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ライヴ盤だが、歓声はない。そういえば、トーフビーツはライヴ盤でもないのにそれを最初に持ってきていたが、OYAときたら、その真逆。ライヴ盤であるのに関わらず、熱狂を、あたかも隠蔽するかのようだ。このライヴ演奏の録音物は、現場で聴いている印象とはずいぶん違って聴こえる。
冒頭の曲“ROPE meditation ver.”は、ライヴでは、わりとピッチが速く、クラウス・ディンガー的な、つまりノリの良いミニマル・ビートを基調に演奏される曲であり、フロアの温度を上げる曲だが、しかしどうだろう、この静かなはじまり、この地味なはじまり、渋いはじまり、ある意味寂しいはじまり、言ってしまえば孤独な姿……は。
それはこのバンドが望んだ姿でもる。
72〜73年ぐらいのクラスター/クラフトワーク/ノイから2015年のOYAは繫がっている。時間軸を突き抜けて、この素晴らしいアートワークが暗示するように、暗い宇宙の惑星へと着陸したのだ。
“見えないルール”もライヴでは踊りやすい曲だ。本作においてもそのグルーヴは伝わるが、出戸学の歌詞からは、やはりどうしても「醒め」を感じないわけにはいかない。性格的なものもあるのだろうが、しかし、まあ熱いとは言えない。そして、「醒め」こそがOYAであることはいまさら言うまでもないだろう。醒めながらにして燃える……
OYAのライヴは、いくら気持ちが高揚して、いくらフロアが沸騰しても連帯感などは、まあ生まれない。みんな勝手に盛り上がれと。そう、勝手に、だ。泣けるくらいに空しい“夜の船”……。
このライヴ盤は、彼らにとってはひとつの節目なのだろうが、ある意味2015年を象徴しているのかもしれない。音楽に関して言えば、わりとおとなしかったこの1年。若いDJも相変わらず昔のハウスを探している。ジェイミー・XXのソロ・アルバムも、バック・トゥ・ベーシックなこの時代の産物だ。かつての高波もいまや穏やかに岸辺へと達して、ぼくたちも恐る恐るそこに近づく必要はない。
だからなのだろうか、このライヴ盤では出戸学の歌がフィーチャーされているように感じる。クラウトロックは最終的に「言葉」よりも「音」だったが、OYAは「歌」も「音」もどちらも聴かせたいのだろう。ならばその「歌」は、彼らの新しいアドヴェンチャーにおいてどのような意味を持つのだろうか。
それを知るのは楽しみでもあり、ちょっと恐くもあり……本当に、どこに向かうんだろうなぁ。とりあえずいまは、アルバムの最後から2曲目の“ROPE long ver.”の、そう、現代に生まれた“星空のドライヴ”と敢えて言おう、この曲のどこまでも目の前に広がる未知の景色にワクワクしていればいい。大丈夫、着陸したロケットにはキミも乗っている。だが、ロケットがこの先どこに向かうのかは、まだ誰にもわからない。
野田努