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三田格   May 19,2016 UP

 セーラムなどに舞台を移したハリー・ポッターのアメリカ編やレイディオヘッドの新曲“バーン・ザ・ウィッチ”、そして、ロバート・エッガーズ監督『ザ・ウィッチ』が注目を集めるなど、2016年はなにやら魔女だらけの年となってまいりました。オノ・ヨーコの新作も『イエス、アイム・ア・ウィッチ・トゥー(Yes, I'm A Witch Too)』と、これはコラボ・シリーズの続編で、デ・ラ・イグレシアスが『スガラムルディの魔女たち』で示唆したように魔女表現にはそこはかとなくミソジニーへのカウンター的要素が盛り込まれているのだろう。そういえばフェミニズムの新たな顔となりつつあるエマ・ワトスンがパナマ文書に名前を発見され、イギリスの右翼メディアによる魔女狩りの対象になる可能性も拡大中(ハーマイオニ、火あぶりか?)。ブレイディみかこ著『ザ・レフト』から演繹してみるに、J・K・ローリングがはかせた赤いおむつがエマ・ワトスンをアリス・ウォーカーやグロリア・スタイネムに向かわせ(「フェミニスト・ブック・クラブ」)、右派もこれ以上は黙っていられないレヴェルに達したということなのか(ちなみに『ハリーポッター』の新作映画でハーマイオニ役は45歳の黒人女優が演じるとか。#OscarSoWhiteも#WomenInHollywoodもぶっちぎられましたね)。
 
 いい加減なまくらはともかく、2013年に〈リキッズ(REKIDS)〉傘下の〈ピラミッズ・オブ・マーズ〉から「ウィッチズ」でデビューしたイタリア系のルージュ・メカニークことロマン・アザロによるデビュー・アルバム。サンプリングしたブルース・ギターをテクノやハウスにペーストした例は過去にもあったけれど、自分でテレキャスターを弾きながらコズミックに仕上げてしまう逸材は稀でしょう。過去にパンク・バンドやサイケ・ロック・バンド、あるいは2000年代に入ってからはコールドウェイヴとして区別されるようになった南欧のシンセ・ポップ・ユニットなどで実際にプレイしてきたことがそのまま反映されているようで、なるほど、そういったキャリアの集大成になっていることはたしか。プリンスが亡くなった年に、こんなハイブリッドを耳にしてしまうとはある種の符合のようだけれど、シンセサイザーと溶け合うようなブルース・ギターがとにかく気持ちいい。どこかでシネマティックと評されていたのはちょっと違和感があり、それを言うならいまはヘルシンキのザイネがダントツだろうと。ルージュ・メカニークはもっとダイレクトにフィジカルで、基本的にファンキーだし、どの曲にもサイケデリックへと向かうヴェクトルが内包されている。

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 コズモ・ヴィテッリのレーベルから新作の予定もあるとのことなので、これは20年めに現れたフレンチ・タッチの遠い子孫とも言えるのだろう(ダフト・パンクの新作もブルースのエディットだったし)。ビートルズ“ミッシェル”のジャズ・アレンジや『ブレイキング・バッド』を思わせるラテン・ドローンなどはジャム・シティの影響かと思ったり、無理してどこかに繋げなくてもいいんだろうけれど、トーン・ホークやマーク・マッガイヤーをきっちりとクラブ・ミュージックの範疇に押し込んだフォームとしては(ホーク関連の「フロム・ザ・リーガル・パッド・オブ(From The Legal Pad Of...)」を除けば)最上の出来ではないだろうか。ギターがいいと感じたのは、それにしてもかなり久しぶり。

 『ドント・タッチ・マイ・シスター』はルイ・ヴィグナによるエレガントなアート・ワークも話題で、モチーフとなっている「水没した女性」はタイトルから察するに姉か妹なのだろう(クレジットはローラ・アザロ)。撮影はエコール・デ・ボザールのジャンヌ・ブリアンで、血の気を感じさせない指先はすぐに溺死を連想させる。血管は収縮し、冷え切ったような質感が増幅されているにもかかわらず、逆説的にエロティシズムが導き出されている。女性の指先が好きな男性は女性に対する支配欲が強いと言われるけれど、これは触れることを躊躇わせるような指であり、赤いマニキュアがそれでも接点を主張しているかのよう。デビュー当初からファッション・デザイナーとのコラボレーションも多く、どこを取ってもフランスらしいプロダクションである。

三田格