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Leslie Winer & Jay Glass Dubs

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三田格   Jun 14,2018 UP

 ユーチューブにアップされている「ポップ・ミュージックの歴史まとめ」みたいな動画を見ていると、題材によってはそれなりに同じような時間をかけて同じものを見ているはずなのに、こんなにも違って見えているのかということがわかって、なかなかに面白いし、音楽について誰かと話をすることの無力さを再確認させてくれる。ヒップホップでいえば、昨年は若い世代が盛んに2パックをディスったり、聴いたこともないという発言が相次いで揉めに揉めていたけれど、意外と多かったのが「知らない方がいいサウンドをつくれることもある」というヴェテランたちの意見で、歴史とクリエイティヴを秤にかければクリエイティヴに軍配があがり、退廃をよしとするのはなかなかに潔いなとも思わされた。あるいは、この数年、再発盤の主流となっているのがプライヴェート・プレスの発掘で、実はこんなサウンドがこんな時期につくられていたというスクープの効果みたいなことも「再発」の意味には多く含まれている。これは言ってみれば、歴史というのは世に出て多くの人の耳に届いたものを限定的に歴史扱いしているだけで、そのことと実際のクリエイティヴには確実なエンゲージメントは保障されていないということでもある。それこそ再発盤が1枚出るたびに歴史が書き換えられていくに等しい思いもあるし、ポップ・ミュージックの歴史というのは勝ったものの歴史でしかなく、それによって隠蔽されてきたものがあまりに多すぎるとも。なんというか、もう、ほんとにグラグラになっているんじゃないだろうか、歴史というものは。

 ギリシャを拠点とするジェイ・グラス・ダブスことディミトリ・パパドタスは事実とは異なるダブ・ミュージックの歴史的アプローチ、つまり「ダブ・ミュージックの偽史」をコンセプトに掲げ、これまでに7本のカセット・アルバムをリリースしてきたらしい(ちゃんとは聴いてない)。この人が昨年のコンピレイションや「ホドロフスキー・イン・デューン・イン・ダブ」などという空恐ろしいタイトルのシングルに続いてレズリー・ワイナーと組んで、なるほどダブの偽史をこれでもかと撒き散らした見本市のような6曲入りをリリース。レズリー・ワイナーというのがまたよくわからない人で、アメリカのファッション・モデルとしてヴァレンティノやディオールと仕事をしていた人らしく、ゴルチエをして「初のアンドロジーニアス・モデル」と言わしめた人だという。彼女がそして、ウイリアム・バローズやバスキアと知り合ったことでファッション業界から離れ、ミュージシャンへと転向してロンドンに移ってZTTからデビューした後、ジャー・ウォッブルとつくったアルバム『ウィッチ』(93)はトリップ・ホップの先駆として後々にも評価されるものになる(その後はレニゲイド・サウンドウェイヴを脱退したカール・ボニーと活動を続け、ボム・ザ・ベースのアルバムで歌ったりも)。つまり、ダブ・ミュージックの偽史を標榜するパパドタスにとっては彼女が格好のコラボレイターであったことは間違いなく、なるほどレイヴ・カルチャーの到来とともにどこかで迷子になったダブ・インダストリアルのその後をここでは発展させたということになるだろうか。

 アンビエント・ドローンあり、レイジーなボディ・ミュージックにウエイトレス紛いとスタイルは様々。ダブという手法はジャマイカを離れ、イギリスのニューウェイヴと交錯した時点で、偽史として構築するしかないものになっていたとも思えるけれど、それにしてもここで展開されている6曲は歴史の闇を回顧しているようなサウンドばかり。どこに位置付けられることもなく、これからも迷子のままでいることだろう。それともジェイ・グラス・ダブスにはダブステップを経た上でここにいるというムードもありありなので、ことと次第によっては自分のいる場所に歴史を引き寄せてしまうことも可能性としてはないとは言えない。まあ、ないと思うけど。ちなみにアルバム・タイトルの『YMFEES』は“Your Mom’s Favourite Eazy-E Song”の略だそうです。なんでイージー・E?

三田格