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Sean Mccann

Experimental

Sean Mccann

A Castle Popping

Recital

倉本諒   Jan 08,2015 UP

 ショーン・マッカン。マスタッシュを蓄えた坊やのような風貌、父のお古のような非現代的でサイズ合わないワードローブに身を包み、シガーとコニャックを愛する青年ショーンは、僕がLAで出会った人物の中でももっとも妙な男だ。いや、LAの人間なのにウィードを吸わないから妙って言ってるわけではない。ショーンの美意識は時代性に左右されない普遍的な輝きをつねに放っているのだ。
 膨大な量のCD-Rとカセットによる自主リリースは、同時代のLAローカル・アーティストの精力的な活動のアーカイヴとは少し異なる趣きにも感じられるのだ。たとえば属するシーンであったり、ともに切磋琢磨する他のアーティスト(おそらくマシュー・サリヴァンがショーンにとってのそれだが)が判然としない。同時代のアーティストからほとんど影響を受けていないと言っても過言ではないのだ。
 孤独こそが奏でることのできる美しき旋律。言い過ぎだろうか。また、職人芸とも呼べるマスタリング・ワークスにも定評があり、現在のUSエクスペリメンタル・シーンの影の立役者でもある。

 とはいえ、短い時間であったけれど、彼といっしょに暮らしていて、実際にショーンが同時代のアーティストにいれこんでいる印象はなかったし、LAらしい快楽的なヴィジョンを求めている趣きもないし、LAFMSのようにカリフォルニア的ユルさをもって実験音楽に臨んでいるわけでもないのは知っている。わからないのはあの若さでこれほどまでストイックかつアカデミックに現代音楽を探求する彼の孤独だ。

 トロイ・シェーファー(セカンド・ファミリー・バンド、ワームズ・ブラッドなどなど)のソロ作品やアイデア・ファイアー・カンパニーなどをリリースするショーンの嗜好を具現化したレーベル、〈レシタル(Recital)〉から間もなくリリースされる彼の最新アルバムを一足先に拝聴させていただいているが、これが大作である。異なる時と場で制作された本作──スペインのアルメリアに出張中、タコとオリーヴを食べながらワインとチーズを嗜みつつ、ホテルの一室でUSBマイクから採取したヴォーカルを過度にPCでプロセシングしたものをテープに落とし込んでさらに弄び、異国情緒を表現したピアノ旋律を重ねた異常なトラックで幕を開け、ジョン・ケージの『層状のエッセイ』に多大に触発されたヴォイス・ワークスへつづく。そして、カナダにてザ・シン・エッジ・ニュー・ミュージック・コレクティヴ(the Thin Edge New Music Collective)へ初めて自ら楽譜を書き上げて演奏を依頼した、数学的ルール下にあるシーケンスを用いた意欲作によって本編はクライマックスを迎え、もっともショーンの心象風景に、ドライかつ孤独に迫るピアノ・ワークスで幕を閉じる。

 マシューデイヴィッドからハウ・トゥ・ドレス・ウェルまで、現代のUSインディ・アーティストが影響を声高に語るショーンの最新作、心に染み入るぜ。

 それから、異国の地、異なる言語メディアでコッソリと謝ります。冷蔵庫の食べ物を盗み喰いしていたのは僕です。ショーン・マッカン、だって君が買ってくるものが一いちばんおいしそうだったからね。

倉本諒