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SAY IT LOUD!

SAY IT LOUD!

NO NUKES & ENERGY SHIFT PARTY

@代官山UNIT
2011年8月7日(日曜日)

文:野田 努   写真:小原泰広   Aug 15,2011 UP

 ユニットに到着したのは3時半だった。すでに何人かの子供たちがDJのビートに反応していた。子供たち......というは本当に子供たちのこと。20年前は、ある特定の世代しかいなかったクラブ・カルチャーも、ここには6歳以下の子供から20代、僕のような40代までと幅広い層がいる。

 脱原発の動きも、この数か月のあいだに大衆運動として根付きつつあるように思える。が、そのいっぽうで、この日に集まった同世代と話ながら「いつまでこの意識を持続できるかがポイントだよね」という言葉がいろんな人から聴かれたように、80年代末の過ちは繰り返したくないという思いも強いようだ。
 でもまあ、しかしですよ......ちょうどこのイヴェントの2日前に渋谷のライトハウス・レコードに入ったらニューヨークからやって来たアレックス・フロム・トーキョーと会って、「日本はどうなってしまうのか心配で......」と気の良いフランス人が言うので、「いやー、日本はどうなるかわからないけど、日本のDJカルチャーの意識の高さは素晴らしいよ。彼らと同時代を生きていることを誇りに思うよ」と言ったばかりだった。いまこの国のDJカルチャーの何人かは勇気をもって意見を言って、社会運動への関心の高さを身をもって示している。
 〈SAY IT LOUD!〉は、テクノDJのタサカとムーチーのふたりを発端にはじまった、要するに「原発問題を考える」パーティだ。クラブのパーティにおいて「考える」ことが矛盾しないのは、そこが「集まる」場所でもあるからで、クラブ・ミュージックのリスナーがいまもっとも関心のある社会問題について意見を述べ合い、意識を共有することは本当に素晴らしいことだと思う。

 オープニングDJのワン・ドリンクが終わると、タサカと岡本俊浩氏の紹介で、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏とメディア・ジャーナリストの津田大介氏との対談がはじまった。このときがもっともフロアが埋まっていたわけだが、対談の内容は現状確認といったところだったが、質疑応答がなかなか熱く、「菅首相は支持すべきか」「廃棄物の処理に関してはどう考えるか」「信用すべき企業は?」「どこのメーカーの家電は買うべきではないか?」などなど、けっこう具体的な質問が途絶えなかった。なかにはアメリカ国債に関する質問する人までいて、まあ、自分のように株なんかには無興味な人間にはどうでもいい話だが、それでも幅広い角度から原発問題への関心が集まっていることが浮き彫りになったことはたしかだ。
 その後は、クボタタケシ、DJケント、そしてタサカへとDJは繋がれて、夜の10時にパーティは終わった。夕方過ぎまでダンスフロアを占拠していたのは子供たちで、その微笑ましい光景を眺めながら大人たちは「原発やめろ」じゃなくて「やめよう」って言ったほうが印象良くない? とか、実際に福島に行った人たちのさまざまな感想(本当はそれはいろんな言葉があった)とか、いろんな話が飛び変わっていた。当たり前の話だが、みんな真剣なのだ。

 8月27日にも渋谷でデモがあり、また9月11日は素人の乱主宰のデモがある。9月19日はでっかいのがあるし......そうしたデモはもちろん重要だが、しかし、今回の〈SAY IT LOUD!〉のように、政治の側から提案されたイヴェントではなく音楽の側からことをおこしていることが我ら音楽ファンにとっては心強いし、より身近に感じることができる。
 〈SAY IT LOUD!〉、ぜひまたやって欲しいし、みんなでこのパーティを盛り上げていけたらと思う。

文:野田 努