ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Robert Johnson ──オリジナルSP盤から起こしたロバ―ト・ジョンスンの12作が10インチでリイシュー
  2. interview with Adrian Sherwood 愛とソウルと、そしてメロウなダブ・アルバム | エイドリアン・シャーウッド、インタヴュー
  3. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある
  4. interview with Cameron Picton (My New Band Believe) 元ブラック・ミディのキャメロン・ピクトン、新バンドにかける想い | ──初のアルバムを送り出したマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ
  5. Stones Throw ──設立30周年記念日本ツアー開催、ピーナッツ・バター・ウルフ、ノレッジ、マインドデザイン、ミチが来日
  6. Laurel Halo - Midnight Zone (Original Soundtrack to the Film by Julian Charrière) | ローレル・ヘイロー
  7. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第1回 現象になりたい
  8. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  9. Columns Thundercat 来日を控えるサンダーキャット、その新作が醸し出すチルなフィーリングについて
  10. interview with Ego Ella May ジャズとネオ・ソウルの邂逅 | エゴ・エラ・メイ、インタヴュー
  11. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  12. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  13. Mamas Gun - Dig! | ママズ・ガン
  14. 別冊ele-king J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶
  15. Columns 3月のジャズ Jazz in March 2026
  16. KENNY DOPE JAPAN TOUR 2026 ——ケニー・ドープ、9年ぶりの来日決定です
  17. 菊地雅章 - 六大(地・水・火・風・空・識)
  18. Ethel Cain - Perverts | エセル・ケイン
  19. Squarepusher ──スクエアプッシャーのニュー・アルバムがリリース
  20. Moemiki - Amaharashi

Home >  Reviews >  Film Reviews > ゴーン・ガール

ゴーン・ガール

ゴーン・ガール

監督 / デヴィッド・フィンチャー
出演 / ベン・アフレック、ロザムンド・パイク 他
配給 / 20世紀フォックス映画
2014年 アメリカ
2014 Twentieth Century Fox

12月12日(金)より、全国公開。
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/

木津 毅   Dec 12,2014 UP

 尋ねる人間を間違っているとしか思えないのだが、ごく稀に「デートにオススメの映画ってある?」と質問されることがあり、面倒なので「映画とは基本的にひとりで観るものであって、デートに“使える”ものではありません」と答えるようにしている。すると相手は訊く人間を間違えたという顔をするのだが(だから間違ってるんだってば!)、困ったことに今年はこのクリスマス・シーズン、僕のイチオシのデート映画がある……それがデヴィッド・フィンチャーの新作『ゴーン・ガール』で、なぜならこれは一種のロマンティック・コメディになっているからだ。

 原作は女性作家ギリアン・フリンの同名小説。ミズーリ州の子どものいないある夫婦の妻が、5年めの結婚記念日の朝に失踪する。現場となった自宅には争った跡があり、そして大量に血を拭きとった反応が出てきており、さて……というところから物語は始まる。原作を読むにしても映画を観るにしても、これ以上中身について知らないほうが楽しめることは間違いないので、できるだけ前情報を入れずに劇場に足を運んでほしいと思う。犯人は誰なのか? トリックは? などと普通のミステリーの観方をしていると、ド肝抜かれること間違いなしだ。
 だから以下の文章は余計な情報に過ぎない。が、ひとつ言いたいのは、これは世間を覆うミソジニーに対するブラック・コメディになっているということである。原作もけっこう笑いながら読んだけれども、映画は相当笑いながら観た。ベン・アフレックによる呆けた顔の鈍感なハンサムくんがあまりにもピッタリ過ぎて、ロザムンド・パイク(『ワールズ・エンド』のヒロインのイギリス人女優です)演じる「手に負えない女」の見事さと相まって、2人のベスト・カップルぶりを見ているだけで愉しい。ここで描かれるような女が怖い男(たち)と、そのことにひるまない女(たち)の闘いはたぶん、今日も世界のあらゆるところで繰り広げられている。思えば、『セブン』、『ファイト・クラブ』、『ゾディアック』、『ソーシャル・ネットワーク』と、その代表作において基本的に「男どもの映画」を撮ってきたフィンチャーは、前作にあたる『ドラゴン・タトゥーの女』と本作では、かつて『エイリアン3』や『パニック・ルーム』でやろうとしていた(そしてあまりうまくいっていなかった)闘う女についての映画にあらためて取り組もうとしているのではないか。その意味では本作の脚本を原作者のフリンが手掛けていることは奏功しており、ここで「男の手に負えない女」であるエイミーは何やら新時代のヒーローのようにも見えてくる。女性から見るとどうなのだろう。

 では、やっぱり女と男はわかり合えないのだというシニカルな映画かと言えば、そんなことはないように僕は思うのだ。物語は想定外の展開を見せながらやがて、不思議な「共闘」体制へとなだれ込んでいく。それを皮肉と見なすかは意見のわかれるところだろうけど……僕には強烈にロマンティックなものに感じられる。絶対に相容れないものをお互い抱えながら、しかしそれすらのみ込んでいく夫婦という不条理。それが149分たっぷりエンターテイメントしており、フィンチャーのベストではないにしても余裕たっぷりの充実作だ。
 ちなみに、スタイリッシュなサウンドトラックはすっかりフィンチャー組となったトレント・レズナー&アッティカ・ロス。

予告編

原作
http://www.amazon.co.jp/dp/4094087923


木津 毅