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Xth Réflexion

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Xth Réflexion

/¥¥05-06

chained library

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デンシノオト   Aug 29,2017 UP

 本作はシカゴを拠点とするレーベル〈chained library〉からリリースされたXth Réflexionのファースト・アルバムである。〈chained library〉は、カセット・レーベル〈Aught〉のヴァイナル専門のサブ・レーベルで、このアルバムは〈Aught〉から2015年に発表されたXth Réflexionの「/\\05」と「/\\06」をコンパイルしたものだ。

 〈Aught〉は2014年あたりから作品のリリース/発表を始めた超少部数プレスのマニアックなカセット・レーベルであり、Xth Réflexionに加えて、Elizabethan Collar、Topdown Dialectic、De Leon、ACI_EDITSなど謎度の高いウルトラ・マニアックなアーティストたちのスーパー・ミニマルなカセット/音源を送り出してきた。その成果を受けて〈chained library〉は2017年初頭から運営を開始し、Agnes『012016002001』とXth Réflexion 『/\\05-06』の2作をリリースする。両レーベルともにサウンド、アートワークなどが徹底的にミニマルな美意識で統一されており、00年代的な電子音響以降の新ミニマリズムを追及しようとする意志を感じる(アナログ盤はクリア・ヴァイナル仕様)。

 じじつ、彼らは完全に匿名のプロジェクトなのである。情報による先入観を可能な限りなくすことで、完全なミニマリズムの実現を遂行しているかのようだ。それは彼らの上の世代、つまり〈raster-noton〉や〈Editions Mego〉などの電子音響/グリッチ・レーベルが既に失ってしまった要素ともいえよう(むろん仕方がないわけだが)。つまり〈Aught〉/〈chained library〉は、意図的に、歴史も相互影響も情報によって作用しない環境・空間・状況を生みだそうとしているわけだ。リリースにあたっての情報がほとんどない点などからもそれは分かってくる。いわばレーベルの活動・運営自体が一種のアノニマス的なメディア論思想に貫かれているのだろうか。じっさい〈Aught〉はアルバム名がすべてナンバーで統一されていたし、〈chained library〉のアルバム名が数字であることからも、記号性/匿名性へのこだわりが理解できる。

 さて、Xth Réflexion『/\\05-06』は、1トラックめから4とラックめまでが「/\\05」(レコードだとA面・B面)、6トラックめから10トラックめ「/\\06」(レコードだとC面・D面)という構成となっている。ミニマル・マシン・アンビエント的な「/\\05」と、よりリズミックな要素が全面化している「/\\06」という流れになっており、対比的な構成ともいえる。さらに深いダブのかかったミニマリズムはどこか蒸気機関車の音のようでもあり、21世紀以降のポスト・ヒューマン的な響きのようである。つまり、このユニットのトラックは聴き飽きたグリッチでもなく、ありきたりなミニマル・テクノでもない。このダブとミニマリズムの交錯は20世紀と21世紀の歴史性を消失させてしまうだろう。この歴史の「消失」感覚にこそ、2017年以降の「新しいミニマリズム」を感じる。レーベル特有の匿名性や記号性を抜きにすれば、同時代的なサウンドとして、N1L、ZULI、DJ Sinclair、Assel、Dale Cornish、Mumdance & Logos、Machine Woman、Yann Leguayなどの分断的エクスペリメンタル・ミニマル・テクノ・トラックへと繋げてみることも可能である。つまり2017年以降の先端的な「新しさ」の系譜だ。これらのアーティストのトラックを聴くと、今という時代のサウンドには、どこか「壊れたミニマリズム」が炸裂しているように思えてならない。ポスト・ミニマルでもアフター・ミニマルでもない。いわばブロークン・ミニマルの時代を感じてしまう。破壊されたミニマリズムの破片が高密度かつ高速に再生/生成している。新しい音の快楽原則が生まれているように思えてならない。

 本作は、リマスタリングをベルリンのRashad Becker(Dubplates & Mastering)が行っており、サウンドの質感・クオリティが一段と向上している点にも注目したい。

[編集部註:タイトルおよび文中に登場する「​\​」は、正しくは反対向きのスラッシュ(「\」の半角)です]

デンシノオト