよりも、ウィードを深く吸い込みながらポルノ・ヴィデオを観てニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている(それはもしかしたら、ワンオウトリックス・ポイント・ネヴァーのディストピックなヴィデオに近しいものがあるかもしれない)。

 彼らの手つきは明らかにヒップホップのそれだ。とはいっても、このテープにはヴェイパーウェイヴ("**NUBED$$HEET$$??"、 "**BLACKONBLACK??"、 "**LINGERIEaNdICICLE??"、 "**CHEERLEADER_BJ??")とその先を夢見たフューチャー・ファンク("**BABY$$ITTERGET$$CaUGHT??"、 "**INBLOOOM??"、 "**HI$$$$I$$TER??")らしきものも含まれている。つまりこれはヴェイパーウェイヴ以降のヒップホップだ――などと言ったらそれは言い過ぎかもしれない。
 ヴェイパーウェイヴがフラットなカオスの広がる液晶画面の向こう側をまさぐって拾い上げた音楽を気味悪く無機的な清潔感でもってアイロニカルに提出していたとすれば、翻ってフューチャー・ファンクはヴェイパーウェイヴの漂白された清潔感はそのままに、液晶画面の向こう側からなんとかして身体性を引き摺り出し、それをハウス・ミュージックに結びつけて提示している、と言える(「フューチャー・ファンク」という新タームについては、「フューチャー・ファンクズ・ファイネスト」と題された『KEATS//COLLECTIVE Vol. 4』を聞いてほしい)。
 対してLAMPGODとŁ_RD//$M$の試み、ないし〈ブートレッグ・テープス〉の冒険は、その両者とも違う感覚を携えている。すなわち、液晶画面の向こう側のスクラップの山と、現実のゴミ処理場かバーゲンセールのワゴンから引き上げてきた大量のスクラップ・ヴィデオの山との両方を引っ掻き回し、ディグり、そしてそこから取り出したものを切り貼りし、ブロック・ノイズやヴィデオの砂嵐などに因るザラッとした物質性を強調しながらビートへと落とし込む作業――それはもちろん、オールド・スクール・ヒップホップから連綿と受け継がれるサンプリングという技法に他ならない。だが、『**$$EXT8PE』の脱臼したコピペ感覚は実験的な色彩が強い。

 さらに言えば、この『セックステープ』と題された作品は『ドーナッツ』同様に官能的な響きを持っている。ソウルフルなヴォーカルのサンプリングは官能的に訴えかけ、短いフレーズの執拗な反復はセックスの暗喩にも聞こえる。しかしながら『**$$EXT8PE』の官能は、デジタルなスカムとヒス・ノイズとで奇妙に薄汚れている。ポルノやスケート・ヴィデオ、『ロボコップ』、『燃えよウータン』などをめちゃくちゃに切り貼りした猥雑極まるヴィデオや、ポルノ・ヴィデオ・サイトに氾濫するタグめいた曲名(“アジアン・マスターベーション”、“ナイス・セックス”、“ウェブカム・ティーン”、“クリームパイ”、“ヴァージン・ブッカケ”……)など、そこかしこに過剰で直截的なセックスの表象が埋め込まれている。

 邪推をすれば〈ブートレッグ・テープス〉は、2012年にヴェイパーウェイヴが意図的に葬り去った身体感覚を、液晶画面の向こう側ではなく手前にある肉を、ヒップホップという手法とノイズにまみれた自作の磁気テープの物質性でもって取り戻そうとしている、かもしれない。ともあれ、そんなことを抜きにしてもこのカレイドスコピックに移ろっていく官能的で奇妙なビートの反復は、とてつもなく魅力的でユニークで、かつどうしようもないほどに現代的だ。

天野龍太郎