ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Kendrick Lamar - GNX | ケンドリック・ラマー
  2. Columns 夢で逢えたら:デイヴィッド・リンチへの思い  | David Lynch
  3. FKA twigs - Eusexua | FKAツゥイッグス
  4. guide to DUB ──河村祐介(監修)『DUB入門』、京都遠征
  5. eat-girls - Area Silenzio | イート・ガールズ
  6. Columns ♯10:いや、だからそもそも「インディ・ロック」というものは
  7. Music for Black Pigeons ──〈ECM〉のジャズ・ギタリスト、ヤコブ・ブロを追ったドキュメンタリー映画『ミュージック・フォー・ブラック・ピジョン』が公開、高田みどりも出演
  8. Brian Eno & Peter Chilvers ──アプリ「Bloom」がスタジオ作品『Bloom: Living World』として生まれ変わる | ブライアン・イーノ、ピーター・チルヴァース
  9. Panda Bear ──パンダ・ベア、5年ぶりのニュー・アルバムが登場
  10. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第1回 悪夢のような世界で夢を見つづけること、あるいはデイヴィッド・リンチの思い出
  11. Saint Etienne - The Night | セイント・エティエンヌ
  12. ele-king presents HIP HOP 2024-25
  13. Columns The TIMERS『35周年祝賀記念品』に寄せて
  14. パソコン音楽クラブ - Love Flutter
  15. Columns ♯9:いろんなメディアのいろんな年間ベストから見えるもの
  16. Lifted - Trellis | リフテッド
  17. デンシノオト
  18. Terry Riley - In C & A Rainbow In Curved Air | テリー・ライリー
  19. Lambrini Girls - Who Let the Dogs Out | ランブリーニ・ガールズ
  20. Teebs ──ティーブスの12年ぶり来日公演はオーディオ・ヴィジュアル・ライヴにフォーカスした内容に

Home >  Reviews >  Album Reviews > Meridian Brothers- Salvadora Robot

Meridian Brothers

CumbiaJazz RockLatinPsychedelic RockWorld

Meridian Brothers

Salvadora Robot

Soundway/Pヴァイン

Amazon iTunes

長屋美保   Jul 18,2014 UP

 先日、コロンビアの女性と音楽の話になったときに、「コロンビアには豊かな音楽があるけれど、クンビアはダサいから聞かない」とバッサリ斬られた。クンビアとはコロンビア発祥の4分の2拍子のリズムを持つラテン音楽である。彼女にとったら、デジタル・クンビアの流行後にイナたい昔ながらのクンビアまでもが、世界各地で聞かれたり、踊られたりしている光景に違和感を感じるらしい。「ボンバ・エステレーオやシステマ・ソラールみたいなコロンビアの伝統音楽をイマっぽく演奏する国際的なグループはいるけれど、現地の若者は誰もクンビアを聞かない」と。しかし、コロンビアの首都ボゴタ出身の6人組、メリディアン・ブラザーズの4枚目のアルバム『サルバドーラ・ロボット』を聞くと、こんな新しい見せ方のクンビアもあるんだから、と彼女に言いたくなる。
 メリディアン・ブラザーズの公式ホームページのプロフィールによれば、彼らは1998年に結成し、ラテン・ロック(とくにアルゼンチンのロック)に多大な影響を受けているそうだ。
 ジャイルス・ピーターソンに評価されて注目を集めた前作『Desesperanza(日本語に訳すと「絶望」)』(2012)では、ラテンと電子音のポップな混合という印象が強いが、今作では、クンビアを前衛ロックやジャズに昇華している。単純にデジタル化させることなく、きちんと演奏しているのがいい。
 ピロポロと呑気なアナログ・シンセの音色が派手に構えているけれど、肝は鋭いドラムだ。奇妙に変調するシンコペーションが気持ちいいが、その音の渦の合間に訪れるタメに、はっとさせられる。クンビアのあいだとジャズのあいだが重なる瞬間は恍惚であり、このグループはすき間の使い方がとても巧い。クンビアだけでなく、コロンビア発祥のバジェナート、ウルグアイのパーカッション音楽のカンドンベ、ペルーのクリオージャ音楽のような南米のアフリカ文化の色彩が豊かに散りばめられている。歌っているのは労働者の悲哀や、男と女のエゴとかで、酒場できかれるような愚痴に近い。つまりは、大衆歌謡の流れを継承しているのだが、音には一筋縄ではいかない姿勢が滲み出ている。ジミ・ヘンドリックスの『パープル・ヘイズ』の陽気に壊れたカヴァーで、アルバムの幕を閉じるあたりにも、その気概を感じるのだ。ちなみに、この音楽は「ごった煮」ではない。トロピカルと反骨の共生への果敢なる挑戦なのである。

長屋美保