ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Black Country, New Road 脱退劇から一年、新生BCNRのドキュメント | ブラック・カントリー・ニュー・ロード (interviews)
  2. interview with Lankum トラッド・イン・プログレス | ──アイリッシュ・フォークの最前線に立つランクムの驚異の新作 (interviews)
  3. interview with Shuhei Kato (SADFRANK) これで伝わらなかったら嘘 | NOT WONKの加藤修平、日本語で歌うソロ・プロジェクトSADFRANKを始動 (interviews)
  4. Jungle ──UKの人気エレクトロニック・ダンス・デュオ、ジャングルによる4枚目のアルバム (news)
  5. Kassel Jaeger - Shifted In Dreams (review)
  6. Tribe Original Metal Lapel Pin ──70年代デトロイトのジャズ・レーベル〈トライブ〉、そのオフィシャル・ピンバッジが登場 (news)
  7. Optimo Music ──〈オプティモ〉からアナーコ・パンクのコンピが登場 (news)
  8. Columns talking about Yves Tumor イヴ・トゥモアの魅力とは何か | Z世代のyukinoiseとarowが語り尽くす (columns)
  9. Pardans - Peak Happiness | パーダンス (review)
  10. Alice Phoebe Lou ──ベルリンの路上から世界へ:南ア出身のSSWアリス・フィービー・ルー来日直前インタヴュー (news)
  11. Peterparker69 - deadpool (review)
  12. U.S. Girls - Bless This Mess | ミーガン・レミー (review)
  13. 燻裕理 ──日本のアンダーグラウンド・ロックのリジェンドがソロ・アルバムを発表 (news)
  14. Alva Noto ──アルヴァ・ノトの新作『太陽の子』は演劇作品のための音楽集 (news)
  15. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか (columns)
  16. Kassem Mosse - workshop 32 | ガンナー・ヴェンデル、カッセム・モッセ (review)
  17. Wendell Harrison & Phil Ranelin ──70年代デトロイトのジャズ・レーベル、〈Tribe〉の代表作が豪華仕様で大復刻 (news)
  18. JULY TREE ──渋谷に音楽をテーマとした小さなギャラリーがオープン、第一回目は石田昌隆の写真展 (news)
  19. Tribe Original Metal Lapel Pin (news)
  20. LEX - King Of Everything (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > White Hex- Gold Nights

White Hex

GothSynth-popTropical

White Hex

Gold Nights

Felte

Amazon

倉本諒   Oct 08,2014 UP

 かつてスラッグ・ガッツ(Slug Guts)というバースデイ・パーティーをグランジにしたようなどうしようもないオーストラリアの田舎モンのバンドが、何を思ったのか誰も呼んでないのにジャパン・ツアーを敢行、なぜか僕がツアー・マネージャーにかりだされ、真夏にクーラーが壊れたハイエースの中、大所帯バンドと途中でナンパしたお姉ちゃんをギュウギュウに詰め込んだ極限状態で全国を巡礼したことがある。もちろん誰が呼んだわけでもないのでほとんどのブッキングがスベっていたわけで、全員の肉体疲労は限界をこし超え、精神状態はヤケクソのメガ・ハイな状態で混沌を極めていた。
 当時、自分たちの新たなレコードのリリース先を探していた彼らを僕は完全にバカにしながら、お前らみたいなアホバンドでも〈サクレッド・ボーンズ〉とかからリリースしたらヒップスターになれるんだろうな、と吐き捨てた。

 翌年、オースティンにいた僕は本当に〈サクレッド・ボーンズ〉からリリースした彼らとSXSWで再会する羽目となり、オーストラリアからの助成金を酒とドラッグに注ぎ込んで豪遊する彼らをいっしょになって鼻下を真っ白にしながら祝福した。彼らの自暴自棄なハシャギっぷりはまさしくふるき良きロックンロールの夢そのものであったといえる。

 そして例外なくそんなものは長つづきはしない。誰かが死ぬより先にバンドが解散するのが幸いである。スラッグ・ガッツは木っ端微塵に砕け散った。

 ギターのジミーが数年前から彼女とともに開始したゴシック・シンセ・ポップ・デュオ、ホワイト・ヘックス(White Hex)が某レコ屋でフィーチャーされているのを見つけてそんな思い出が脳裏を過った。近年、オーストラリアのアンダー・グラウンド・パンク史を綴った著書、『ノイズ・イン・マイ・ヘッド(NOISE IN MY HEAD)』が出版され、そのイモ臭いオージー・パンク美意識を世の中に知らしめたジミーのヒロイックな世界観がこのポップ・アルバムには詰まっている。この絶妙にキモチ悪いトロピカルな感じもいまっぽいな!

倉本諒