ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 忌野清志郎さん
  2. Columns 高橋康浩著『忌野清志郎さん』発刊に寄せて
  3. Tanz Tanz Berlin #3:FESTIVAL WITH AN ATTITUDE ―― 'FUSION 2011'体験記
  4. R.I.P. Brian Wilson 追悼:ブライアン・ウィルソン
  5. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  6. Columns 対抗文化の本
  7. R.I.P.:Sly Stone 追悼:スライ・ストーン
  8. dazegxd ──ハイパーポップとクラブ・ミュージックを接続するNYのプロデューサーが来日
  9. Columns The TIMERS『35周年祝賀記念品』に寄せて
  10. These New Puritans - Crooked Wing | ジーズ・ニュー・ピューリタンズ
  11. Ches Smith - Clone Row | チェス・スミス
  12. world’s end girlfriend ──無料でダウンロード可能の新曲をリリース、ただしあるルールを守らないと……
  13. Columns The Beach Boys いまあらたにビーチ・ボーイズを聴くこと
  14. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  15. RC Succession / Kiyoshiro Imawano ——レア音源収録も嬉しい、RCサクセション / 忌野清志郎の「ロックン・ロール」ベスト盤のリリースが発表
  16. 忌野清志郎 - Memphis
  17. MOODYMANN JAPAN TOUR 2025 ——ムーディーマン、久しぶりの来日ツアー、大阪公演はまだチケットあり
  18. interview with Mark Pritchard トム・ヨークとの共作を完成させたマーク・プリチャードに話を聞く
  19. Swans - Birthing | スワンズ
  20. Sun Ra ——生涯をかけて作り上げた寓話を生きたジャズ・アーティスト、サン・ラー。その評伝『宇宙こそ帰る場所』刊行に寄せて

Home >  Reviews >  Album Reviews > White Hex- Gold Nights

White Hex

GothSynth-popTropical

White Hex

Gold Nights

Felte

Amazon

倉本諒   Oct 08,2014 UP

 かつてスラッグ・ガッツ(Slug Guts)というバースデイ・パーティーをグランジにしたようなどうしようもないオーストラリアの田舎モンのバンドが、何を思ったのか誰も呼んでないのにジャパン・ツアーを敢行、なぜか僕がツアー・マネージャーにかりだされ、真夏にクーラーが壊れたハイエースの中、大所帯バンドと途中でナンパしたお姉ちゃんをギュウギュウに詰め込んだ極限状態で全国を巡礼したことがある。もちろん誰が呼んだわけでもないのでほとんどのブッキングがスベっていたわけで、全員の肉体疲労は限界をこし超え、精神状態はヤケクソのメガ・ハイな状態で混沌を極めていた。
 当時、自分たちの新たなレコードのリリース先を探していた彼らを僕は完全にバカにしながら、お前らみたいなアホバンドでも〈サクレッド・ボーンズ〉とかからリリースしたらヒップスターになれるんだろうな、と吐き捨てた。

 翌年、オースティンにいた僕は本当に〈サクレッド・ボーンズ〉からリリースした彼らとSXSWで再会する羽目となり、オーストラリアからの助成金を酒とドラッグに注ぎ込んで豪遊する彼らをいっしょになって鼻下を真っ白にしながら祝福した。彼らの自暴自棄なハシャギっぷりはまさしくふるき良きロックンロールの夢そのものであったといえる。

 そして例外なくそんなものは長つづきはしない。誰かが死ぬより先にバンドが解散するのが幸いである。スラッグ・ガッツは木っ端微塵に砕け散った。

 ギターのジミーが数年前から彼女とともに開始したゴシック・シンセ・ポップ・デュオ、ホワイト・ヘックス(White Hex)が某レコ屋でフィーチャーされているのを見つけてそんな思い出が脳裏を過った。近年、オーストラリアのアンダー・グラウンド・パンク史を綴った著書、『ノイズ・イン・マイ・ヘッド(NOISE IN MY HEAD)』が出版され、そのイモ臭いオージー・パンク美意識を世の中に知らしめたジミーのヒロイックな世界観がこのポップ・アルバムには詰まっている。この絶妙にキモチ悪いトロピカルな感じもいまっぽいな!

倉本諒