ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Spiral Deluxe ──ジェフ・ミルズ率いるエレクトロニック・ジャズ・カルテットが7年ぶりにアルバムを発表
  2. lots of hands - into a pretty room | ロッツ・オブ・ハンズ
  3. Soundwalk Collective & Patti Smith ──「MODE 2025」はパティ・スミスとサウンドウォーク・コレクティヴのコラボレーション
  4. Mark Pritchard & Thom Yorke ──マーク・プリチャードとトム・ヨークによるコラボ・プロジェクトが始動
  5. つくって食べる日々の話
  6. Ethel Cain - Perverts | エセル・ケイン
  7. Columns ♯10:いや、だからそもそも「インディ・ロック」というものは
  8. Bon Iver ──ボン・イヴェール、6年ぶりのアルバムがリリース
  9. DJ Python ──NYと東京をつなぐ〈PACIFIC MODE〉が、ライヴにフォーカスしたシリーズ第2弾を開催
  10. Various - Tempat Angker: Horror Movie OSTs & Sound FX From Indonesia (1971–2015) | Luigi Monteanni(ルイジ・モンテアンニ)
  11. Kendrick Lamar - GNX | ケンドリック・ラマー
  12. Lifted - Trellis | リフテッド
  13. Spiral Deluxe - Voodoo Magic
  14. ele-king presents HIP HOP 2024-25
  15. Cock c'Nell ——コクシネルの伝説的なファースト・アルバムがリイシュー
  16. Columns 夢で逢えたら:デイヴィッド・リンチへの思い  | David Lynch
  17. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第1回 悪夢のような世界で夢を見つづけること、あるいはデイヴィッド・リンチの思い出
  18. FKA twigs - Eusexua | FKAツゥイッグス
  19. Soundwalk Collective with Patti Smith ──ブライアン・イーノ、ルクレシア・ダルト、ケイトリン・オーレリア・スミス、ロティックなどユニークな面子が参加したリミックス盤が登場
  20. eat-girls - Area Silenzio | イート・ガールズ

Home >  Reviews >  Live Reviews > RAZIKA- @Shibuya, o-nest

RAZIKA

RAZIKA

@Shibuya, o-nest

Mar 30, 2012

文:野田 努 写真:小原泰広 Apr 04,2012 UP

 イーライ・ウォークスの取材が終わって、渋谷へダッシュ。山手通りでタクシーを拾い、道玄坂上で渋滞しているのでタクシーを飛び降りて坂を下り、そのままホテル街へ、エレヴェイターに駆け込み、受付までさらにまた50mダッシュ。こう見えても僕は中学時代は陸上部だったので快速なのである......などと自慢している場合ではない。お金を払っていると、ちょうど"ユース"(アルバムの1曲目)のギターのリフとコーラスが聴こえる。螺旋階段を下りて扉をあけてハイネケンを手にしながら目を前方にやる。満員の会場の向こう側のステージにはノルウェーからやって来た4人のキュートな女性が演奏している。すでに会場の1/3は踊っている。「来て良かった!」と思った。
 そしてラジカは、最後まで幸せな気分にさせてくれた。決してうまい演奏ではないが、とくに目新しいことのないスカのビートで身体を揺らすことが、こんなにも気持ちが良いことだとあらためて感じた。なにせ彼女たちは見た目をきまっている。ツチャツチャツチャツチャと刻まれるギターとともにオーディエンスも大はしゃぎ。いいぞ、お姉さんビールをもう一杯! いや、すいません、「女を見たら女中と思うな」と叱らないでください。しかし、ラジカにはそんなことも許してくれそうな大らかさがあると、勝手に妄想する。まわりくどい説明はいらない。エクスキューズもいらない。男と女の痛々しいメロドラマもいらない。ビートがあって、コーラスがある。曲もこざっぱりしている。
 ラジカを聴いているとなにゆえこうも嬉しくなるのか言えば、僕の場合は、自分がどこから来たのかを再認識するからなんだろう。それとも、より普遍的な、いわゆる"原点回帰"としての悦びがここにあるからなのだろうか。
 しかし......いや、待てよ、一瞬、そう考えたところで戸惑いを感じる。ザ・スペシャルズの"必死さ"を思い出してしまう。彼女たちはたしかに素敵だが、この社会の醜悪さに敢然と立ち向かったポスト・パンク時代のスカ・バンドを思い出すと、ラジカからは反抗心といったものを感じない。これでいいのか......。まあまあまあ、いいじゃないですかと、写真家の小原になだめられる。これは娯楽なんですよ。まあ、たしかにそうだ。これは上等なポップ・ミュージックだ。いまはそれで充分。スカンジナヴィア半島のキュートな女性がカリブ海のリズムを刻んでいる、そして最後の最後には誰もが楽しそうに踊っている......。そうだ、難しいことは二木に任せておけばいいのだ。

 ラジカはラジカについて言う。「ラジカっていうのは、知合いのアフリカ系の女の子の名前。なので、ノルウェー語ではなくアフリカの言葉だと思うわ」
 メンバー4人はみんな幼なじみ?
 「バンドのメンバーとは6歳のころから知合い。同じ学校だった。家も近所よ。15歳のころに4人でバンドを結成。昔から楽器を演奏できたというわけではなく、みなこのときからスタートして、バンドやりながら少しずつ上達していった感じ」
 いまどきなぜバンドを?
 「単純にカッコいいと思ったから。結成して3か月で初めてのライヴをやった。それ以来ずっと4人でやっている。たまにバンドに加わりたいという人もいたけど、楽器がヴァイオリンだったりとか、自分たちにはマッチしなかったり、あとは4人があまり仲良過ぎて、他の人が入り込めなかったりとか。とにかく4人で、まるで兄弟のように仲がいい。ボブ・ディラン、ビートルズ......地元ベルゲンのバンドなどのコピーからスタートして、でもすぐにオリジナルを作りはじめたわ」
 ベルゲンの音楽シーンって?
 「ベルゲンは小さな町なの。端から端まで30分くらいで歩いていけるほどのね。たいがいのライヴハウスも歩いていける。シーンも小さいから、ジャンルを超えてみなが団結している感じ。ライヴァルという感じはない。それでもスカンジナヴィアでもっとも影響力のある音楽シーンがあるわよ」
 なんでスカを?
 「きっかけはボブ・マーリー、最初はレゲエにハマったの。〈スタジオ・ワン〉とか昔のレゲエやスカを聴きはじめて、で、ツートーン――スペシャルズ、マッドネス、あるいはエルヴィス・コステロなんかを掘っていった。あと大きな影響としてはノルウェーのベルゲンのプログラム81というニューウェイヴ・バンドがあるの。メンバーの自宅の地下室で練習していたとき、たまたまこのバンドのレコードを親のコレクションから発見して、聴いて、衝撃を受けた。アルバムのタイトルも彼らのバンド名からとったのよ。自分たち1991年生まれなのでミックスさせて『プログラム91』ね。んー、同世代ではとくに気になるバンドはいないけど、アイスエイジは好きよ!」


 ライヴが終わってからも、余韻に浸るため、しばらく飲んで(実はラジカのライヴの前にもそれなりに飲んできていたのだが)、そして帰り際にラジカのメンバーに「カラオケに行ったら"アナーキー・イン・ザ・UK"を歌ってくださいね」と言い残すと、小原と一緒に同じ通りにあるクラブ・エイジアの〈ブラック・テラー〉に行った。途中から記憶が曖昧となって、翌日気がついたときには家の床のうえで寝ていた......。やらかしちゃったようです。みなさん、すいませんでした!

文:野田 努

RELATED

Razika- Program 91 Smalltown Supersound/カレンティート

Reviews Amazon iTunes