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Struggle For Pride

Struggle For Pride

@新代田Fever Tokyo

January 28, 2010

野田 努  
photos by Yasuhiro Ohara   Feb 02,2010 UP

 初めて観た人たちは、きっと驚いただろうな。何度か観ている僕でさえも、毎回新鮮な驚きを覚える。僕の隣の隣にいた白人の青年は始終、眉間にしわを寄せながら凝視していたが、その隣にいた人は最初は凍り付いていた表情も、時間ともに笑みを浮かべていた。まあ、無理もないというか、これはカジヒデキとカメラ・オブスキュラだけを目当てに来た人にとっては気の毒だったのかもしれない。しかし、普段滅多に観れないものを体験できるわけだし、僕はSFPがはじまったらフロアから人がもっといなくなるんじゃないかと思っていたんだけれど、意外なほど多くのオーディエンスがいたのが嬉しかった。スコットランドから来た人のなかには共感を覚えた人もいたかもしれないし、良いものを観れたと感激した人もいるんじゃないだろうか。SFPポッセの激しい身振りも、最初は強烈に感じるだろうけれど、しかしよく観るとあれはある種の悦びの表現であることに気がついてくる。よく言われるようにあの爆発的なノリには「健康的な感じ」さえ漂っているし、まあ、とにかくあれが彼らの流儀で、自分の肉体が自分の肉体であることを表すときの、まさにハードコアなスタイルに思える。

 僕はその晩は、夕方からEccyの取材をしていた。例のY氏とともにアルコールを摂取しながら、この若いトラックメイカーのロンドンにおけるダブステップ体験談を聞いていた(その話は近いうちにUPします)。そしてわれわれ3人は電車に乗って、7時ぐらいに会場に着いた。会場はすでに満員だった。

 「Cookie Scene Night Special」と題されたそれは、先述したようにグラスゴーのカメラ・オブスキュラ、カジヒデキ、そしてStruggle For Prideだった。いわばネオアコ系というか、旧渋谷系というか、このなかにSFPが混じっているということは、控えめに言って、良く晴れた正午のカフェテラスにブラック・サバスが鳴っているようなもので、それは決して自然に溶け込んでいるとは言い難いところがある。が、何故こんな奇妙なブッキングが実現したかと言えば、このイヴェントの企画者によれば、SFPの今里=DJホリデーがカメラ・オブスキュラの音楽が好きだったという、とても単純な理由からだった。カヒミカリィをはじめ、DJホリデーが特定の旧渋谷系の音楽に並々ならぬ愛情を抱いていることは有名な話だ。しかし、だからといって、ねぇ......(いやいや、こういう冒険心はときとして重要だ)。

 SFPの出演前、場内にはヴァンパイア・ウィークエンドの『コントラ』がかかっていた。それもまた悪い冗談のようにも思えたが、「いや、でもこの並びでSFPを聴くのはスゲー面白いんじゃないか」と、僕はビールを片手に下高井戸における脅威のワンダーランド、トラスムンド店長の浜崎氏とともにフロアで待機していた。浜崎氏を横目で見ながら「きっとこの男は、いまかかっている音楽がビルボードで1位の、最先端のお洒落なポップスであることを知るまい......」などと思っていた。「いや、意外と知っているかもしれない......この男はこう見えても、抜け目なく、けっこう新しい音をチェックしているからな......」などと思いながら、ひとりでニヤついていた。

 ライヴはいつの間にかはじまり、嵐のようにフロアを通過した。僕はSFPのリズムが変化したんじゃないかと思った。「あれ、SFPってこんなに踊りやすかったっけ?」と思えるほどダンサブルに感じた。とくにライヴの後半は、ヤッキ・リーベツァイトがハードコアを叩いているように聴こえた。そしてフロアの中央であんにも無心に激しく踊っているSFPポッセをちょっぴり羨ましくも思った。「あのなかにオレがいたら......」、一瞬だが僕は想像してみた。「気が狂った不気味なオヤジにしか見えないだろうな......」

 SFPはそして、取り乱すことなく、冷静に演奏した。彼らはいつかライヴ盤を出すべきだ。いちど音だけで聴いてみたい。僕はその後、キング・オブ・オーパスの酒井君と水越真紀さんとアルコールを摂取しながら話して、適当なところで帰路についた。

野田 努