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Conny Plank / Various

Conny Plank / Various

Who's That Man - A Tribute To Conny

Grönland Records/Pヴァイン・レコード

Amazon

野田 努 Feb 15,2013 UP Old & New
E王

 『TECHNO definitive』の文中に、結果、もっとも多く出てきた固有名がノイ!だったことは、何度か話したが、さらに言えば、結局のところこれは、テクノの誕生においてコニー・プランクがもっとも重要な人物であるという、当たり前にして当たり前な結論が導き出されたということでもある。クラウス・ディンガーが「誓って」言っているように、「コニーがいなければノイ!はありえなかった」のだ。
 言うまでもないことだが、コニー・プランクは、クラフトワークとクラスターという電子音楽宇宙の2大巨星の生みの親である。1963年からケルンのスタジオで働き、マレーネ・ディートリッヒやシュトックハウゼンの仕事を身近で見ながらフリーのサウンド・エンジニアとなった彼は、クラウトロックの音の創造の現場で能力を発揮したばかりではない。まだ若かったバンドの経済面の面倒まで見た。そして、彼の音への追求心は、初期のクラウトロック(クラフートワーク、ノイ!、ラ・デュッセルドルフ、クラスター、ミヒャエル・ローター、アシュ・ラ・テンペル、カン等々)やアンビエント(ブライアン・イーノ等々)からポスト・パンク(ウルトラヴォックス、DAF、ディーヴォ、Phew等々)まで素晴らしい成果を残している。コニー・プランクの名前を冠したコンピレーション盤が出るのは必然であり、喜ばしい限りである。

 この4枚組のボックスには、22曲のコニー・プランクのプロデュースによる楽曲、1枚のリミックス集、そして1枚のライヴ音源(クラスターのメビウスとの1986年のメキシコでの演奏)が収められている。僕が真っ先に聴いたのは、もちろんこのライヴ音源だ。プランク作品のファンにとって、メビウス&プランク名義の一連の作品は、もっとも高次な楽しみなのだが、そうした期待を裏切らないどころか、ふたりのテクノオヤジのホモルーデンスとしてのふざけっぷりに口元がゆるまずにはいられない。ドイツ語とスペイン語が飛び交うなか、ヨーデルの残響がこだましたかと思えば、腐敗した電子音とインダストリアル・ビートが飛び出す。録音が悪いのは仕方がないとはいえ、これは発表するに値する(ごくごく初期のDAFを彷彿させる)。

 2枚のプロデュース作品集は、あらためてコニー・プランクのスリルに満ちた電子サウンドを聴ける。いまや封印されているクラフトワークの初期の作品がここに入らなかったことは残念だが、ここには、ノイ!、ラ・デュッセルドルフ、ミヒャエル・ローター、DAF、Phew、ユーリズミックス、メビウス&プランク、イーノ/メビウス/レデウスといったお馴染みの名前から、なかなか手に入りづらい伝説のバンド、Ibliss(クラフトワークの前身のOrganisationのメンバーが在籍していたころで知られる)の音源、〈スカイ〉レーベル時代の音源でもなかなか手の届かないStreetmark、たった1枚の7インチしか残さなかったPsychotic Tanks、同じように、Fritz Müllerといったほとんど知られていないアーティストの音源が収録されている。〈ドラッグ・シティ〉から発表されたメイヨ・トンプソンとの共作も入っている。ポスト・パンクの感覚が強調されているように思うが、CD1の8曲目のメビウス&プランクの"Conditionierer"を楽しめない人は手を出さないほうがいい。
 逆に、"Conditionierer"のモータリック・サウンドがたまらなく気持ち良いと思える人にとっては、これは宝石箱である。ドイツで生まれたテクノの決定的なコンピレーション盤だ。CD3のリミックス集に関しては、リミキサーの名前だけ挙げておこう。Walls(コンパクトからの作品で知られる)、Automat (イタロ・ディスコ)、Justus Köhnke(コンパクトからの作品で知られる)、Fujiya & Miyagi、Eye、Crato(コンパクトからの作品で知られる)......、Eyeはノイ!の『2』の1曲目、Fujiya & Miyagiは"Conditionierer"、CratoはPhewの曲を手がけている。

 コニーズ・スタジオの貴重な写真で構成されたブックレットも素晴らしい。ドイツの田舎の当時のスタジオの雰囲気を垣間見れる。またブックレットには、ブライアン・イーノ、ホルガー・シューカイ、ミヒャエル・ローター、アニー・レノックスらが泣かせる文章を寄せている。とくに僕は、シューカイの文章がとても気に入った。彼は純粋な音楽バカだったコニー・プランクの人柄について書いている。デヴィッド・ボウイですらスタジオから追い返すほど、貨幣のためには動かなかった反商業主義的な一面を紹介して、深夜のラジオ番組でふたりで作った曲をかけたときのエピソードで話を結んでいる。あるリスナーがいますぐ気味の悪い音楽を止めて欲しいという苦情の電話してきたそうだ。シューカイはこう書いている。「だが、不安を感じているときこそ、もっとも音楽を楽しめるものだ。そうだろう、コニー?」
 しかし、いまさらこの音楽から不安を感じる人もいないだろう。むしろ、彼は人びとの悦びのためにやっていたとしか思えない。

野田 努