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New Order

Post-PunkSynth-pop

New Order

∑(No,12k,Lg,17Mif) New Order + Liam Gillick: So It Goes..

Mute/トラフィック

Tower Amazon

野田努   Jul 17,2019 UP

 ライヴ会場はマンチェスターのオールド・グラナダ・スタジオ。同局のテレビ司会者であり、〈ファクトリー〉レーベルの創始者であり、そして彼らを見いだした人物=故トニー・ウィルソンの番組でも使っていたところだという。
 ということは、そこは1978年9月20日にジョイ・ディヴィジョンが番組『グラナダ・リポーツ』(もちろん司会はトニー・ウィルソン)において初めてテレビ出演し、“シャドウプレイ”を演奏したときの場所になるのだろう。ブックレットの写真を見るとそこそこ広いようだが、道路を走る白黒フィルムを重ねたあのときの“シャドウプレイ”の映像からはそこまで広いスタジオには見えなかった。まあなんにせよ、ここにはノスタルジーと新しさが込められている。“シャドウプレイ”を演奏したときの彼らへの郷愁があり、しかしいまそのときのメンバーは2人いないし、また、5人目のメンバーと呼ばれた天才的な音の実験者マーティン・ハネットも、そして育ての親というには本人も充分に子供だったトニー・ウィルソンもいない。いったいどんな気持ちで彼らはそのとき“ディスオーダー”を演奏したのだろうか。
 今年でリリースしてから40周年を迎えることになったジョイ・ディヴィジョン(JD)のデビュー・アルバム『アンノウン・プレジャーズ』の再発盤は、数週間前に全英チャートで最高5位を記録した。“ディスオーダー”はその偉大なアルバムの1曲目だ。音楽的にはJDの前進ウォーソーのサウンドを引きずっている曲で、この曲の重要な要素であるベースラインはバンドを離れたピーター・フックによるものなのだが……つまり、懐かしくもあり、嬉しくもあり、悲しくもある“ディスオーダー”は、バーナード・サムナーが歌うにはキーが低いということがライヴ・ヴァージョンからはわかる。だが、その曲調はオリジナルよりも明るい。軽快にすら感じる。

 これはほかの誰かも言っていることだが、バーナード・サムナーのもうひとつの才能とは、じつは声だ。エレクトロニクスやディスコを大胆に導入して音楽的な変革を実行し、“ビザール・ラヴ・トライアングル”のような卓越したポップ・ソングを書いたことはもちろんだが、バーニーの声は(歌がうまいとは言えないが)たしかにニュー・オーダー(NO)のトレードマークといえる魅力がある。バンドが長きにわたって活動できている一因だろう。本作でも彼の声は衰えていない。
 それどころか本作ではより快調に動き、羽ばたいているかのようだ。ヴィジュアル・アーティストのリアム・ギリックなる人物に舞台演出を托し、12人のシンセ奏者を擁することで新しいアレンジを見せているここでのNOは、おそらくひじょうに優雅である。それは“サブカルチャー”~“ビザール・ラヴ・トライアングル”においてとく顕著だ。なんとも艶やかでキラキラしている。あの深遠な“ディケイド”や“ハート&ソウル”さえもそうだ。本作の大きな売りもそこだろう。品があって、優雅でキラキラした演奏。NOは、フッキー時代に戻ることはしないし、まだ自分たちは前に進めると思っている。

 スリーヴ・デザインは、今回はピーター・サヴィルではないが美しくミニマルな意匠で、(画面からはまったくよくわからないだろうが)特殊印刷が施された何気に贅沢な作りになっている。
  サブタイトルの「So It Goes」とは、トニー・ウィルソンのグラナダでの番組名であり、カート・ヴィネガット・ジュニアの『スローターハウス5』においてはなんども繰り返される、この世の不条理に対する超越的なフレーズとしても知られる言葉だ。日本語にしづらい言葉だが、伊藤典夫の有名な訳では「so it goes」は「そういうものだ」となっている。そう、(ここにはいろいろな思いや感情があるだろうが、とにかく)、「そういうものだ」ったのだ。

野田努