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大久保祐子   Sep 20,2017 UP

 過ぎた日の出来事や懐かしい風景を思い返すと、ついノスタルジックな気分に浸り、都合の悪いことは忘れて、あの頃は良かった、なんて思い出を美化し過ぎてしまう。昔に戻りたい? そんな馬鹿な。あの頃、視線の先には何があったのだろう。退屈から抜け出すための未来を夢みていたくせに。

 元に戻ったりしない、とヴォーカルのモリー・ランキンは“In Undertow”のなかで歌う。2014年に1stアルバム『ALVVAYS』をリリースしてからというもの、新人バンドだったオールウェイズを取り巻く状況は好転したようだ。アルバム制作やツアーの費用のためにアルバイトをしていた生活は終わり、活動拠点をカナダのノヴァ・スコシアからトロントに移し、人生を音楽に変えていく準備は次第に整っていった。3年間のあいだに生まれたアイデアと、変わらない音楽への愛情と、これからのヴィジョンを持ちながら、モリーは繰り返し歌う。元に戻ったりしない、と。地元での大切な思い出は胸にしまって、自分たちが向かうべき道を間違えたりしないと、決意するように。言い聞かせるように。少しの不安は轟音のギターがかき消してくれる。透き通った声、これ以上ないほど切ないメロディ。2ndアルバム『アンティソーシャライツ』の1曲目からすでにもう、素晴らしい。

 金髪にギターを抱えたヴォーカルのモリー・ランキンと、モリーの幼なじみでぱっつん前髪に黒縁眼鏡をかけたシンセサイザーのケリー・マクリーンの女子2人に、後ろにギターのアレック・オハンリーとベースのブライアン・マーフィーという見た目にあまり特徴のない男性2人を従えた、インディー・バンドとしては申し分のないメンバー構成のオールウェイズ。昔、〈チェリー・レッド〉傘下の〈エル・レーベル〉に同名のグループがいたが、こちらはVを2つ並べたALVVAYSと表記する。
 ラフで瑞々しい1stの楽曲の面影は残したまま、シンセを強調して趣を変えたドリーム・ポップな冒頭2曲の美しすぎるメロディに、まずはがっちり心を掴まれる。前回から続くガレージ・ロックな路線、憂いのあるアコースティックなサウンド、かと思えば〈ヘヴンリー〉のアメリアを彷彿させるような可憐な歌声で、往年のネオアコ/ギター・ポップのようにバタバタと走り抜けるような曲もあったり。7曲目にはジーザス・アンド・メリーチェインの“Just Like Honey”を聴いたあとに作ったという“Lollipop(Ode To Jim)”なんてタイトルのジム・リードに捧げるラブ・ソングも。CDの内側のいかにもな感じの可愛らしいアイスバーのイラストの横のクレジットに、グロッケンシュピールとヴォーカルで参加したティーンエイジ・ファンクラブのノーマン・ブレイクの名前が見つかるのも嬉しい。雰囲気を作るのが上手いせいか懐古的と捉えられがちな音楽だけれど、彼女たちはちゃんとユース・カルチャーのなかにいて、のびのびと自分たちの音楽を楽しんでいるように見える。そして耳にスッと馴染んでくるフレーズの数々を詰め込んだCDを最後まで聴いていると何だか胸が痛んで、歌詞カードをぎゅっと抱きしめたいような、エールを送りたいような、そんな気持ちになってしまう。

 あの映画のなかでスミスのTシャツを着ていた情緒不安定な女の子に、このアルバムを勧めてあげたらどうだろう。きっと気に入るんじゃないかと思う。だってこれは、かつて教室の隅で頬杖をついて窓の外を眺めていた女の子と、いずれその子に出会う男の子のための音楽だから。

大久保祐子