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Kerridge

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Fatal Light Attraction

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デンシノオト   Mar 23,2016 UP

 サミュエル・ケーリッジの新譜『ファタル・ライト・アトラクション』が、カール・オコーナー(リージス)主宰の〈ダウンワーズ〉からリリースされた。〈エディションズ・メゴ〉が送り出した刺客イヴ・ドゥ・メイの新譜と並んで、2016年初頭の重要トピックといえよう。これらの作品にはインダストリアル/テクノのモードを刷新する新しさがあるように思える。それは何か。ひとつは人間以降の世界への渇望ともいうべき終末論的な雰囲気が濃厚であること。さらには、そのアトモスフィアを体現するために、サウンドの分裂性や分断性がより推し進められ、テクノの領域に強烈なノイズが侵食していること。とくに『ファタル・ライト・アトラクション』は、その傾向が非常に強い。まさに、闇の中に生成する光とノイズの饗宴だが、ベルリンで開催されたアブストラクトでモダンなテクノ・ミュージックのフェス〈ベルリン・アトーナル〉でのパフォーマンスを元にしているという点も大きな要因かもしれない。

 〈ベルリン・アトーナル〉は、ディミトリ・ヘーゲマンにより1982年から開催され、ベルリンの壁が崩壊した1990年にその歴史に幕を下ろした「伝説」のエクスペリメンタル・ミュージック/テクノ・フェスで、2013年に23年ぶりの復活を遂げている。
 2015年の同フェスにおいては、トニー・コンラッドとファウストの名盤『アウトサイド・ザ・ドリームシンジケート』のパフォーマンスをヘッドライナーに、リージス、ペダー・マネーフェルト、モーリッツ・ヴォン・オズワルド、マイク・パーカーらのパフォーマンス、カンディング・レイとモグワイのバリー・バーンズの競演、そして日本からはリョウ・ムラカミを迎えるなど、じつに見事なアーティスト・キュレーションで話題を呼んだ。しかも会場は、2014年に続き原子力発電所跡地=クラフトヴェルク(現在はディミトリ・ヘーゲマンの〈トレゾア〉がある建物内にある工業スペース)という。

 ケーリッジのライヴ・パフォーマンスの模様は、映像でも(わずかな時間だが)観ることができる。会場である原子力発電所跡地=クラフトヴェルグは、まるで西欧の廃墟となったカテドラルのようなダーク・ロマンティックな雰囲気を漂わせており、まさに完璧なロケーション。その巨大な天井の高さは日本では再現不可能とも思えるほどで、薄暗い巨大な空間に縦に長くそびえる純白のスクリーンに投影される光と影と音響のコントラストが途轍もなくクールだ。これは会場で体験してみたいという欲望を強く持ってしまう。

 このアルバムには、そんな彼のパフォーマンスの記録が冷凍保存されている。高圧的な電子ノイズと、歪んだアジテーション・ヴォイスと、性急なリズムによって脳髄を刺激するようなサウンドは、この会場からの影響も大きいとも思えるが、しかしもともとケーリッジの音楽/音響の中に炸裂していた終末論的な思想とフィードバックを起こした結果でもあるのだろう。私などは、その融合の結果として、本作のようなインダストリアル/テクノ「以降」の現在を象徴するような作品が生まれたのではないかと想像してしまう。

 1曲め“FLA1”からして凄まじい。高周波電子ノイズとアジテーション・ヴォイスのループとレイヤー、錆びた鉄を打つかのような打撃音、生々しい電子音、性急なキック、強烈な電子ノイズが鼓膜を強烈に刺激する。このような音こそ、2010年代のインダストリアル/テクノのモードを刷新するサウンドではないか。ノイズから律動へ。アタックから絶滅的光景へ。光の律動(爆心地?)のような終末的な音響。不穏な世界の空気を、モダン/クールなアートフォームにトランスレーションしてきた先端的なインダストリアル/テクノが描き出す光景は、いま、別の領域へとシフトしつつある。光の臨界点の中で。

 それほどまでに、このアルバムが放射している光の刹那のようなノイズには新しいモードを感じるのだ。もはやインダストリアル/テクノというよりも、パワーエレクトロニクス/テクノとでも形容したいほどである。リリースされたばかりのジェノサイド・オルガンの新譜(最強にして最高)とともに聴いてもまったく遜色がない(とあえていってしまおう)。

 2010年代的なインダストリアル/テクノのネガティヴ・モダン・モードは、いま、刷新されたのかもしれない。怒りと衝動、それを俯瞰する人類絶滅以降の冷徹さ。光。絶滅的。そんな「いま」の気分とモードが、このアルバムには、たしかにある。 だが、それは世界不穏そのものであり、いま、西欧社会がクラッシュしつつあることの反映でもあるはずだ。そう、音楽は世界の無意識を映し出す鏡なのだから。

デンシノオト