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Various Artists

Dark AmbientIDMTechnoWeightless

Various Artists

Flowers From The Ashes: Contemporary Italian Electronic Music

Stroboscopic Artefacts

野田努   Jul 05,2018 UP
E王

 アルバムはSilvia Kastelによるウェイトレスな“Errori”からはじまる。シンプルな鍵盤、ミステリアスなシンセ。煙がシューッと鳴る。声の断片、チャイム……、21世紀の“アーティフィシャル・インテリジェンス”シリーズへようこそ。インターネットが普及する前、911もトランプもまだまだ知らない90年代初頭に〈WARP〉がリリースしたそれと違って、ずいぶんとダークだ。なにせ彼女は昨年、かの〈Blackest Ever Black〉からアルバムを出している。続くアンビエント・トラックは、ローレンス・イングリッシュの〈Room40〉からもアルバムを出しているAndrea Belfiによる。フィールド・レコーディングであろうぐしゃぐしゃした音、透き通るシンセ、控え目な打楽器、『アンビエント・ワークスvol.2』スタイルの遠い音──

 本コンピレーションはその副題通り、現代のイタリアのアンダーグラウンド・エレクトロニック・ミュージックを集めたもので、「灰からの花々」がタイトルだ。ジョルジョ・モロダーやアレキサンダー・ロボトニクスは忘れよう。スエニョ・ラティーノやボローニャのレーベル〈DFC〉の甘くセクシーな夢も。
 コンパイラーは、ベルリン在住のイタリア人、Lucy。シチリア島パレルモ生まれ。
 このコンピレーションからイタリアらしさを見いだすには、ぼくはあまりにもイタリアを知らない。が、ひとつ思い出したことがある。昔、デリック・メイからこんな話を聞いたことがある。UR(ジェフ・ミルズもロバート・フッドも在籍時)が最初にヨーロッパ・ツアーをやったとき、おどろくほどもっとも熱く彼らを迎えた国はイタリアだった。会場に集まったほとんどがあの「UR」Tシャツを着ていたとか。 Lory Dの1991年の「We Are In The Future」をチェックしてみて。いわばローマのUR。ハードなテクノがある。
 ハードなサウンドといえば、〈AVC〉というローマのレーベルから突然ロバート・アルマニ(というアシッド・ハウスの王様のひとり)の作品がリリースされたこともあった。日本からは見えづらいだけで、そこにはずっとあったのだ。デリック・メイの2011年のミックスCDは、英米中心の音楽の見え方に対する反論とでも言えるほど、国際色豊かな選曲になっているが、とうぜんそのなかにもRoberto Boscoというイタリア人プロデューサーの曲が入っている。本作では、Alessandro Adrianiがいまにも壁が崩れてきそうなデトロイティッシュなダーク・テクノを聴かせてくれる。

 ぼくたちはNYの〈Hospital Productions〉からリリースされたポストパンク上がりのふたり組、Ninos Du Brasilのアルバムを知っているし、彼らの3枚目も知っている。本作においても彼らは、インダストリアルな暗い音響とパーカッションの混合を提供している。ぶ厚い曇り空のウェイトレス・サウンドに高じるChevel は、UKグライムの売れっ子プロデューサー、マムダンスとロゴスのレーベル〈 Different Circles〉から昨年アルバムを出している。
 くるまった灰色の植物がアルバムのアートワークだ。実験音楽レーベル〈Important Records〉から作品を出しているCaterina Barbieriは、憂鬱な音の叙情詩を描いている。カール・クレイグの“アット・レス”をさらに頽廃的にしたかのような。アルバムを締めるのは、〈Editions Mego〉からも作品を出しているNeelのウェイトレス。それはぼくたちが思い描くシチリア島の風景とは180度対極にある気配を運ぶ。そしてそれは21世紀の“アーティフィシャル・インテリジェンス”シリーズに相応しいエンディングなのだ。

野田努

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