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Damon & Naomi

Indie Rock

Damon & Naomi

Fortune

20/20/20

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岡村詩野   Mar 09,2015 UP

 デーモン&ナオミのデーモン・クルコウスキーが運営する『イグザクト・チェンジ(Exact Change)』が発刊してきたフリーのジン(iTUNESのアプリで無料DLできる)がなかなかおもしろく、昨年は気がついたら読むようにしていた。『Exact Change』とは、最近ではルイ・アラゴンやアントナン・アルトーなど、デーモンとナオミが心酔するシュルレアリズムやダダイズムを中心とした作家を新装丁による復刊というスタイルで紹介している出版社。デーモンは自身の音楽活動との関連を補完する目的も兼ねてその出版社と同名のデジタル・フリー・ジンを発刊してきたようだが、決してコンテンツは多くないものの、これまでにステフィン・メリット(マグネティック・フィールズ!)やジュリア・ホルターらが執筆してきており、14号にはキム・ゴードンの詩やジム・オルークによるコラムや写真も掲載されていた。東京の風景を撮影したジムの写真などは彼の目線があくまで猥雑な風景を捉えていたりして、デーモン&ナオミと交友関係にあるそうした著名なアーティストもここでは自由に発信しているようでなかなか興味深い。

 さて、そのジンの同じ14号に掲載されていたのが、ナオミ・ヤンが制作した約30分のショート・フィルムと、彼女自身の作品解説。映像作品は30分ほどのサイレント・ムーヴィーだが、ちゃんと主演俳優(ノーマン・フォン・ホルツェンドルフ)を起用したもので、2011年12月にツアーでたずねたイタリアのタリンのヴェニューが古い映画館だったことからアイデアが思いつき、ナオミとその主演のノーマンのそれぞれの父親がともにここ数年の間に亡くなったことを一つのテーマに制作した、というようなことが綴られている。実際に見ると、もちろんセリフなどはなくストーリーもとくにあるわけではなく、バックでデーモン&ナオミによる凛々しく美しいアコースティック・ナンバーが淡々と流れていく、という具合。もともと映像を喚起させる余地を残した、音の空間への侵蝕を描いたような音作りがデーモン&ナオミの魅力ではあってきたが、こうして本人作のフィルムが重なり合うと、何かとサイケ・フォークと評される彼らのすべての作品に共通して秘められたテーマはじつはこの映画そのものだったのか! と気づかされる。

 そのショート・フィルム『フォーチュン(Fortune)』のために作られたアルバムが本作。というより、その映像のバックで流れている曲をそのままオーディオ作品としてパッケージ化したものと言っていいだろう。サントラというよりも、映像と一体になった音楽集と捉えるべきで、とりたててこれまでの彼らの作品と距離があるわけではない。1曲1曲は1分台から長くても5分程度の短めのものが11曲集められており、デーモンとナオミそれぞれのヴォーカル曲もあればインストもあり、そのインストがちょっとしたインタールードのようにもなり、音だけ聴いていても、脳裏が映像へ自然を誘われるような作りになっている。曲はすべて二人によるオリジナル。アコースティック・ギターは時に柔らかに、時にシャープにつまびかれ、エレクトリック・ピアノの瑞々しい音色が、二人の穏やかなハーモニーの中でノスタルジックな色彩を放つ。さらにはドラムのシンバルやブラシによる音のさざ波が遠い記憶を刺激し、最終的にフィルムの中にあった深い森の中で先祖(?)の写真をめくる場面、部屋の壁の肖像写真を見つめるシーンが見事に想起されていくという鮮やかな連動。そこでわれわれは気づくのだ。何かと“家族”を実感させる場面が多く登場するこのフィルムさながらに、そうした家族や仲間とのつながり、慈愛のようなものを過剰になることなくそっと刻み込んでいく作業。それこそが寡黙ながらもかたい絆で結ばれたカップルとして知られるデーモン&ナオミの一貫したテーマなのではないか、と。
 絆が結ばれたり切れたりする営みを、時の流れに逆らわないように受け入れていくかのような佇まい。サイレント・フィルム『フォーチュン』はそうした誰にでも訪れる日常をマジカルにデフォルメしたものでもある。そこに“幸運”“財産”という意味を持つタイトルを与えた彼らのヒューマニズムに、私は静かにノックアウトさせられてしまうのだ。

岡村詩野