Home > Reviews > Album Reviews > Savage Young Taterbug- Shadow of Marlboro man
これまで別名義も含め、気の向くままにカセット音源を発表してきた──ウェット・ヘアーのショーン・リードによるアートワークとプリントが美しいレーベル、〈ナイト・ピープル〉から──サヴェージ・ヤング・テイターバグが満を持してヴァイナル作品を発表。この作品は現在のローファイ・アメリカーナの記念碑となるだろう。
もう3年も前のものになるがテイターバグやトレーシー・トランスのツアー日記から彼らの生活を改めて垣間みてみよう。
〈ゴーティー・テープス(Goaty Tapes)〉のザリー・アドラーは、彼らのように拠点または定住地を持たない表現者を“カジュアル・ジャンク”と呼び、少し前にその表現と生活を紹介したカセット・コンピレーションやジンを出版していた(http://goatytapes.com/#!/record/casual-junk/)。こちらは醜悪なLAアートブック・フェアにて偶然遭遇したザリーより購入した。20ドルは暴利だがトレーシー・トランスをはじめオルファン・フェアリーテイル(Orphan Fairytail)、ロシアン・ツァーラグ(Rusian Tsarlag)などの世界各地の流浪アーティストが共有/昇華させる創造力をまとめてあるので、このテイターバグの『シャドウ・オブ・マルボロマン(Shadow of Marlboro Man)』を聴いて仕事を放擲する考えが浮かんだ人は読んでみるといい。
ホーボー、ビートニク、ヒッピー、ドリフターといったホームレスのサブカルチャーはアメリカ人の開拓精神を体現しているのである。時に車の荷台なり長距離キセルの貨物列車なりで揺られながら、大陸を横断していくヤング・ホームレスの儚く美しい開拓精神をテイターバグはもっとも体現していると言えるだろう。ゴミクズ・デッドヘッズ、発狂ベッドルーム・アシッド・フォーク、なんとでも呼ぶがいい。昨年エリジア・クランプトンが自身の性的マイノリティーや血統のテーマを“アメリカン・ドリフト”と題したように、少数派こそが持ち得る底抜けの自由がここにはある。
倉本諒