ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  2. sugar plant ──2026年を締めくくるライヴが11月21日に開催
  3. Gaku Kiishi ──『サイコ』『オーメン』『シャイニング』『リング』から『8番出口』『バックルームズ』まで、ホラー映画の音楽を分析する1冊が刊行
  4. Bicep ——バイセップが3つの新曲で、フリー・パーティ、レイヴ、サウンドシステム文化を主張する
  5. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  6. The Clash ——ザ・クラッシュ、結成50周年記念ベストがリリース
  7. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  8. Robert Del Naja ──マッシヴ・アタックの3D、二度目の逮捕
  9. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・トーク“セッション” | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  10. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  11. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  12. Malaria! ——80年代初頭の西ベルリンから、ポスト・パンク/アヴァンギャルド・シーンを象徴する最重要バンド、マラリア!再発
  13. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  14. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  15. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  16. sibasi kyoto ──京都のレコード喫茶/カルチャー・スペース「しばし」が展覧会シリーズを始動、初開催はテリー・ライリーのオーディオ・インスタレーション
  17. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  18. R.I.P. 鷲巣功
  19. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  20. 野田 努

Home >  Reviews >  Album Reviews > Moebius Neumeier Engler- Another Other Places

Moebius Neumeier Engler

Moebius Neumeier Engler

Another Other Places

Bureau B

Tower HMV

CosmicExperimentalKrautrock

Moebius Neumeier Engler

Moebius Neumeier Engler

Other Places

Bureau B

Tower HMV

久保正樹   Mar 14,2014 UP

 90年代のテクノ・ブームに再発見されるまでは一部のジャーマン・プログレ〜ニューウェイヴ好きを除いて、知る人ぞ知る存在であったジャーマン・エレクトロニクスの至宝『ゼロ・セット』(1983年)。クラスターのディーター・メビウス、そのクラスターの産みの親ともいえるプロデューサーのコニー・プランク、そしてグルグルのドラマーであるマニ・ノイマイヤーによる、ビキビキの電子音とキレキレのリズムがギリギリまで走り抜ける早すぎた人力テクノにして、いまやみんなが憧れるプレ・テクノの古典中の古典である。 
 そんな彼らが90年代の再評価に気を良くして……なんてことは彼らにかぎってあり得るはずもないのだが、96年にリリースし、今回ジャケットも新たに〈Bureau B〉からリイシューされたメビウス、ノイマイヤー、エングラー名義の作品が『アザー・プレイセス』である。いやはや。これが『ゼロ・セット』に負けず劣らぬじつにパンクなエレクトロニクスを炸裂させるのだからたまらない。87年に他界したコニー・プランクにかわってメール〜ディー・クルップスの鋼鉄王ユルゲン・エングラーをギターとシンセに加えたエクスペリメンタルお遊戯。お馴染みの図太いシーケンス、ビュンビュン飛び回る電子音、そして立体的でいつになくダビーなリズムに動物の鳴き声やアフリカ古来の民族楽器ムビラ(親指ピアノ)を想起させる演奏など、4日間に渡るルール無用のコズミック・セッションはオーヴァーダブなしの一発録り。頭のてっぺんからつま先まで異様なテンションに包まれつつも、かといって肩の凝らないユーモアがそこかしこに見てとれて聴いてとれる。そう、それはまるで幼児の疑問のように突発的でラディカルで、我々の耳の内側にこびりついたつまらない常識をぺりぺりと引っぱがしてくれて、すこぶる気持ちよく愉快である。

 そして、2014年。何の前ぶれもなく18年ぶりにメビウス、ノイマイヤー、エングラーの新作『アナザー・アザー・プレイセス』がリリースされた。これにはびっくり! Phewと小林エリカによるユニット=プロジェクト・アンダーク『ラジウム・ガールズ2011』の音楽を担当したり、アスムス・ティーチェンスとのコラボ作『メビウス+ティーチェンス』(2012年)をリリースしたり、さらにジム・オルークとのデュオやプロジェクト・アンダークのライヴのために来日するなど、ここ最近のメビウスの素晴らしい仕事ぶりは追っていたのだが、やはりこのトリオとなると特別である。18年の空白なんて何のその。原始宇宙で繰り広げられるナイス老人たち(メビウスとノイマイヤーは70代!)のセッションは時空をひょいと飛び超え、過去の音ではなくいまの音で未来を描き出す。う〜ん、変わらない。音とリズムがよろよろと蛇行しながらひたすら脱線を繰り返すという珍異な音体験なのに耳にしっくり馴染むこの感覚。まったく変わらない。
 ノイマイヤーの野蛮で無重力なくせにおもむろにピントを合わせてくる唯一無二なリズム。その上で自由に遊び回るメビウスのエレクトロニクスはますます鋭さと可笑しさを増し、こちらの思考をぐるぐるかき回す。そして、エングラーのトランシーなギターが多分に登場するところも聴きどころ。さらに、酔っ払いの鼻歌のごとく湯船につかってハラヒレホロハレ状態のヴォーカル(エングラーのトーキングボックスかな?)も飛び出したりと、もう収拾不可能。もはや誰にも手がつけられず、かき回された思考が停止する瞬間もしばしば。
 
 次はあるのかないのか。そんなことはどうでもいい。洗練とは対極のはるか彼方から鳴らされる意味も理由もないこの音楽を楽しめばいい。しかし、あらためてこの3人が集まると音の端々は激しくトンガリまくっているのにどこにも角が立たないのだから、まったく不思議以上に不思議である。

久保正樹