ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  2. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  3. Brian Eno ──ブライアン・イーノがレーベル〈Opal〉を再始動、あわせて00年代の2作品がリイシュー
  4. Loraine James ——ロレイン・ジェイムズの新作、突如のリリース(しかも無料DL)
  5. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  6. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  7. Future Sound of Jazz ——蘇る「フューチャー・ジャズ」、ドイツの〈Compost〉の人気シリーズが16作目
  8. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  9. R.I.P. 鷲巣功
  10. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum
  11. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  12. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  13. Kim Doeon - SLAPSTICK | キム・ドオン
  14. Haruomi Hosono ──細野晴臣のドキュメンタリー映画が公開
  15. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル
  16. This Is Lorelei - The Singer in My Band | ディス・イズ・ローレライ
  17. Tohji - angel
  18. Cornelius - Refractions | コーネリアス
  19. interview with Toshimaru Nakamura 世界を魅了する、類い稀なる電子音響 | ──中村としまる、待望の初期ベスト盤リリースと超ロング・インタヴュー
  20. interview with Kinnara : Desi La 「アートによって、私は世界に満足できるようになりました。アートが、私の孤独の多くを壊してくれたのです」 | ──緊那羅:デジ・ラ、インタヴュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Steve Lacy- Apollo XXI

Steve Lacy

FunkPopR&B

Steve Lacy

Apollo XXI

3QTR/ビート

大前至   Jul 01,2019 UP

 オッド・フューチャーから派生したバンド、ジ・インターネットのギタリストであるスティーヴ・レイシーがリリースしたファースト・ソロ・アルバム。本作のリリース前日に21歳になったばかりで、グループ内では最年少の彼だが、ジ・インターネット加入直後、サード・アルバム『Ego Death』の約半数の曲にプロデューサーとして関わったのを手始めに、その後もケンドリック・ラマーやJ・コール、ゴールド・リンク、さらにソランジュやロック・バンドのヴァンパイア・ウィークエンドまで、実に様々なアーティストの作品を手掛け、若き天才プロデューサーとして注目を浴びている。なお、ジ・インターネットからはヴォーカルのシドやプロデュース/キーボード担当のマット・マーシャンズを筆頭に、他のメンバーもすでにソロ、あるいはユニットという形でグループ外でも作品をリリースしてきたが、スティーヴ・レイシーも同様に2017年にデビューEP「Steve Lacy's Demo」をリリース。“デモ”とは名乗っているが、ジ・インターネットのサウンドとも少々異なる、インディ・ロックの影響も強く感じられるファンク・トラックは、リリース当時まだ18歳であった彼の秘めた可能性を感じさせる作品となった。

 前述のようにプロデューサーとしての注目度が上がっているいま、最高のタイミングでリリースされた本作だが、そんな期待を裏切らない仕上がりになっている。元々はiPhoneでビートを作ったり、ヴォーカルのレコーディングも行なっていたというスティーヴ・レイシーだが、そんなエピソードとも繋がるローファイ感はいまも彼の大きな持ち味となっており、ミニマルにビートが刻まれる先行シングル曲“N Side”や1曲目“Only If”などはその典型と言えよう。そんなビートに重なる彼のギターとヴォーカルの何とも気だるく、そして同時に耳に染み込んでくる心地良い響きの素晴らしさ。続く“Like me”も似たようなテンションではじまり、そんな流れでアルバムが進行していくのかと思いきや、その予想は大きく裏切られる。9分を超える長尺の“Like me”は3つのパートに分かれているのだが、全く異なる曲調に展開しながら、バイセクシャルであるという彼自身の憂いが曲全体に滲み出ている。かと思えば、続く“Playground”では幸福感溢れるギター・ポップが展開されるなど、アルバム前半だけでも1曲ごとに実に激しく変化していく。その表現力の幅広さはEP「Steve Lacy's Demo」を軽く飛び越えており、それはもちろん、EP以降のジ・インターネットでの活動や彼自身のプロデュースワークやフィーチャリングなどでも培われていったものであろうが、その才能の豊かさには恐れ入る。彼の数多い引き出しにはロックやニューウェイヴなどの要素もあり、曲によっては多少好みの分かれるところもあるだろうが、このまとまりの無さや、良い意味での荒さは本作にとっては大きなプラスだ。

 21歳という年齢を考えみても、末恐ろし可能性を秘めたスティーヴ・レイシーのデビュー・アルバムであり、そんな才能を引き出した、ジ・インターネットというグループの凄さにも改めて恐れ入る。今後、この引き出しの多さをそのまま保ちながら、さらにパワーアップしていくのか? あるいは何かひとつ道を見出して、突き進んで行くのか? “N Side”のようなスタイルは当然、今後も継続していくであろうが、個人的には前出の“Playground”や“Hate CD”のようなファンキーなギター・ポップ路線は、彼にしか出来ない表現のひとつだと思うので、今後も期待しています。

大前至

RELATED

The Internet- Hive Mind Columbia / ソニー・ミュージック

Reviews Amazon iTunes