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ダニエル・クオン

Indie PopPsychedelic

ダニエル・クオン

ノーツ

Pヴァイン

Tower HMV Amazon

増村和彦、松村正人   Nov 30,2015 UP
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Ha Ha, Just notes 増村和彦

 ──『ノーツ』というアルバム・タイトルが象徴する掌編的小曲は、集合体となって、永遠に未完のまま無限に続く可能性を燻らせている。

 Pヴァインのオフィシャル・インフォにも「ポピュラーミュージック症の重篤患者」とある通り、彼の音楽的な素養には驚くばかり。アルバムに収録された小曲はトラック数の数倍に及ぶというメロディ・メイカーぶりはビートルズを彷彿させるほどであるし、奇抜でありながら普遍性を身に纏うアレンジやミックスにキース・オルセンやカート・ベッチャーを重ね合わせるかもしれない。その手のことは、枚挙に暇がないが、裏側から対象を眺めるような観察観の鋭さは、言わば「aに対するa´」を勝ち得ている。作品からaを探し出すことは簡単かもしれないが、さまざまな音楽遺産の中から彼のa´を見出した時一つの幸福感を味わえるに違いない。それは同時に、音楽遺産の上に新たな視点を提示してくれる。
 そのような経験的な音楽の領域に説得力を持たせているのが、詩的な領域だ。何もコンセプトや歌詞のことではない。各曲は物語としては掌編的に完結していくが、そこにカタルシスはない。不満なき完結はある意味では死を意味する。はちきれんばかりのリビドーが(#5“mr.kimono”の頭のローズ・ピアノなんて手で掴めそうだ)、浄化されることなくアルバム全体を流れつづけることによって、長編のようないつ終わるとも知れない味わいを持たせている。タイトルの「note」と「複数形」の意味をそこに見た気がした。

 彼にそんなことを言ってもきっと「haha, just notes」と言うはずだ。それはそうにちがいない。矛盾するように同居するムードの気楽さが作品をしてベタつかせていない。各所に散りばめられたフィールド・レコーディングが、自己の中に入り込もうとするものでなく、映画の1コマのような効果を与えていることも象徴的だ。時に顔を出すシニカルな側面にも深刻さはない。これもタイトルが示すところであろう。

 たしかに、このアルバムにハイライトやメッセージ性はないかもしれない。彼の場合は、さまzまな倒錯や幻想の形態化自体がユーモアや物語を帯びながら音楽をなしていくところがあるように思う。それは、自己満足の空しい作業かもしれないが、閉ざされた空間で日曜日にしか愛好されない音楽の中にあって、稀有な存在であり、われわれはそのようなものに心酔するはずだ。

 ……なんだか難しいように書いてしまったかもしれないが、最後に一つ。ここまで歌が聴けるアルバムもなかなかないだろう。

増村和彦

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