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Home >  Reviews >  Album Reviews > Supersize me- Slouching Towards Bethlehem

Supersize me

DronePsychedelicShoegaze

Supersize me

Slouching Towards Bethlehem

indienative

Tower Amazon

小林拓音   Oct 07,2016 UP

 4月末にリリースされたブライアン・イーノのアルバムは、単にポリティカルなだけではなく、ドローンという手法あるいは分野の可能性を拡張させようとする意欲作でもあった。ここに紹介するSupersize meもまた、そのようにドローンという枠組みを果敢に押し広げようと試みているバンドである。

 Supersize me は京都を拠点に活動しているバンドである。いまだ謎に包まれている部分も多いが、UKの名門レーベル〈FatCat〉がデモ音源を紹介する企画「FatCat Records Demo」にトラックが選出されたり、world's end girlfriend主宰の〈Virgin Babylon Records〉が展開する新人発掘シリーズ「Virgin Babylon Selected Works」からEPがリリースされたりと、すでに玄人筋からの信頼は厚い。
 このたびリリースされたセカンド・アルバム『Slouching Towards Bethlehem』は、その宗教的なタイトルやアートワークからもうかがえるように、内容の方も厳かなムードを醸し出している。
 ドローンとは、さしあたり現代音楽あるいはミニマル・ミュージックの文脈のなかで発展してきた音楽だと言うことができるだろう。しかし本作で聴くことのできるドローンは、どちらかといえばマイ・ブラッディ・ヴァレンタインに代表されるシューゲイズ的サイケデリアとの親和性が高いように思われる。ウィリアム・バシンスキーやフィリップ・グラス、スターズ・オブ・ザ・リッドやグラハム・ラムキン、はたまたエレクトリック・プルーンズやカレント93(デヴィッド・ティベット)といったアーティストの作品から影響を受けているというかれらだが、本作で鳴らされているのは、そのどれとも異なる、決してモノマネではないサウンドである。

 ほとんどの曲では、持続する低音や高音のなかに、あまり自己主張しないヴォーカルが紛れ込んでいる。それはきっちり歌として機能するような、わかりやすい類の「ヴォーカル」ではない。とはいえもちろんそれは、単なる効果音としての「ヴォイス」でもない。興味深いのは、このささやかなヴォーカルがたとえばラ・モンテ・ヤングやホーミーの低音のような持続を追求しているわけではない、というところである。その控えめなヴォーカルは、永遠に生き延びようと奮闘する他の様々な音のなかに静かに侵入し、それら周囲の音と共存しようともがきながら、最終的にはそれら他の音たちの運動についていくことができず、はかなく消え去ってゆく。永遠性のなかを通り過ぎていく一時性。このつつましやかなヴォーカルは、ドローンという持続を志向するはずの運動のなかで、消えていくというまさにそのことによって、「声」が占めている特権的な地位に異議を申し立てようとしているかのようだ。
 本作はネオプラトニズムから影響を受けているそうで、たしかにそのサウンドは、言語には決して還元することのできない超越的な何かを崇拝しているようにも聞こえる。しかし、優艷なドローンのなかに迷い込むヴォーカル、周囲との融合に失敗するヴォーカル、持続という運動に失敗するヴォーカルが、そのような崇拝への意志を見事に裏切っている。

 エクスペリメンタリズムやいわゆるインプロヴィゼイションではなく、シューゲイズ的なサイケデリアをもって宗教的荘厳さやメランコリアを演出しながら、そのなかにはかなく消えていくヴォーカルを滑り込ませてみせるところにこそ、このアルバムの面白さがあるのではないだろうか。
 本作で鳴らされる優美なドローンはたしかに、決して万人から歓迎される類の音楽ではない。Supersize meというバンドはおそらく、媚びるということを知らない。さすが、あの過激でドMなドキュメンタリー映画と同じ名前を持つバンドだけのことはある。Supersize me はドMなのだろうか? そうかもしれないし、そうではないかもしれない。いずれにせよ、この閉鎖的で保守的な日本という国で、あえてバンドという形態で、このように特異なドローンを追求していこうというアティテュードは、素直にかっこいいと思う。この国に Supersize me というバンドがいることを、われわれは誇ろうではないか。

小林拓音