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dj honda × ill-bosstino

Hip Hop

dj honda × ill-bosstino

KINGS CROSS

THA BLUE HERB RECORDINGS

大前至   Jan 12,2022 UP

 2021年の日本のヒップホップ・シーンの中でも、かなり攻めたリリースを行なってきた THA BLUE HERB 率いるレーベル、〈THA BLUE HERB RECORDINGS〉(以下、〈TBHR〉)。そのひとつが5月に発表された O.N.O の全曲プロデュースによる YOU THE ROCK★のアルバム『WILL NEVER DIE』で、YOU THE ROCK★と THA BLUE HERB との過去の歴史を知る人びとにとっては大きなサプライズであり、かつ内容的にも非常に充実した素晴らしい作品であった。その半年後にリリースされたのが、dj honda と ILL-BOSSTINO (以下、BOSS)という、世代を超えた2大巨頭のコラボーレーション・アルバム『KINGS CROSS』であり、個人的には『WILL NEVER DIE』以上のインパクトを与えてくれた作品となった。

 現在、共に札幌を拠点に活動している dj honda と BOSS であるが、それぞれ通ってきた道は全く異なる。80年代からDJとして活動を開始し、90年代半ばから2000年代にかけてはNYを拠点にメジャー・レーベルのもとでUSヒップホップの最前線にいた dj honda。一方で BOSS は O.N.O と共に結成した THA BLUE HERB の一員として、90年代の東京中心であった日本のヒップホップ・シーンの中で孤軍奮闘し、作品のリリースやライヴを重ねながら、いまやシーンの中で確固たる地位を確立している。それぞれ世界と日本を相手に戦ってきた彼らであるが、同じヒップホップというカテゴリーでありながら、これまでほとんど重なる部分がなかったというのが紛れもない事実だろう。正直なところ彼らのコラボレーションがどのような形になるのか個人的にも全く想像がつかなかったが、このアルバムを聞けば、そんな心配は一発で吹っ飛ばされる。90年代のUSのヒップホップを聞いて衝撃を受けた BOSS のラップと、90年代のUSヒップホップ・シーンのど真ん中にいた dj honda のサウンドの相性の良さというのは、冷静に考えれば当然のことなのかもしれないが、良い意味での驚きが本作には詰まっている。

 誤解を恐れずに言えば、dj honda は間違いなくヒップホップ・シーンのレジェンドであるが、彼のいまの活躍を知らない人にとってはすでに過去の人となっている。しかし、例えば2015年リリースの B.I.G. JOE とのジョイント・アルバム『UNFINISHED CONNECTION』や2018年リリースの紅桜とのジョイント・アルバム『DARK SIDE』を聞けば、プロデューサーとして彼がいまだに現役であることは明白だ。サンプリングによる90年代と同じプロダクション・スタイルを用いながら、サウンドのクオリティは完全にアップデートされており、何よりも彼のトラックに漂うどこか昭和を思わせるような空気感は B.I.G. JOE や紅桜、そして、もちろん BOSS のようなタイプの日本語ラップには見事なまでにハマる。いま現在も毎日スタジオにこもってトラックを作り続けているという dj honda であるが、バラエティに富んだ本作全16曲のトラックを耳にすれば、いまが彼にとっての全盛期にすら思える。

 そんな dj honda に対しての尊敬の念とある種の緊張感が BOSS のラップからは強く感じられる。dj honda のこれまでの活動の歴史を綴った “A.S.A.P.” などはその筆頭であるが、さらに BOSS 自身の過去にもリンクして、まるで初心に戻ったかのようにも感じられる瞬間も多々ある。かと思えば、“GOOD VIBES ONLY” のようなポジティヴなマインドを全開にした曲もあったりと、dj honda のトラックに誘発されるかのように、THA BLUE HERB や BOSS 自身のソロ・アルバムとも異なる視点や感情が存分に引き出されている。個人的には “REAL DEAL” のようなどストレートなヒップホップ・トラックであったり、逆に “'CAUSE I'M BLACK” や “SEE YOU THERE” のようなノスタルジー漂うトラックに乗った BOSS のラップも最高に痺れる。

 『WILL NEVER DIE』と同様に本作もサブスクでのリリースを一切行なっていないというのがまた〈TBHR〉らしいが、こんな最高なアルバムを聞き逃すのは本当に勿体ないと思う。

大前至