Home > Reviews > Album Reviews > BLAHRMY- TWO MEN
それぞれがソロMCとしても活躍する MILES WORLD と SHEEF THE 3RD によるグループ、BLAHRMY の実に9年ぶりとなるフル・アルバム。この9年間にそれぞれが蓄積してきた高いスキルが合わさった上で、『TWO MEN』というタイトル通りの純粋な「2MC」スタイルがアルバム全体を通して貫かれている。さらに今回は、彼らの所属レーベルでもある〈DLiP RECORDS〉の屋台骨を支える NAGMATIC が全曲のプロデュースを手がけたことで、BLAHRMY としての純度はより高まっている。
本作を象徴する一曲は間違いなく1曲目の “Woowah” だろう。90年代後半から2000年代にかけてのNYヒップホップとも通じるドラマチックでストリート感溢れるトラックでありながら、音の鳴りはいまの時代のサウンドそのもので、そのビートに絡みつく MILES WORLD と SHEEF THE 3RD のコンビネーションに圧倒される。彼らが放つひとつひとつの言葉の響きは実に楽器的であり、その言葉がもつ本来の意味にプラスαの価値を加え、まるで新たな命を吹き込むかのように「Woowah」というタイトル・ワードを強烈に光らせる。ちなみに YouTube でも公開されている藤沢駅近くで撮影されたというこの曲のMVは BLAHRMY の世界観がさらにストレートに描かれており、モノクロで撮られた映像も痺れるほど格好良いので、興味ある方はそちらもぜひチェックしていただきたい。
アルバム前半部は “Woowah” と同様のハードな路線が続き、彼らとも繋がりの深い DINARY DELTA FORCE の RHYME BOYA と緊張感漂うスリリングなマイクリレーを展開する “B.A.R.S. Remix” や、自らをエイリアンに例えながらふたりがそれぞれ異なるイメージを描き出す “Aliens” など、彼らの言葉のチョイスの面白さや純粋にラッパーとしてのストレートな魅力がダイレクトに伝わってくる。かと思えば中盤ではGファンク全開の “Hey B.”、インド(?)っぽいテイストも盛り込まれた “Fiesta”、ゴールデン・エラのヒップホップへの愛が詰まった “Recommen'”、オリエンタル風味な “Flight Numbah” など、NAGMATIC のヴァリエーション豊かなビートのイメージに合わせて、BLAHRMY としての軸はキープしながら様々なスタイルをリリックで披露する。
仙人掌をフィーチャした “Living In Da Mountains” は本作では唯一、〈DLiP RECORDS〉以外のゲストを迎え入れたことで、微妙な空気の変化がアルバム全体に深みを与え、そのムードは BLAHRMY としての未来を伝えるラスト・チューン “続、”へと引き継がれる。本作のリリース直後に SHEEF THE 3RD は BLAHRMY とはまた少し異なるカラーのソロEP「Peice is. EP」をリリースしており、おそらく MILES WORLD もすでに次作を準備中であろう。ふたりのソロ活動がまた次の BLAHRMY の作品にどのように反映されるのか、楽しみでならない。
大前至