ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 夢で逢えたら:デイヴィッド・リンチへの思い  | David Lynch
  2. Kendrick Lamar - GNX | ケンドリック・ラマー
  3. guide to DUB ──河村祐介(監修)『DUB入門』、京都遠征
  4. Columns ♯10:いや、だからそもそも「インディ・ロック」というものは
  5. Brian Eno & Peter Chilvers ──アプリ「Bloom」がスタジオ作品『Bloom: Living World』として生まれ変わる | ブライアン・イーノ、ピーター・チルヴァース
  6. Panda Bear ──パンダ・ベア、5年ぶりのニュー・アルバムが登場
  7. FKA twigs - Eusexua | FKAツゥイッグス
  8. Terry Riley - In C & A Rainbow In Curved Air | テリー・ライリー
  9. eat-girls - Area Silenzio | イート・ガールズ
  10. Waajeed ──デトロイトのワジード、再来日が決定! 名古屋・東京・京都をツアー
  11. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第1回 悪夢のような世界で夢を見つづけること、あるいはデイヴィッド・リンチの思い出
  12. パソコン音楽クラブ - Love Flutter
  13. Teebs ──ティーブスの12年ぶり来日公演はオーディオ・ヴィジュアル・ライヴにフォーカスした内容に
  14. DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ
  15. ele-king presents HIP HOP 2024-25
  16. さあ、本屋をはじめよう 町の書店の新しい可能性
  17. Shun Ikegai ──yahyelのヴォーカリスト、池貝峻がソロ・アルバムをリリース、記念ライヴも
  18. Lambrini Girls - Who Let the Dogs Out | ランブリーニ・ガールズ
  19. R.I.P. Tadashi Yabe 追悼:矢部直
  20. goat ──日野浩志郎率いるエクスペリメンタル・バンド、結成10周年を記念し初の国内ツアー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Nick Cave- Live from KCRW

Nick Cave

Post-PunkRock

Nick Cave

Live from KCRW

Bad Seed / ホステス

Tower HMV iTunes

久保憲司   Dec 10,2013 UP

 若いみなさんはご存知かわかりませんが、ニック・ケイヴが女性からキャーキャー言われていた時期があるんです。84年から87年くらいまでの間ですかね。エコー・アンド・ザ・バニーメンのイアン・マカロック、ティアドロップ・エクスプローズのジュリアン・コープ、ザ・キュアーのロバート・スミス、バウハウスのピーター・マーフィー、ダニエル・アッシュと並んで。

 シスターズ・オブ・マーシーのアンドリュー・エルドリッチはキャー、キャー騒がれていなかったような気がします。でもシスターズ・オブ・マーシーを辞めたウェイン・ハッセイが結成したザ・ミッションの初来日公演の一列めにアンドリュー・エルドリッチの遺影のような写真を持った女性がいて、ウィエン・ハッセイがぶち切れてました。

 恐ろしい時代です。ピーター・マーフィーとダニエル・アッシュがいちゃいちゃしているシーンが漫画に描かれたりしていました。頽廃ですな。そんななかにニック・ケイヴも入っていたんです。いまやミュージシャンズ・ミュージシャンとしても若いアーティストから尊敬されるニック・ケイヴが、80年代の日本の少女漫画でロバート・スミスと化粧しあっているような漫画を見たら、日本は壊れているなと思うでしょうね。

 何を言いたいかというと、いまの洋楽を支える人たちにはここまでのパワーはないですよね。ジェームス・ブレイクとケンドリック・ラマーが裸で抱き合っている漫画とか書かないです。

 なんてことを思い出していたのですが、なんでかというとこのニック・ケイヴ・アンド・ザ・バット・シーズのラジオでの公開ライヴ(カリフォルニアのラジオ局KCRWの名物企画「アポジー・セッションズ」)がヤバすぎるのです。男が男に惚れました。80年代の日本の女性がニック・ケイヴにキャー・キャー言っていたのがよくわかる感じなんです。

 とにかくいまのニック・ケイヴはヤバすぎます。バースティ・パーティーの頃の彼は、ジム・モリソンがパンクやっている感じに僕には見えたんですが、いまのこのクールさって何なんでしょうね。バット・シーズを作ったときは新しいブルースというか、これを狙っていたんですど、もっと、さらに、超越しました。レナード・コーエンの世界ですよ。パンクのなかからレナード・コーエンの領域に達した人がいたというのは本当にうれしいことだと思います。神のようです。ルー・リードもここまでこれなかったと思います。前作『プッシュ・ザ・スカイ・アウェイ』もよかったですけど、僕はこのライヴをまずみなさんに勧めます。聴いてみてください。震えてください。

久保憲司