「All We Are」と一致するもの

My Bloody Valentine - ele-king

 先日、ストリーミングの解禁とLP&CDのリイシューで大いに話題を集めたマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。彼らは今度、NTS Radio のキュレイターを務めることになった。同ラジオの10周年を祝う企画で、放送は4月19日。アルカやドップラーエフェクト、ミカ・レヴィやセオ・パリッシュに混じってのキュレイトというのは興味深い。聴き逃し厳禁案件です。


マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
待望のサブスク解禁が話題沸騰中!
4月19日には NTS Radio にて
特別放送をキュレーション!
5月21日には新装盤CDとLPが再発!

3月31日に、突如『Isn’t Anything』『loveless』『m b v』のアルバム3作、そして4枚のEP作品とレアトラックをまとめた『ep’s 1988-1991 and rare tracks』のストリーミング配信およびダウンロード販売を一挙に解禁したマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。世界中の音楽ファンが熱狂する中、日本でも Spotify の「バイラルトップ50」の1位となるなど、大きな話題となった。

ストリーミング、CD/LP予約リンク
https://fanlink.to/mbv2021

5月21日には新装盤CDとLPの発売も控える中、英ロンドンの人気ネットラジオ局 NTS Radio の10周年を記念し、スペシャルゲストがキュレーターを務める特別企画『NTS 10』にマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが登場することが発表された。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは、初日となる4月19日(月)の放送でキュレーターを務める。なお、この企画は、世界の食糧資源の統合と分配の改善、食品の浪費の減少、食糧不足に悩む国と地域への協力を目的として創立されたグローバル・フードバンキング・ネットワーク(Global Foodbanking Network)への寄付を募るチャリティ放送となっている。キュレーターにはその他、アルカやミカ・レヴィ、ローリー・アンダーソン、セオ・パリッシュらが名を連ねている。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの新装盤CDとLPは5月21日に世界同時リリース!
各作品の発売形態は以下の通り。

Isn't Anything
・国内盤CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/リマスター音源)輸入盤CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/オリジナル1/4インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/オリジナル1/4インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには『Feed Me With Your Kiss』EPのアートワークを採用(『m b v』のTシャツセットのデザインとは異なります)

loveless
・国内盤2枚組CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/CD1にリマスター音源、CD2には1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録)
・輸入盤2枚組CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには、アルバムのアートワークを採用

m b v
・国内盤CD(高音質UHQCD仕様/解説書付)
・輸入盤CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/オリジナル1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/オリジナル1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+Tシャツセット用のTシャツ・デザインには『Feed Me With Your Kiss』EPのアートワークを採用(『Isn't Anything』のTシャツセットのデザインとは異なります)
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP+Tシャツセット用のTシャツ・デザインには『Glider』EPのアートワークを採用

ep’s 1988-1991 and rare tracks
・国内盤2枚組CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/リマスター音源)
・輸入盤2枚組CD
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには『You Made Me Realise』EPのアートワークを採用

UHQCD (Ultimate High Quality CD):
CD規格に準拠しており、既存のプレーヤーで再生可能。
新しく開発された製法により、従来の高音質ディスクよりさらに原盤に忠実な音を再現。


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: Isn't Anything
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-666 ¥2,300+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-666T ¥6,800+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP158X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP158XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11779


Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
01. Soft As Snow (But Warm Inside)
02. Lose My Breath
03. Cupid Come
04. (When You Wake) You’re Still In A Dream
05. No More Sorry
06. All I Need
07. Feed Me With Your Kiss
08. Sueisfine
09. Several Girls Galore
10. You Never Should
11. Nothing Much To Lose
12. I Can See It (But I Can’t Feel It)

[LP TRACKLISTING]
SIDE ONE
01. Soft As Snow (But Warm Inside)
02. Lose My Breath
03. Cupid Come
04. (When You Wake) You’re Still In A Dream
05. No More Sorry
06. All I Need
SIDE TWO
01. Feed Me With Your Kiss
02. Sueisfine
03. Several Girls Galore
04. You Never Should
05. Nothing Much To Lose
06. I Can See It (But I Can’t Feel It)


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: Loveless
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤2CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-667 ¥2,500+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-667T ¥7,000+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP159X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP159XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11780


Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
CD 1: remastered from original 1630 tape
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
07. Come in Alone
08. Sometimes
09. Blown a Wish
10. What You Want
11. Soon
CD 2: mastered from original 1/2 inch analogue tapes
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
07. Come in Alone
08. Sometimes
09. Blown a Wish
10. What You Want
11. Soon

[LP TRACKLISTING]
A Side
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
B side
01. Come in Alone
02. Sometimes
03. Blown a Wish
04. What You Want
05. Soon


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: m b v
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-668 ¥2,300+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-668T ¥6,800+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP160X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP160XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11781


CD Tシャツセット


LP Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
01. she found now
02. only tomorrow
03. who sees you
04. is this and yes
05. if i am
06. new you
07. in another way
08. nothing is
09. wonder 2

[LP TRACKLISTING]
side a
01. she found now
02. only tomorrow
03. who sees you
04. is this and yes
side b
01. if i am
02. new you
03. in another way
04. nothing is
05. wonder 2


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: ep's 1988-1991 and rare tracks
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤2CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-669 ¥2,500+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-669T ¥7,000+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11782


Tシャツセット

[CD TRACKLISTING]
CD 1
01. you made me realise
02. slow
03. thorn
04. cigarette in your bed
05. drive it all over me
06. feed me with your kiss
07. i believe
08. emptiness inside
09. i need no trust
10. soon
11. glider
12. don’t ask why
13. off your face

CD 2
01. to here knows when
02. swallow
03. honey power
04. moon song
05. instrumental no. 2
06. instrumental no. 1
07. glider (full length version)
08. sugar
09. angel
10. good for you
11. how do you do it

MYSTICS - ele-king

 スウェーデンのマーカス・ヘンリクソン、札幌の Kuniyuki Takahashi、そして昨年『ASTRAL DUB WORX』を発表したした東京の J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY) によるコラボ・プロジェクト、MYSTICS がアルバムをリリースする。
 なんでも、「共通する神秘主義的な思考、センスが音楽の中で爆発し、化学変化が起こ」ったそうで、ハウスを基礎にしつつ、尺八や箏、アラビック・ヴァイオリンなどをフィーチャーしたディープな一作に仕上がっているようだ。ダブミックスは内田直之。神秘的な音楽旅行を体験しよう。

My Bloody Valentine - ele-king

 これまでなかったのか。そう、これまでなかったのだ。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが残した3枚のオリジナル・アルバムとEP集、計4タイトルが、ついにストリーミングにて解禁される。さらに5月21日には、同4タイトルがCDとLPで再発される!
 マイ・ブラッディ・ヴァレンタインといえば、今年で30周年を迎える『ラヴレス』が出た当時、かのブライアン・イーノが「アンビエント」と呼んで絶賛したほどで、後のロックにおける音響実験に多大なる影響を与えたバンドだ。初めて聴く方にはまたとない絶好のチャンス、長年のファンもこれを機にあらためて彼らの音を浴びてみよう。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
超待望のサブスク/デジタル解禁
至福の轟音が一挙リリース!
5月21日には新装盤CDとLPの再発売も決定!
数量限定のTシャツセットや各種特典も見逃せない!

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが、〈DOMINO〉との電撃契約を発表し、本日より、1988年の1stアルバム『Isn’t Anything』、1991年の2ndアルバム『loveless』、2013年の3rdアルバム『m b v』、そして4枚のEP作品とレアトラックをまとめた『ep’s 1988-1991 and rare tracks』の4作すべてがストリーミング配信およびダウンロード販売が初解禁! さらに、音源からパッケージに至るまで、バンドのこだわりが詰まった新装盤のCDとLPフォーマットで5月21日に待望の発売も決定! 国内盤CDは、高音質UHQCD仕様 (全てのCDプレーヤーで再生可能)となる。それぞれ数量限定のTシャツセットや、レコードショップ別の特典など、すべての音楽ファンにとって見逃せないアイテム満載の再発キャンペーンがスタートする。

LISTEN TO MY BLOODY VALENTINE ON SPOTIFY HERE >>>
LISTEN TO MY BLOODY VALENTINE ON APPLE MUSIC HERE >>>
LISTEN TO MY BLOODY VALENTINE ON YOUTUBE HERE >>>

過去40年の音楽史において、最も革新的かつ影響力の大きいバンドの一つとして君臨し、音楽作品の素晴らしさはもちろん、大音量で演奏する轟音ライヴ、世代を超えたカルチャーへの影響などから、多大なる尊敬を集めるマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。ビリンダ・ブッチャー、ケヴィン・シールズ、デビー・グッギ、コルム・オコーサクが生み出した独創的なサウンドは、同時代のギター・バンドとは、一線を画しただけでなく、それまでの常識を根底から覆し、未来を予感させるものだった。

1988年にリリースされたデビュー・アルバム『Isn’t Anything』によって、彼らはオルタナティブ・ミュージックに革命を起こし、その後のギター・ミュージックに新しいアプローチをもたらした。そのサウンドは、数多のサブジャンルの雛形となり、ギター・ミュージックとスタジオ制作における画期的手法を提示した。同声域で歌うことで完璧に溶け合うジェンダーレスなケヴィン・シールズとビリンダ・ブッチャーのヴォーカルは、シールズのギターが奏でる眩暈がするような強烈な音を補完するもう一つのメロディックなレイヤーとして機能している。このアルバムは、激しく推進的なものから静かで不穏なものまで、収録曲の多くに存在する不気味な空間感覚によって特徴付けられている。

1991年の2ndアルバム『loveless』は、まず音楽的に、当時発表されたどの作品よりも先進的で予想を超えるものだった。ケヴィン・シールズとバンドは、純粋な感覚に基づくサウンドを徹底的に追い求め、聴く者の五感を圧倒する作品を完成させた。1990年を代表する本作は、スタジオ録音の可能性を極限まで追求した完全無欠の傑作として評価され、ザ・ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』やマイルス・デイヴィスの『In A Silent Way』、スティーヴィー・ワンダーの『Innervisions』とも肩を並べる金字塔として賞賛されている。

バンドは、1988年のデビュー・アルバム『Isn’t Anything』がリリースされる前に、『You Made Me Realise』と『Feed Me With Your Kiss』という2枚のEP作品を連続して発表しており、『Isn’t Anything』 と1991年発売の2ndアルバム『loveless』の間にも、同じくEP作品の『Glider』と『Tremolo』の2枚をリリースしている。それら、熱心なリスナーに愛される4枚のEP作品とレア楽曲を一つにまとめた『ep’s 1988-1991 and rare tracks』は、名曲がたくさん詰まったファン必携盤だ。

20年間の潜伏期間を経て、2013年に突如発表された3rdアルバム『m b v』は、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインにとって最も実験的であると同時に、最もメロディックで即効性のある作品であり、改革に対する彼らの飽くなき意欲を証明したものだった。音楽とジャンルの概念をさらに押し広げた驚異的な作品として高く評価され、これまでにはなかったタイプの楽曲も収録されている。別世界の音のようであり、親しみやすくもあり、直感的に聴くこともできる本作は、それまで知られていたMBVの代名詞的サウンドが、驚くほど美しく変貌を遂げた新時代の傑作である。アルバムの最後に収録されている “Wonder 2” は、その証明であり、シールズの催眠的なギター・サウンドとドラムンベースが混ざり合ったサウンドは、多くを驚嘆させた。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの新装盤CDとLPは5月21日に世界同時リリース!
各作品の発売形態は以下の通り。

Isn't Anything
・国内盤CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/リマスター音源)輸入盤CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/オリジナル1/4インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/オリジナル1/4インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには『Feed Me With Your Kiss』EPのアートワークを採用(『m b v』のTシャツセットのデザインとは異なります)

loveless
・国内盤2枚組CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/CD1にリマスター音源、CD2には1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録)
・輸入盤2枚組CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには、アルバムのアートワークを採用

m b v
・国内盤CD(高音質UHQCD仕様/解説書付)
・輸入盤CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/オリジナル1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/オリジナル1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+Tシャツセット用のTシャツ・デザインには『Feed Me With Your Kiss』EPのアートワークを採用(『Isn't Anything』のTシャツセットのデザインとは異なります)
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP+Tシャツセット用のTシャツ・デザインには『Glider』EPのアートワークを採用

ep’s 1988-1991 and rare tracks
・国内盤2枚組CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/リマスター音源)
・輸入盤2枚組CD
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには『You Made Me Realise』EPのアートワークを採用

UHQCD (Ultimate High Quality CD):
CD規格に準拠しており、既存のプレーヤーで再生可能。
新しく開発された製法により、従来の高音質ディスクよりさらに原盤に忠実な音を再現。


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: Isn't Anything
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-666 ¥2,300+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-666T ¥6,800+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP158X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP158XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11779


Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
01. Soft As Snow (But Warm Inside)
02. Lose My Breath
03. Cupid Come
04. (When You Wake) You’re Still In A Dream
05. No More Sorry
06. All I Need
07. Feed Me With Your Kiss
08. Sueisfine
09. Several Girls Galore
10. You Never Should
11. Nothing Much To Lose
12. I Can See It (But I Can’t Feel It)

[LP TRACKLISTING]
SIDE ONE
01. Soft As Snow (But Warm Inside)
02. Lose My Breath
03. Cupid Come
04. (When You Wake) You’re Still In A Dream
05. No More Sorry
06. All I Need
SIDE TWO
01. Feed Me With Your Kiss
02. Sueisfine
03. Several Girls Galore
04. You Never Should
05. Nothing Much To Lose
06. I Can See It (But I Can’t Feel It)


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: Loveless
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤2CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-667 ¥2,500+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-667T ¥7,000+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP159X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP159XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11780


Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
CD 1: remastered from original 1630 tape
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
07. Come in Alone
08. Sometimes
09. Blown a Wish
10. What You Want
11. Soon
CD 2: mastered from original 1/2 inch analogue tapes
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
07. Come in Alone
08. Sometimes
09. Blown a Wish
10. What You Want
11. Soon

[LP TRACKLISTING]
A Side
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
B side
01. Come in Alone
02. Sometimes
03. Blown a Wish
04. What You Want
05. Soon


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: m b v
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-668 ¥2,300+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-668T ¥6,800+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP160X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP160XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11781


CD Tシャツセット


LP Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
01. she found now
02. only tomorrow
03. who sees you
04. is this and yes
05. if i am
06. new you
07. in another way
08. nothing is
09. wonder 2

[LP TRACKLISTING]
side a
01. she found now
02. only tomorrow
03. who sees you
04. is this and yes
side b
01. if i am
02. new you
03. in another way
04. nothing is
05. wonder 2


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: ep's 1988-1991 and rare tracks
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤2CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-669 ¥2,500+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-669T ¥7,000+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11782


Tシャツセット

[CD TRACKLISTING]
CD 1
01. you made me realise
02. slow
03. thorn
04. cigarette in your bed
05. drive it all over me
06. feed me with your kiss
07. i believe
08. emptiness inside
09. i need no trust
10. soon
11. glider
12. don’t ask why
13. off your face

CD 2
01. to here knows when
02. swallow
03. honey power
04. moon song
05. instrumental no. 2
06. instrumental no. 1
07. glider (full length version)
08. sugar
09. angel
10. good for you
11. how do you do it

Masahiro Takahashi & UNKNOWN ME - ele-king

 サン・アロウポカホーンティッドピーキング・ライツなどのリリースで知られるLAのレーベル〈Not Not Fun〉から、日本人アーティスト2組の新作がリリースされる。
 1組目はカナダ在住の Masahiro Takahashi によるカセット作品。さまざまな音楽や映画などからインスパイアされたアンビエント・ポップが奏でられている。
 もう1組は、やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHI、大澤悠太からなるアンビエント・メディテーション・プロジェクト、UNKNOWN ME の初のLPで、食品まつりやジム・オルークも参加している。
 どちらもチェックしておきましょう。

アメリカの〈Not Not Fun Records〉から4月30日に同時発売される、日本人アーティスト2組

◆Masahiro Takahashi / Flowering Tree, Distant Moon

カナダ在住のマルチインストゥルメンタリスト Masahiro Takahashi が、パンデミック中のトロントで1人で制作した作品『Flowering Tree, Distant Moon』を、USの老舗〈Not Not Fun レコード〉からカセットでリリース。

窓から見える花ひらく林檎の木、雅楽、移民のノスタルジア、郷愁、ジョナス・メカス『リトアニアへの旅の追憶』、アンソニー・ムーア、小泉文夫、多和田葉子などからインスパイアされた、静かでみずみずしいアンビエント・ポップ。ソフトウェアシンセサイザー、グラニュラーサンプラー、プラグインエフェクター、iPad、MIDIコントローラーとシュルティ・ボックスにより制作。空想と子守唄の間で、音楽は揺れ、輝く弧を描いて解きはなたれる。枯れた林檎の木が白く開花するまでの時間。「部屋の外の世界を夢想し、記憶の中のメロディーをたどりました」。

Japanese multi-instrumentalist Masahiro Takahashi's latest album is a meditation on seasons and distance, recorded in isolation at his temporary home studio in Toronto. Following “the coldest winter I have ever experienced,” he began crafting hushed, lush vignettes of color wheel electronics with an array of software synthesizers, granular samplers,plug-in FX, MIDI controllers, and a shruti box.

The songs sway, shimmer, and unspool in sparkling arcs, between reverie and lullaby, inspired variously by blooming apple trees, gagaku music, the “nostalgia of immigrants,” and longing for home. Flowering Tree, Distant Moon moves from soothing to surreal, a swirl of quiet melody and imagined landscapes, as transportive for its listeners as its maker: “I dreamt of places outside my room and traced the music from my memories.”

Title: Flowering Tree, Distant Moon
Artist:Masahiro Takahashi
Label: Not Not Fun
Format : Cassette Tape
Catalogue No.: NNF371
Release Date: 2021/4/30

Masahiro Takahashi マサヒロ・タカハシ

マルチインストゥルメンタリスト。ギターや鍵盤、ソフトウェアを使い、音響的なアプローチと、メロディのある音楽をつくる。2021年、アメリカのテープシーンを牽引してきた〈Not Not Fun Records〉からカセットアルバム『Flowering Tree, Distant Moon』をリリース。これまでにベルギーの〈Jj Funhouse〉をはじめ、カナダやドイツ、UK、ロシアなど海外のインディーレーベルにて作品を発表している。2019年には Takao (エムレコード)のライブメンバーとして、ララージの東京公演オープニングをつとめた。カナダ在住。
https://masahirotakahashi.bandcamp.com/


◆UNKNOWN ME / BISHINTAI

やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHI の作曲担当3人と、グラフィック・デザインおよび映像担当の大澤悠大によって構成される4人組アンビエント・ユニット「UNKNOWN ME」が、4作目となる待望の1st LP『BISHINTAI』を、米LAの老舗インディー・レーベル〈Not Not Fun〉からリリース。

都市生活者のための環境音楽であり、心と体の未知の美しさを探求する、多彩な曲調のアンビエント・メディテーション。食品まつり、ジム・オルーク、MC.sirafu、中川理沙、がゲスト参加。

The inaugural LP by Tokyo Metropolis electronica entity UNKNOWN ME, Bishintai, is a sublime synthetic suite of cosmic wellness transmissions exploring “the unknown beauty of your mind and body,” appropriately named for a kanji compound meaning “beauty, mind, body.” Crafted with software,synthesizer, steel drum, rhythm boxes, and robotic voice by the core quartet of Yakenohara, P-RUFF, H. Takahashi, and Osawa Yudai, the album unfolds like a holographic guided meditation, soothing but cybernetic,framed by subways and sky malls. Latticework electronics flicker with texture, glitch, wobble, and mirage, themed around sensory perception and body parts.

A diverse cast of collaborators assist in actualizing the collection's uniquely urban expression of new age ambient, from psychedelic footwork riddler foodman to multi-instrumentalist institution Jim O'Rourke to Japanese underground shape-shifters MC.Sirafu and Lisa Nakagawa. Although the group cites a therapeutic muse (“made for the maintenance of the minds of city dwellers”), Bishintai shimmers with an alien strangeness, too, like decentralized relaxation systems obeying sentient circuits. This is music of utopia and nowhere, channeling worlds within worlds, birthed from a sonic ethos as simple as it is sacred: “in pursuit of beautiful tones.”

Title:BISHINTAI
Artist:UNKNOWN ME
Label: Not Not Fun
Format : Record, Digital & Streaming
Catalogue No.: NNF360
Release Date: 2021/4/30

UNKNOWN ME

やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHIの作曲担当3人と、グラフィック・デザインおよび映像担当の大澤悠太によって構成される4人組アンビエント・ユニット。“誰でもない誰かの心象風景を建築する” をコンセプトに、イマジネーションを使って時間や場所を自在に行き来しながら、アンビエント、ニューエイジ、バレアリックといった音楽性で様々な感情や情景を描き出す。2016年7月にデビュー・カセット「SUNDAY VOID」をリリース。2016年11月には、7インチ「AWA EP」を、2017年2月には米LAの老舗インディー・レーベル〈Not Not Fun〉より亜熱帯をテーマにした「subtropics」を、2018年12月には同じく〈Not Not Fun〉より20世紀の宇宙事業をテーマにした「ASTRONAUTS」をリリース。「subtropics」は、英国「FACT Magazine」の注目作に選ばれ、アンビエント・リバイバルのキー・パーソン「ジジ・マシン」の来日公演や、電子音楽×デジタルアートの世界的な祭典「MUTEK」などでライブを行った。2021年4月、都市生活者のための環境音楽であり、心と体の未知の美しさをテーマにした待望の1st LP『BISHINTAI』をリリース。

2 僕の中のAriel Pink - ele-king

 こんにちは。光の速さで時が過ぎ、2021年もすでに2月ですが、世間は緊急事態宣言が出ていてもわりと賑やか。コロナ終結の兆しはまったく見えませんが、一足先に終わりを告げたトランプ政権。ですが、ドナルド・トランプは最後の最後までドナルド・トランプ。ビキニチューバッカ男や演壇泥棒、Qanon、過激なトランプ支持者たちを扇動し連邦議会突入し占拠するという米英戦争以来200年ぶりのド派手なクーデター未遂をやらかしたわけですが、インディー・ヒーローがその現場にいたとか。

Shame - Drunk Tank Pink

 Phoebe Bridgers, Mitski, Khruangbinなど近年ヒットが多い〈Dead Oceans〉からShameの待望のセカンド・アルバム『Drunk Tank Pink』です。 僕は2018年にLAで彼らのライヴを観たのですが、本国イギリスやEUはもちろんアメリカで も細かく回ってかなりの数をこなしていてだいぶ完成されているなという印象でした。『Drunk Tank Pink』のイントロと共にヴォーカルが登場、Tシャツを脱いで「We're white christian band from England!!」と怒鳴り、会場大ウケ。1曲目からバンドもオーディエンスもフルスロットル。その後もツバ吐いて体に塗ったり、ずっと乳首いじりながら歌ったり、ベースがステージを走り回って頭からコケたりめちゃくちゃだけど会場はもう盛り上がり過ぎじゃないかってくらいの熱気で、曲間のジョークもウケるウケる。サウスロンドンのインディー・シーンで頭ひとつ抜け出る理由はこれか、と妙に納得した思い出があります。そんなShameの新作は曲がかなり複雑で、ポスト・ロック的な、よりライヴを意識したアルバム。


 そうご存じ、Ariel PinkとJohn Mausです。正直僕は世代ではないけどもちろん大好きで、僕はAntiトランプというのもあり、わりと悲しかったけど、いままでヒーローと崇めていたのにいきなり掌返してレコード叩き割る人もいるのか……それはそれで落ち込む。  アメリカ国民の半分はトランプ支持者というのも事実で、言い出さないだけで隠れトランピストやレイシストのミュージシャンやアーティストもアメリカのみならず日本にもまだまだいるでしょうし、音楽業界内でのセクシズム関連の問題もいまだ根深い。批判も大いに必要。  Arielから話は逸れますが、トランピストに関してはバカと揶揄するのは簡単だが(バカじゃないとは言ってない)ただ“排除”していったところで怒らせるだけで、むしろその行為がこの分断のそもそもの一因なのでは? と思うのです。数は減ろうとも根絶には至らず、またいつか揺り返しとして“そういう”主義に同調する人びとが増える。これは永く繰り返されてきたことで、レイシズム、セクシズムその他諸々の悪習を根絶やしにするためには、吊し上げて制裁を加えるのではなく、彼らが何故そのような思想に陥ったかを検証し、対話し、忘れず、教育に生かすことではないでしょうか。BLMに関しても、僕の認識としては、個人単位での批判ではなく、BLMという運動のもとに個々の事件や問題を集約し、構造その物を標的に改革を目指すことがもっとも効果を出すという理論で動いているからこそいま大きな力を持つ運動となっているのではないでしょうか。

Holy Motors - Horse

 NYの〈Wharf Cat Records〉からエストニアのドリーム・ポップ・バンド、Holy Mortorsのセカンド・アルバムです。本人たちがルーツだとするアメリカン、ロカビリー・テイスト満載。でもいくらアメリカナイズされようとも拭えない寒い国ならではの霧がかかった様な陰鬱さ。そのバランスが心地よいドリーム・ポップです。ツイン・ピークス好きは必聴。


 それでも僕はArielがレイシストであれど彼のレコードに罪があるのか? 2009年に天邪鬼な変人オタク野郎を〈4AD〉と世界が受け入れただけで彼自身は子供の頃から何も変わって無いような人で、そこがみんな好きだったんじゃないの? とも思ったり。 ただ、変わったのは僕らでArielのレコードはいつも変わらずそこにいてくれる。

Viagra Boys - Welfare Jazz

 スウェーデン、ストックホルムのインディ・レーベル、〈YEAR0001〉からViagra Boysのセカンド・アルバム。もう最高っ! 前作よりも色付いたようにゴージャスになって再登場。基本ポスト・パンクだけど、ヴィンヴィンなベースと反復されるビートがずっと聴いてると気持ちよぉ~くなってくる。Suicideのそれと似てるかも。 彼ら見た目が怖すぎるのですが、なかでもヴォーカルの全身タトゥーでビールっ腹のおじさん、IDLESのヴォーカルとタメ張れるくらい怖い。でも半ケツでフラフラ踊りながら歌う姿が超笑えるので一見の価値ありです。これもライヴが楽しみなアルバム。早く生ケツ……大きい音で聴きたいな~。

Roberto Musci - Melanesia

 フランス〈Oxmose Records〉からイタリア・ミラノの実験音楽家、Roberto Musciの新作です。 前作『Tower of Silence』はエキゾチック・アンビエント、オリエンタルな雰囲気もあるけどアフリカの民謡っぽくもあり、彼は70年代から80年代にかけてインド、アフリカなどの国を放浪していたらしく、色んな国を旅している気分なれるわりと聴きやすいアルバムでした。
 今作は『Melanesia』というオーストラリアの北北東に位置するパプア・ニューギニアやソロモ ン諸島のある海洋一帯がテーマらしい。全然知らない。聞いたこともない。
 アルバムの説明によると、「メラネシアにある数千年の歴史のある民族音楽は人間と音楽の本質的なつながりを探究しており、その儀式的なサウンドと彼の音楽研究に基づく実験的、 電子的な手法がぶつかり合うメルティングスポットを発見できる。(中略)メラネシア海域ではその特徴から原始的な文化とおそらく音楽を保存している」(意訳) お分かりの通りだいぶ変わった方ですね。
 アルバム通して不穏なサウンドで、“Kauli Storm Song”という曲は雨音と雷が人の手が加わっていない自然の恐怖を感じる。前作も真面目なアルバムだったけど今作も本気(マジ)。


 このAriel騒動だけじゃなく、好きだったアーティストが突拍子もないことして幻滅なんてよくあることで、僕らは所詮自分から見た彼らしか見れないから、僕から見たAriel、友だちとしてのAriel、息子としてのAriel、アーティストとしてのAriel、Arielの自意識、と全部彼だけど彼じゃない。そしてArielの曲はArielだけどArielにあらず。これはアーティストや芸能人に限らず身近な存在にも適応すると思う。だからArielの政治的な態度は受け付けなくて批判しても、彼の曲まで嫌いになる必要は無い。そうやって考えると誰かを嫌いにならなくて済むんじゃないかと思った1月でした。罪を憎んで人を憎まず。アリエルのバカヤロウ!

R.I.P. Double K (People Under The Stairs) - ele-king

 LAを拠点に活躍し、2019年に引退を発表していたヒップホップ・デュオ、People Under The Stairs (以下、P.U.T.S.)のメンバーとして知られる Double K (本名:Michael Turner)が、1月30日に入院先の病院にて亡くなった。享年43歳で、詳しい死因は明らかになっていないが、彼の友人であるLAのベテランDJ、Mark Luv によると Double K は「安らかに亡くなった」という。


来日時の様子(写真:大前至)

 P.U.T.S.ではMC、プロデューサー、ライヴDJも担当していた Double K が、Thes One と共にグループを結成したのが1997年頃のことだ。LAのミッドシティと呼ばれるエリアにある高校に通っていた彼は、同じ高校に通う(のちに Living Legends を結成することになる) Murs、Eligh、Scarub らが中心となっていたクルー、Log Cabin Crew の一員として活動しながら、すでにビートも作りはじめていた。16歳のときにサンプルネタを探すために訪れたレコード屋にて出会ったのが同じくまだ十代であった Thes One で、それぞれ自分の作ったビートを聴かせあいながらお互いを認めるようになり、その後、彼らは P.U.T.S. としての活動をスタートすることになる。

 USC (University of Southern California)に通う大学生であった Thes One の学生ローンを元手に、1998年、彼らは最初のシングル「The Next Step II」とアルバム『The Next Step』をリリース。ともにDJでありラッパーでありビートも作っていたふたりに共通するのは、彼らが強く影響を受けた80年代から90年代半のヒップホップのフレイヴァーを継承しながら、自ら見つけ出した誰も知らないサンプリング・ネタで新しい音楽を作り出すという点で、いまで言うブーンバップのスタイルを彼らはデビューの時点で確立していた。自主制作盤を手に彼らは契約できるレーベルを探していたが、しかし、LAのヒップホップ・シーンの中で徒党を組むようなタイプではなかった彼らに後ろ楯はなく、最終的に契約を結んだのがサンフランシスコを拠点とするヒップホップ色の薄いレーベル、〈OM〉であった。しかし、〈OM〉と契約を結んだことで彼らはヨーロッパにファン・ベースを築くことに成功し、さらに世界的なアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの盛り上がりの波にも乗り、日本を含む世界中に数多くのファンを獲得する。

 グループ結成から解散までの22年の間に、P.U.T.S.は通算10枚のフル・アルバムと2枚のコンピレーション・アルバムを残してきた。彼らの作品の中でも特に個人的に思い出深いのが、筆者がLAに住んでいた期間にリリースされた通算5枚目のアルバム『Stepfather』と次の『FUN DMC』だ。『Stepfather』リリースのタイミングに合わせて彼らの日本ツアーが行なわれたのだが、そのタイミングで筆者も一時帰国し、彼らが日本のヒップホップ・ファンから強く愛されていることをダイレクトに感じた。『FUN DMC』発売時のLAでのリリース・イベントではステージ上にビールサーバーが置かれ、様々なアーティストや関係者と共にステージ上でビールを飲みながらライヴを観るという貴重な経験もさせてもらった。そして、『FUN DMC』の後にシングル・リリースされた「Trippin At The Disco」のPVになぜか一瞬だけ出演することになったことも忘れられない。

 P.U.T.S.のふたりには取材などもさせてもらったが、一緒にいて感じたのがグループとしてのふたりのバランスの良さだ。Thes One は P.U.T.S.のスポークスマンであり、細かい事柄にも気を配りながら、オーディエンスを強く惹きつける勢いや爆発力もあり、明るくポジティヴな面も持っている。ライヴ中はラップもしながらDJもする Double K は、少し下がって Thes One の後ろのポジションにいながら、落ち着いて全体を見ながらムードを作っていくタイプで、決して口数は多くはないが彼のメローな雰囲気は人に安らぎを与える。全く異なるタイプのふたりだからこそ、お互いを補完することができたであろうし、絶対的な信頼が彼らの22年間のキャリアを支えてきたに違いない。

 前述したように、2019年にリリースされたラスト・アルバム『Sincerely, the P』を最後に音楽業界から引退し、ファンを驚かせた彼ら。地元LAでも引退に合わせたライヴは一切行なわれず、ラスト・アルバムだけを残して突然いなくなってしまった印象が強い。彼らの引退に関しては唯一『LA Times』にインタヴュー記事が掲載されているが、彼らが音楽をはじめたときとの環境の違いや自らの年齢なども理由としながら、アーティストとしてやり切ったという前向きな姿勢も感じられる。その一方で記事では Double K の健康状態にも少し触れており、もしかしたらそれが彼らが突如引退した理由のひとつであったのかもしれない。

 Double K の死は本当に悲しい出来事であるが、P.U.T.S.が残してきた音楽はこれからも色褪せることはなく永遠に残っていくだろう。彼らのライヴでの定番曲であり、間違いなく彼らの一番の代表曲である “San Francisco Knights” を聴きながら、この追悼文を締めたい。


https://open.spotify.com/track/0msneWUDfYKAGrifwEDhtl

Allen Ginsberg's The Fall of America - ele-king

 公民権運動にヴェトナム戦争にと、激動の時代に詩人アレン・ギンズバーグが全米を旅してものした詩集、『アメリカの没落』(1973年発表)の50周年記念プロジェクトが始動している。
 同詩集をミュージシャンたちが独自に解釈する──というのがこのプロジェクトの主旨で、名うての音楽家たちが集結したコンピがデジタルで2月5日に、フィジカルでは6月4日に発売されるのだけれど、なんとそこに坂本慎太郎が参加しているのだ。
 しかも驚くなかれ、同コンピにはヨ・ラ・テンゴサーストン・ムーア&リー・ラナルド、アンジェリーク・キジョーにハウィー・B、ディヴェンドラ・バンハートなどなど、そうそうたる顔ぶれが並んでいる。テーマ的にもまさにいまのアメリカにふさわしい(というと語弊があるけど)きわめて今日的なものだし、これは聴いておきたい1枚ですね。詳細は下記を。

Mouse On Mars - ele-king

 マウス・オン・マーズが2月26日に新作『AAI』をリリースする。ビッグなゲストを多数招いた『Dimensional People』以来3年ぶりのアルバムだ。
 タイトルは「アナキック・アーティフィシャル・インテリジェンス」の略だそうで、すなわちA.I.シリーズのさらなる解放と拡張……というわけではなく、作曲ツールとしてガチのAIを使用していることに由来するみたい。なんでもこの新作のために、AI技術者やプログラマーたちと新たなソフトウェアまで制作したそうで。すごいです。
 現在シングルとして “The Latent Space” と “Artificial Authentic” の2曲が公開中。どちらもドラム部分と上モノの応酬がとんでもないことに。これはアルバム、かなり期待できそうじゃない?

Mouse On Mars『AAI』
マウス・オン・マーズ『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』

企画番号:THRILL-JP 53 / HEADZ 250(原盤番号:THRILL 537)
価格:2,100円+税
発売日:2021年2月26日(金)※(海外発売:2021年2月26日)
フォーマット:CD / Digital(デジタル配信も同時リリース)
バーコード:4582561393624

01. Engineering Systems 00:22
 エンジニアリング・システムズ
02. The Latent Space 06:26
 ※2020年10月29日リリースの海外での1stシングル(配信のみ)
 ザ・レイタント・スペース
03. Speech And Ambulation 07:06
 スピーチ・アンド・アムビュレイション
04. Thousand To One 05:31
 サウザンド・トゥ・ワン
05. Walking And Talking 06:19
 ウォーキング・アンド・トーキング
06. Youmachine 04:08
 ユーマシーン
07. Doublekeyrock 02:25
 ダブルキーロック
08. Machine Rights 01:42
 マシーン・ライツ
09. Go Tick 04:20
 ゴー・ティク
10. The Fear Of Machines 01:43
 ザ・フィア・オブ・マシーンズ
11. Artificial Authentic 03:35
 ※2021年1月13日リリースの海外での2ndシングル(配信のみ)
 アーティフィシャル・オーセンティク
12. Machine Perspective 00:43
 マシーン・パースペクティヴ
13. Cut That Fishernet 05:31
 カッツ・ザット・フィッシャーネット
14. Tools Use Tools 00:31
 トゥールズ・ユーズ・トゥールズ
15. Loose Tools 01:02
 ルース・トゥールズ
16. Seven Months 02:31
 セヴン・マンスス
17. Paymig 00:47
 ペイミグ
18. Borrow Signs 01:50
 バロウ・サインズ
19. New Definitions 04:15
 ニュー・ディフィニションズ
20. New Life Always Announces Itself Through Sound 01:16
 ニュー・ライフ・オールウェイズ・アナウンシズ・イットセルフ・スルー・サウンド
21. How Will They Talk 05:54
 ハウ・ウィル・ゼイ・トーク

※ Track 21 …日本盤のみのボーナス・トラック

Andi Toma - Instruments, Electronics, Production
Jan St. Werner - Instruments, Electronics, Production
Dodo NKishi - Drums & Percussion
Louis Chude-Sokei - Text & Voice
Yağmur Uçkunkaya - Voice
Tunde Alibaba - Percussion
Drumno - Drums
Eric D. Clarke - Loose Tool
Nicolas Gorges, Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmann, Rany Keddo, Derek Tingle - AI
Zino Mikorey - Mastering(Zino Mikorey Mastering)
Kitaro Beeh - Vinyl Cut
Casey Reas - Computer Graphics
Rupert Smyth Studio - Art Direction
Paraverse Studios Berlin 2020

https://www.mouseonmars.com/

あのポップでキャッチーなエレクトロニック・サウンドが戻って来た。
常に革新的なサウンドを追求しながらも、人懐っこさを失わず、ダンス・ミュージックとしても秀逸で、圧等的なオリジナリティを更新し続けるマウス・オン・マーズの最新作。

マウス・オン・マーズは(2011年より)ドイツのベルリンを拠点とした、ヤン・エスティー(St.)・ヴァーナーとアンディ・トーマの電子音楽デュオ(以前はヤンはケルン、アンディはデュッセルドルフを拠点としていた)で、1993年の結成以来、実験性とポップさを持ち合わせた、常に刺激的なエレクトリック・サウンドを追求してきた(近年、海外ではIDMにカテゴライズされることが多いが、それに留まらない多彩な音楽性を持ち合わせている)。

ジャスティン・ヴァーノン(ボン・イヴェール)、アーロン&ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)、ザック・コンドン(ベイルート)、サム・アミドン他が参加した(生楽器や生演奏をフィーチャーし)壮大で重層的な2018年のThrill Jockey帰還作『ディメンショナル・ピープル』以来、約3年振りとなる新作アルバムは、AI(人工知能)技術を大胆に導入し(作曲ツールとしても活用)、アルバム・タイトルそのものが『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』となった。

ライブではドラム&ヴォーカルとして欠かせない存在であったドド・ンキシがドラム・パーカッションで復帰して(前作には未参加)、作家・学者・(英語)教授であるボストン大学アフリカン・アメリカン学部長Louis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)の言葉(彼のテキストをベースにした)や声を大々的にフィーチャーし、新進気鋭のコンピュータ・プログラマー集団(AI技術集団のBirds on MarsのNicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmannの3人と、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingle)と共に、またしても独創的で革新的な、最先端なサウンドを創り上げた。

ヤンとアンディは、Birds on Mars、Rany Keddo(ラニー・ケド)、Derek Tingle(デレク・ティングル)と共同で、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを制作し、Louis Chude-SokeiやYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストや声を入力し、シンセサイザーのようにコントロールして、演奏できるようにした。ナレーションとして聞えるものも実際はAIが話しているものだったりする。

タイトルや、コンセプト、制作方法から難解な作品を想像されがちであるが、意外にも近年では最もポップで、フュー_チャリティックなダンスフロアーの高揚感を期待せずにはいられない、ユーザー・フレンドリーな内容となっており、サウンドだけでも十二分に楽しめる作品に仕上がっている。
まず、海外で先行シングルとなった「The Latent Space」と「Artificial Authentic」を聴いて欲しい。

本作のアートワークは、電子アートとヴィジュアル・デザインのためのプログラミング言語Processing(プロセシング)の開発者であるCasey Reas(ケイシー・リース)が担当している。
(ICCでも展示を行っているCaseyはマウス・オン・マーズの二人が参加したザ・ナショナルの2017年作『Sleep Well Beast』収録曲の4曲のMVの監督をしている。Caseyはザ・ナショナル結成前の Scott Devendorf、Matt Berningerとバンドも組んでいた)

マスタリングは、Nils Frahmの2020年の『All Encores』や2018年の『All Melody』、Penguin Cafeの2019年の『Handfuls Of Night』等のErased Tapes作品のマスタリングも手掛けているZino Mikorey(Zino Mikorey Mastering)が担当している。

◎ 全世界同時発売
◎ 日本盤のみ完全未発表のボーナス・トラック1曲収録


Mouse on Mars, the Berlin-based duo of Jan St. Werner and Andi Toma, approach electronic music with an inexhaustible curiosity and unparalleled ingenuity. Operating in their unique orbit within dance music’s nebulous echosystem, the duo’s hyper-detailed productions are inventive, groundbreaking but always possessing a signature joyful experimentation. A genre-less embrace of cutting-edge technologies have ensured that each Mouse on Mars release sounds strikingly modern, a fact made more remarkable when one reflects on the duo’s 25 years of making music. New album AAI (Anarchic Artificial Intelligence) takes Toma and Werner’s fascination with technology and undogmatic exploration a quantum leap further. Collaborating with writer and scholar Louis Chude-Sokei, a collective of computer programmers and longtime Mouse On Mars collaborator/percussionist Dodo NKishi, the duo explores artificial intelligence as both a narrative framework and compositional tool, summoning their most explicitly science-fiction work to date.

AAI compiles some the most immediate and gripping music in Mouse on Mars’ extensive catalogue. Emerging from a primordial ooze of rolling bass and skittering electronics, hypnotic polyrhythms and pulsing synthesizers propel the listener across the record’s expanse. Hidden in the duo’s hyper-detailed productions is a kind of meta-narrative. Working with AI tech collective Birds on Mars and former Soundcloud programmers Rany Keddo and Derek Tingle, the duo collaborated on the creation of bespoke software capable of modelling speech. What appears to be Louis Chude-Sokei narrating through the story is in fact the AI speaking. Text and voice from Chude-Sokei and DJ/producer Yağmur Uçkunkaya were fed into the software as a model, allowing Toma and Werner to control parameters like speed or mood, thereby creating a kind of speech instrument they could control and play as they would a synthesizer. The album’s narrative is quite literally mirrored in the music - the sound of an artificial intelligence growing, learning and speaking. Artwork was provided by the inventor of the computer graphics language Processing, Casey Reas, a further exploration of technology’s application in the context of art.

In Chude-Sokei’s text, as machine learning advances, robots begin to develop language, conscience, empathy - “anarchic” and unpredictable qualities. Drawing parallels between the evolution of human and machine, AAI uses technology as a lens to examine deep philosophical questions. The question of how we use technology and world resources feels particularly poignant and timely as we head into 2021. AAI posits that we must embrace AI and technology as a collaborator to break out of our current cultural and moral stagnation, and to ensure our survival as a species. As Werner explains: “AI is capable of developing qualities that we attach to humans, like empathy, imperfection and distraction, which are a big part of creativity. We need to get past the old paranoia that fears machines as the other, as competitors who will do things faster or better, because that just keeps us stuck in our selfishness, fear and xenophobia. Machines can open up new concepts of life, and expand our definitions of being human.”

ベルリンを拠点に活動しているヤン・エスティー・ヴァーナーとアンディ・トーマのデュオ、マウス・オン・マーズは、尽きることのない好奇心と比類のない創造力で、エレクトロニック・ミュージックにアプローチしている。
ダンス・ミュージックの漠然とした残響(エコー・)システムの範囲内で、唯一無二な軌道で活動している彼らデュオの、非常にきめ細かいプロダクションは、独創的で、革新的でありながらも、常に楽しそうな実験性を有しているのが特徴となっている。ジャンルレスな最先端のテクノロジーを積極的に取り込むことで、マウス・オン・マーズの各リリース作品のサウンドは際立って現代的なものとなっており、デュオの音楽制作の25年間を振りかえってみると、この事実は更に注目に値するものとなっている。ニュー・アルバム『AAI』(Anarchic Artificial Intelligence:アナーキク・アーティフィシャル・インテリジェンス:無秩序な人工知能)は、トーマとヴァーナーのテクノロジーへの強い興味と教養にとらわれない調査を、なお一層、飛躍的に前進させる。作家であり、学者であるLouis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)、コンピュータ・プログラマー集団、長年のマウス・オン・マーズのコラボレーターでパーカッショニストのドド・ンキシとのコラボーレーションにより、デュオはAI(人工知能)を物語の構想(フレームワーク)として、また作曲ツールとして、これまでで最も明確なSF作品を呼び集めながら、探求している。

『AAI』はマウス・オン・マーズの豊富なカタログの中で、最も即時的で、とても面白い(人を魅了する)音楽をコンパイルしている。
とどろくような低音と素早く軽快に動いているエレクトロニクスの根源的な分泌物から生まれた、催眠術のようなポリリズム、パルシング・シンセサイザーが、リスナーをレコードの範囲を超えたところに駆り立てる。デュオの非常にきめ細かいプロダクションの中には、ある種のメタ・ナラティヴ(歴史的な意味、経験、または知識の物語)が隠されている。AI技術集団のBirds on Mars(Nicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya、Florian Dohmann)、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingleと協力して、デュオは、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを共同制作した。Louis Chude-Sokeiが物語を終始ナレーションしているように思えるのは、実際にはAIが話しているものである。Chude-SokeiとDJ/プロデューサーのYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストと声がモデルとしてソフトウウェアに入力され、トーマとヴァーナーが速度やムードのようなパラメーターをコントロールすることが可能になり、それによって彼らがシンセサイザーのように制御して、演奏することが出来る音声楽器のようなものが作成された。アルバムの物語は、まさに文字通り、人工知能が成長し、学習し、話すというサウンド(音)が、音楽に反映されている。アートワークは、コンピュータ・グラフィックス言語「Processing」の発明者であるCasey Reas(ケイシー・リース )によって提供されており、アートの文脈におけるテクノロジーの活用の更なる探求となっている。

Chude-Sokeiのテキストでは、機械学習が進歩するにつれて、ロボットが言語、自制心、共感、つまり「無秩序」で予測不可能な資質を発達させ始める。人間と機械の進化の間での類似点を引用しながら、『AAI』はテクノロジーをレンズとして、難解な哲学的な問題を検討する。私たちがテクノロジーと世界の資源をどのように使用するかの問題は、2021年に向けて、とりわけ切実で、時宜を得ているように感じる。『AAI』は、現在の文化的で道徳的な停滞を打破し、種(人類)としての生存を確保するために、AIとテクノロジーを協力者として受け入れなければならないと、結論を下している。ヴァーナーが説明しているように、「AIは、共感、不完全さ、気晴らしのような、人間に付随している資質を開発することが出来、創造性の大きな部分を占めている。私たちは、機械を別のものとして、物事をより速く、またはより良くする競争相手として恐れる、古い被害妄想を克服する必要がある。なぜなら私たちがずっと、身勝手さ(利己主義)、恐怖、外国人恐怖症(外国人排斥)で行き詰まったままでいることになるからだ。機械は人生の新たな概念を解放し、人間であることの私たちの定義を拡大することが出来る。」

interview with Sleaford Mods - ele-king

 「まったく国民に自粛を押しつけといてさ」、いきつけのクリーニング屋の親仁は吐き捨てるように言った。「あいつらは好き勝手やってんだよ、とんでもないよね」。昨年末のことである。かれこれ10年以上世話になっている個人経営の店の、もう白髪さえ頭にまばらなこの爺様とは、いままでずっと天気の話しかしてこなかったから、突然の政治的憤怒にはフイを突かれる格好となった。ええ本当にそうですねと、そのぐらいの言葉しか返せなかったが、あんな温厚な年寄りさえも怒っているのだと念を押された思いだった。
 このところニュースは、失業者、ホームレス、そして自殺者について報道している。コロナ第三波に対してとくになんの対策もなく、意味のある支援策も解雇防止策もないまま、だらだらと非常事態宣言がでたばかりだ。ニュースはそして最近では、トランプの信じがたい暴力的な脅しを報じている。この一大事に、他の先進国と違って我が国の政治リーダーはコメントすらできないようだが、まあ、ワシントンの議事堂における支持者たちの暴動では、警察の対応がBLMデモとは明らかに違っていることを世界に見せてしまったと。その点でもBLMの成果はあったと言えよう。だが、あの憎しみや怒りは、ぼくがアリエル・ピンクのCDをたたき割って捨てたところでは、とうてい消えはしない根深いものであることを知らしめてもいる(ジョン・ライドンに関しては……紙エレ年末号をどうぞ)。
 さっきからテレビの画面では飲食店の店主たちが悲鳴をあげている。一家の稼ぎ手がまたひとり職を失っているときに自助(自分でなんとかせぇ)を第一とする菅政権は、就任以来中小企業の事業再構築をうながしているが、これは中小企業の何割かの淘汰を意味している。こんな与党を前に野党はいまもって存在感を示すことができず、その支持率は一向に上がらない。いま、目の前にあるのは幻滅ではない、絶望だ。

バズライトイヤーの髪型をしたおまんこ野郎が
労働者たちを呼びつける
自分の将来について考えたほうがいい
自分の首のことを考えたほうがいい
仲間を作ることやクソな髪型について考えたほうがいい 
俺は25セントのパスタと
スミノフの温かいボトルの夢を叶える
“Fizzy”

 ポップ・ミュージックにできること。気張らし。慰め。逃避。夢。熱狂。ダンス。カオス。笑い。快楽。幻覚。励まし。内省。趣味の競い合い。性の解放。愛の増幅。社会参加。孤独な魂に寄り添うこと。批評。罵倒。失意。絶望。悲しみの共有。挑発。炎上。攻撃。ヒーローはいつだって私をがっかりさせる。異議申し立て。疑問。気づき。目覚め。言いたくても言えないことを言うこと。頭のなかの革命。

俺はなぜ、穿いているブーツの二の次なのか?
俺はなぜ、着ているコートや髪型の二の次なのか?
俺はなぜ、自分の車の二の次なのか?
腕時計やジーンズ、ポロシャツよりも下
“Second”

 スリーフォード・モッズは、間違いなくいまもっとも面白いバンドのひとつである。その立ち振る舞い、音楽性、言葉、ユーモア、見た目、政治的スタンス、勇気、ぶち切れ方……スリーフォード・モッズは怒りにかまけて理想を忘れるようなことはしない。ものごとは昔よりも複雑化している。だからスリーフォード・モッズは走っているが、ただ走っているわけでも、考えてから走っているわけでもなく、調査し、挑発し、不条理を受け入れて、真剣に考えながら走っている。ザ・KLFが、ポップ・ミュージックがその随所に渡って市場化され、金が神となった現代を見据えながら象徴的な意味合いとして100万ポンドを燃やしたのだとしたら、そのがんじがらめの資本主義リアリズムのなかで目一杯ジタバタして、泥にまみれてもがいているのがスリーフォード・モッズだ。彼らは、地元の保守的なコミュニティにも、居心地良さそうなリベラルのコミュニティにも属さない。言うだけ言って、やるだけやってやろうという腹づもりなのだろう。
 また、いまのような時代ではスリーフォード・モッズには希少性という価値まである。パンク・アティチュードはほかにも、たとえばシェイムのような若いバンドストームジーのような賢明なるMCにもあるのだろう。だが、ジェイソン&アンドリューというふたりのおっさんがそのなかで際だった存在であることは間違いない。昨年もロックダウン中にUKで起きた介護者への国民からの讃辞に対して、こうした美談は政府の怠惰を隠蔽すると発言したことで、当たり前だが物議を醸し、また、「階級の盗用」だとアイドルズを大批判したビーフはファット・ホワイト・ファミリーまで巻き込んでの騒ぎとなった。
 それで、まあ、スリーフォード・モッズは進化しているのだ。新作『スペア・リブズ(Spare Ribs)』には、まずはサウンド面の変化がある。『オースタリティ・ドッグズ(Austerity Dogs)』の頃のモノクロームな煉獄ループに比べると音色も多彩で、曲もずいぶん親しみやすくなっている。セックス・ピストルズやストゥージズの幻影も霞んではいるが、ドイツの冷たいエレクトロや後期ザ・スペシャルズ風な内省とメランコリーもあったりで、曲のヴァリエーションが増えている。とはいえ、ジェイソンの激怒するヴォーカリゼーションとアンドリューのミニマルなトラックが古き良きロックに回収されることはない。

 UKのモッド・カルチャーとは、本来の意味を思えば60年代回帰のレトロ志向のことではないはずだ。あれはモダンな(新しい)ものを好み、たとえば最先端のUSブラック・ミュージック(ないしはUK移民の音楽=レゲエ)を愛好する尖った文化だった。ノーマティヴな社会に溶け込みながら、人とは違った趣味を持ち、人とは違った方法で自分をしっかり着飾る文化。ジェイソンも服が大・大好だが、彼はウータン・クランに触発されたあくまで現代のモッドである。ポップ・ミュージックにできること。いまリアルに起きていることのレポート。

ここにアンセムなどない
あるのはコンクリート
チップス
汚れたソーセージ
3ポンドの花束
“The Wage Don’t Fit ”

 スリーフォード・モッズはイギリスのノッティンガムの、ジェイソン・ウィリアムソンいわく「レイシストだらけ」の保守的な街で誕生した。2006年のある日のこと、パジャマ姿のまま近所に発泡酒とチョコバーを買いに行ったときにアイデアが閃いたという。ちなみにその名前だが、彼らがスリーフォードという土地に縁があるわけではない。ただその響きが良かったから採用したという。
 ジェイソンは、他人の曲をループさせたトラックに自分のラップをかぶせるという初期スリーフォード・モッズのやり方で地元のスタジオエンジニアと4枚のCDR作品を出している。昔はストーン・ローゼズやオアシスが好きだったというジェイソンだが、彼が自分のパートナーに選んだのは地元のDJ/プロデューサーで、ソロでは荒涼としたエレクトロニカ作品を多発しているアンドリュー・ファーンだった。長身で痩せこけたアンドリューと5枚目のCDR作品を作ると、2013年には正式なアルバムとして『オースタリティ・ドッグズ(緊縮財政の犬たち)』をリリースする。時代をみごとに捉えたその勇敢で独創的な音楽はWire、NME、ガーディアン、Quietusなどなど、イギリスの有力メディアからいたってシリアスに、そして知的に評価され、翌年の『ディヴァイド・アンド・イグジスト(分断と出口)』にいたってはマーキュリー賞にもノミネートされた。(いまではブリストルの巨匠マーク・スチュワートからロビー・ウィリアムスのようなセレブにまで愛される人気バンドになったが、曲の歌詞でNMEをバカにしたので、同メディアが選ぶ最悪なバンドの1位にもなっている
 スリーフォード・モッズはその後3枚のアルバムを出している。2015年の『キー・マーケッツ』、2017年には〈ラフトレード〉から『イングリッシュ・タパス』、2019年には自分たちのレーベル〈Extreme Eating〉から『イートン・アライヴ』。再度〈ラフトレード〉からのリリースとなる『スペア・リブズ』は、昨年話題となったベスト盤『オール・ザット・グルー』を挟んでのアルバムで、ロックダウン中に録音された。まるでDAFのようなエレクトロなミニマリズムとともに『スペア・リブズ』はこんな風に、失意と疲弊感からはじまる。この気持ちは我々日本人もシェアできるのではないだろうか。

俺らみんなが保守党に疲れている
そのせこさにやられている
浜辺はファックされ、波もないから
ここじゃもう誰もサーフィンしない
“The New Brick”

 

イーノは全然好きじゃない。彼は、俺のハマってる連中の多くにすごく影響してきた人なわけだ。でも俺自身は一切影響を受けてない。彼にはまったく興味を惹かれたことがないな。だってさぁ、あのみてくれだぜ(笑)。

新作、とても楽しませていただきました。音楽的にヴァリエーションが増えたことで、歌詞がわからずとも楽しめます。ある意味アクセスしやすい作品だなと。

JW:(うなずきながら)うん、それは間違いない。

ロックダウン中に『スペア・リブズ』の録音に取りかかったそうですが、最近はどんな風に過ごされていますか?

JW:うん、なんとかやってる。ポジティヴであろうと努めているし……かなり妙だけどね、ただじっとして、働かずにいるってのは。いやだから、ギグをやれないわけでさ。でも──うん、俺たちは大丈夫だよ。とにかくいまは、他の多くの人びとに較べりゃ自分たちの状況はずっとマシなんだし、常にそれを思い起こすようにしなくちゃいけないな、と。

日々、読書や映画鑑賞に明け暮れているとか?

JW:(笑)いやぁ、俺は読書が苦手でさ。マジにからっきしダメな読み手だよ。もっと本を読めればいいなとは思うけど、ほら、自分はものすごく──これ(と携帯をカメラにかざす)の中毒なわけで。

おやおや。

JW:(携帯スクリーンを猛スピードでスクロールするふりをしながら)ピュッピュッピュッピュッ! 始終そんな感じで、何か見て「おっ、すげえ!」みたいな。わかるだろ? うん、よくないのは自分でもわかってるんだけど。それ以外だと、俺は子持ちだから、父親業だね。子供の面倒をみて過ごしてる。そうやってとにかく心持ちの面で忙しさを保とうとしているし、クリエイティヴな面で言うと、アルバム(=『スペア・リブズ』)以来、自分は実際何もやってないな。それでも何やかんやと時間はふさがっているし、きっとそれは親だと忙しいってことだろう。

あなたがフランクフルト学派やマルクーゼを読んでいるとどこかの記事で見かけたんですけど、それは本当ですか? たしか『一元的人間』を読んでいる、とのことで。

JW:ああ、とてもいい本だ。あれは助けになったというか、本当に影響された。そうは言っても1、2章かじった程度だけどね、(顔をしかめながら)すごく、すご〜く難解でおいそれと読めない本だから。ただ、あれを読んだおかげで自分はものすごくこう──目覚めさせられたっていうのかな。この……国による支配ってものから、資本主義の抑圧から、我々は決して自由になれない、という観念を意識するようになった。彼らがこちらを欺き、資本主義の経済モデルに一生貢献し続けるように我々をだます、その様々なやり方からね。

でもほんと、その管理・抑圧からは逃れられないですよね。たとえば、こうしていま素晴らしいテクノロジーを使って取材していますが、これですら資本主義モデルに準じた一種の社会的なコントロールじゃないかと感じることがありますし。

JW:うん……。だけど、と同時に俺はそれを気に入ってもいるんだ。金を使うのは好きだし、高価なスニーカーを買うのも好きだ。外食するのも、いい服を着るのも好き、と。だから俺はまた、そのモデルを自らに割り振ってもいるっていう。

先ほど言ったように、まずは音楽的に以前よりもヴァリエーションが増えたと思います。そこは意識されましたか? 様々なヴォイスやサウンドがミックスされていますし、ギターを弾いているのはあなたですか?

JW:ああ。

ギターを弾くのは本当に久しぶりだったと思いますが、どんな気分でした?

JW:たしかにずっと弾いてなかったけど、まあ、とにかく音楽の方がギターをいくらか必要としていると思えた。アンドリューは“Nudge It”でギターを弾いたし、俺は“Thick Ear”で弾いてる。だからときおり……そう、とにかく今回はギターが必要だって風に自分には感じられた、ギターをちょっと加えようと思ったっていう。だから、以前の自分ほどギターっていうアイディアに敵愾心を抱かなくなっているんだよ。

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モッズというのはいつだって真実を伝える連中だった。だから俺は自分のバンドに「モッズ」の単語を含めた。自分たちもその同じ流れに沿っている、俺はそう思ったから。

スリーフォード・モッズのサウンドスケープを拡張するというのは──『Key Markets』以降、確実にその幅は広がってきていましたが──意識的でしたか? スリーフォード・モッズの音楽はそぎ落とされたミニマルなものになりがちですが、今回はもう少し聴き手に緩衝材を与えている気がします。

JW:ああ、そこは確実にそうだ。思うに、俺は……どう言ったらいいのかな、これまでよりもう少し層の重なった、もうちょっとカラフルなものにしたかったんだ。

ちなみに、アンドリューがひたすらチープな機材を使って音楽を作っていますが、それは高価な機材でしかモノを作らないことへの反論なのでしょうか? 

JW:そうは言っても、ここ数年で奴の機材の幅は間違いなく以前より広がったと思うけどね。でも、あいつは以前「ACID」っていうソフトを使ってビートを作っていたはずで、っていうかいまも使ってる(笑)。だから、そうね、あいつはこう……効果音だとか、奇妙なサウンドだのに入れ込んでるんだよ。で、それらを入手するのには、そんなに大枚はたかずに済むわけじゃない? 
あいつのいま使ってるセットアップも、かつてに較べりゃずいぶんでかくなった。ただ、それでもあいつはいまだに、歌にビート/音楽を組み込む際は最小限の要素みたいなものにしか頼らない。あいつも近頃じゃ、いくつか良質な機材の一式をいつでも使えるよう、手元に揃えたがるようになってるけども。

スリーフォード・モッズはある意味、音楽を作ることに、音楽界にインパクトを与えるのに大金を費やす必要はないという、その好例じゃないかと思うんですが。

JW:そうそう、その必要はまったくない。俺たちはそういうのに興味なし。とにかく俺たちは大抵ミニマルにまとめているし、アンドリューはそれにうってつけなんだ。というのもあいつの音楽は、たとえばソロでやってるExtnddntwrk(=extended network)にしても、どれも一種の音のランドスケープ、サウンドスケープ郡みたいなことをやっているし、やっぱりミニマルなわけで。だからほんと、あいつのやることはそこと完璧にマッチするんだ。

Extnddntwrk名義の作品は、じゃあよくご存知なんですね。彼のアンビエントな側面もお好きですか?

JW:ああ、もちろん! 好きだしいいと思う。もっとも、あれは自分が普段聴くような類いの音楽じゃないけども。だから、そんなに聴かないけど、ちゃんと評価はしてる(笑)。

ちなみにアンビエントの巨匠イーノに関してはどんな印象をお持ちですか?

JW:ファンではないな。(苦手そうな表情を浮かべて)全然好きじゃない。でも彼は、俺のハマってる連中の多くにすごく影響してきた人なわけだよね? テクノだとか、エレクトロニカ全般なんかに多大な影響を与えてきた人だとされているけれども、俺自身は一切影響を受けてない。彼にはまったく興味を惹かれたことがないな、うん、それはない。だってさぁ、あのみてくれだぜ(と、頭を丸めた坊主頭のジェスチャーをする)? でかい頭で、すげえ妙なルックスでさ。フハッハッハッハッ……!

(苦笑)。いや、イーノはあなたと同じようにコービン支持者ですし、政治的には共感できるんじゃないかなと。

JW:(真顔に戻って)ああ、うんうん、それはもちろんだよ。だから要は、俺はあの手のミュージシャンにエキサイトさせられることはまずない、ってこと。いつだってもっとこう、ストリート系な、「ウギャアアアァァッ!」みたく騒々しいバンドなんかの方に感心させられるっていうか、そういうのなら「おう、よっしゃ!」とそそられるっていうさ。

2020年にはこれまでのキャリア総括盤『All That Glue』も出しましたし、自分たちを振り返る時間もあったかと思います。

JW:(うなずいている)

あらためてスリーフォード・モッズの原点を、あなたが友人のサイモン・パーフと2006年か07年あたりにこのプロジェクトをはじめた、その当初のコンセプトを教えていただけないでしょうか? 

JW:あれは本当に……いま君たちが耳にしているもの、そのごくごくベーシックなヴァージョンだったんだ。当時の俺たちは他の人間の作った音楽をループして使っていた、という意味でね。

(笑)無断サンプリングしていた。

JW:(苦笑)そう! で、俺はとにかく……そのループにシャウトを被せていただけで。個人的な実体験の数々、酔っぱらった経験や失敗談、アルコールとドラッグへの依存、セックスとか、まあ何でもいんだけど、そういった事柄すべてについて語っていた。いまやそこは変化したけどね、それとは別のことを俺は歌ってる。ただ、それらは人生のなかのごくちっぽけな立ち位置/存在の観察だ、というのは常にあって。で、それが念頭にありつつも──うん、昔の自分の怒号ぶりを思うと、いまよりもうちょっと早口でまくしたてていたしラウドだったし、たまに自分で制しきれなくなることもあり、実はそんなによくはなかった、みたいな? だからとにかく、いまやっていることと基本的には同類の、でもその初期ヴァージョンだった、という。

スリーフォード・モッズは、モッズと言いながらいわゆるモッズ・サウンドではありません。ポール・ウェラー的なネオ・モッズ、あるいはスモール・フェイセズといったタイプの音楽ではないわけですけど、そもそもなぜ「モッズ」を名乗ることにしたんでしょう?

JW:それは、俺たちは基本的に──いやまあ、俺自身はモッズ的なものには入れ込んでるんだけどね。あれは常に俺の興味をそそってきた。で、俺のモッズ観は、あれは他の何よりも際立つことができるものだ、ということで。もしもバンドがモッズなるものをばっちりモノにできれば、そいつらは他の何よりも抜きん出ることができる、みたいな。というのも、モッズ(モダーンズ)というのはいつだって真実を伝える連中だったし、クリエイティヴィティに対してもっとずっと正直なアプローチをとってきた連中なわけで。だからなんだ、自分たちのバンド名に俺が「モッズ」の単語を含めたのは。自分たちもその同じ流れに沿っている、俺はそう思ったから。

で、今回のアルバムの“Nugde It”の歌詞は興味深いなと。

JW:へえ、オーケイ。

あれはスリーフォード・モッズの現在の立ち位置を歌っていると思いますよね。で、スリーフォード・モッズに対する評価に対しても苛立っているように読めるのですが、もしそうだとしたら、これはどういうことなのでしょうか? ちょっと説明をお願いできますか? 

JW:あの曲で言わんとしているのは、異なる生い立ちを持つ連中がいかにして、実際にその経験がないくせに自分たちとはバックグラウンドが違う者たちの物真似をしているか、ということだね。そうやって物真似することで、彼らは自分たちをもっとエッジーに、あるいは実際より興味深いものに見せようとしている、という。で、多くの場合、人びとはその点に気づいてすらいないわけ。そういった連中は、自分たちがやっているのは本当はなんなのかすら考えずに、他の人びとのユニフォームを借り着してるっていう。俺は、それってマジに無礼な侮辱だと思う。かつ、その物真似を鵜吞みにして支持する人間が山ほどいるって事実、それに対しても本当に怒りを感じる。そういうことをやってるバンドのいくつかは、とんでもなく人気が高いわけだろ? というわけで、あの曲で取り上げているのはそういうことだね、「階級見学ツアー(class tourism)」みたいなものについてだ。
(※ここでジェイソンの話しているのは、上流・中流・下層と階級が分かれる英国で、上位に位置する人間が不思議がりときにバカにする意味合いで一時的に=物見遊山で立ち寄るごとく下層階級のファッションやスラングやカルチャーを真似する行為を指す。「貧民見学ツアー」を意味するpoverty safariというタームもある
だから、お前さん自身は繫がっていない、お前さんには実体験の一切ない、そういう人びとだったり彼らの生き様をお前は物真似しているんだろうが、と。お前がそれを利用するのは、そうやって真似ることで自分をパワフルに見せたいだけだろ、と。

──それは、アイドルズみたいなバンドのことですか?

JW:ああ、まったくねぇ! うん、そう。

ソーシャル・メディア他であなたと彼らとのビーフが広まりましたよね。先ほどもおっしゃっていたように、アイドルズはいますごい人気ですけれども──

JW:(苦虫をかみつぶしたような表情で)ああ。

あなた自身は彼らの言うことは信じていない、と。

JW:信じないね。なんて言えばいいのかな、「学が足りない/ちゃんと勉強してない」っていうの? 一元的で浅薄だし、中身がまったくない。とにかくやたらポーズばっか、と。で、いまって本当にひどい時期なわけだし、「自分は生きているんだ」と実感できるような何かを求めるわけだろ。これは俺個人の思いだけど、ああしたかっこつけやポーズから、俺はそういう感覚を受けないんだ。

ちなみに、主にCD-R作品を出していた初期のことをわたしは「スリーフォード・モッズMK.1」あるいは「Ver.01」と捉えているんですが──

JW:ああ、うん。

で、アンドリューが加入し、いわば「スリーフォード・モッズ Ver.02」がはじまった、と。そのブレイク作である『オースタリティ・ドッグズ』以降とでは、音楽への向かい方はどう違っていますか? 

JW:うん、変化したね。絶対にそう。だから……質問は、俺の音楽に対する姿勢がどう変化したか、ということ?

ええ。基本は変わっていないと思うんですが、『オースタリティ・ドッグズ』を境に、それ以前に較べてもうちょっとプロっぽくなった、「これは自分たちのキャリアだ」と考えはじめたんじゃないかと。そこで、音楽作りや作詞へのアプローチは変化しましたか?

JW:ああ、なるほど。うん、変化した。それは、さっきも話に出たマルクーゼみたいな人の考えだとか、現代世界に対する様々な類いの批評等に触れたことが影響しているんだと思う。
それと同時に、俺自身のなかで育ち続けている、「自分はこの世界のどこに位置してきたのか」みたいな意識/目覚めもあるんだ。自分という存在はこの世界でどんな意味を持ってきたのか? 自分は自分にとってどんな意味があるのか? 自分は何を学んできたんだろう? と。ぶっちゃけて言えばケアしているのは唯一それだけ、ほんと、成功と物質的な豊かさに伴うあれこれがひたすら重要な世界のなかで、自分はこれまでどんな人間として生きてきたのか、そうしたすべてをひっくるめたあれこれが、『オースタリティ・ドッグズ』を作った後で、よりはっきりしたものになりはじめていった。

それだけヘヴィになった、とも言えますね(苦笑)。

JW:ああ、もちろん! そりゃそうだって。歳を食えば食うほど、たくさんのことがかなり、こう……だから、ドラッグだのセックスだの、そんなんばっかの人生なんざもうご免だ、タイクツなんだよ! って風になり出すもので。それらがやがて問題になってくるし、となると自分の人生からその要素を取り去るよう努力する他なくなる。いや、セックスは残しておいていいな、タハッハッハッハッハッ! ただまあ、ドラッグ摂取/飲酒等々の問題面は取り除こうぜ、と。
アルコールとドラッグのツケは、最終的に非常に大きく俺に回ってきたから。あれを乗り越えるのには本当に長くかかった。で、そうしていったん克服してみると、この世界は自分にどんな意味を持つのかという面に関して、これまでとは違う物事が作用してくるようになって(※数年前からジェイソンは飲酒もドラッグも断っている)。
というわけで、スリーフォード・モッズに備わったメッセージはある意味『オースタリティ・ドッグズ』以降も変わっていないんだけど、ただそのコンテンツは常に変化し続けている。

スリーフォード・モッズは、マルクス主義者やフランクフルト学派を研究するような知識人からも評価されていますよね。個人的には興味深く思っているのですが、こうした左翼的な分析に関しては、あなたはどんな感想をお持ちでしょうか? 

JW:彼らの分析には大いに賛成だ。もっとも、自分を左翼人だとは思っちゃいないけどね。でも、右翼じゃないのは間違いない。

(笑)それはありがたい!

JW:(爆笑)。うん、ああした分析は好きだよ。インテリの立場にいる人たち、おそらく俺も興味を抱くであろう、そういう人びとが俺たちのやっていることをすごく気に入ってくれてるのはいいことだと思ってる。

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彼らの分析には大いに賛成だ。もっとも、自分を左翼人だとは思っちゃいないけどね。でも、右翼じゃないのは間違いない。

オーウェン・ジョーンズの『チャブ』は読んでいると思いますが、あの本は好きですか? 

JW:もちろん読んだ。すごく気に入ったね。あの本もまた、俺が政治に関してもっと建設的なフォルムみたいなものへと浮上していく、その助けになったもののひとつだ。

“Elocution”では誰かの偽善性を批判しているようですが、具体的に誰とかあるのでしょうか? それとも音楽シーンに対する観察?

JW:ああ、うん、あれは……だからこの国の音楽シーンじゃ、マジにがっくりさせられる、そういう手合いはいくらでも跡を絶たないわけで。

(爆笑)

JW:ハッハッハッハッハッ! なんかこう、そういう連中がどこからともなく次々に湧いてくる。っていうか、ほぼ毎年出てくるな。本当にシャクに障りイラつかされる、そういうアクトが毎年かならず、1、2組は登場する。

(苦笑)なるほど。

JW:で……あれはほんと、そうした連中をあれこれ組み合わせたコラージュだね。連中は社会正義を謳った色んなキャンペーン活動のフロントを張るわけだけど、たまに「こいつら、自分たちのキャリアを向上させるのが目的でこういう活動をやってるんじゃないの?」という印象を抱かされることがあって。音楽そのものの力じゃ勢いが足りないからそれをやってる、と。才能が平均以下のミュージシャンの多くは、人気者のポジションを狙うなかで、大抵はネットワーキングに頼るものなんだ。各種音楽賞だの、なんであれそのとき焦点の当たっている、メディアに取り上げてもらえる問題に対するキャンペーン活動を通じて、という意味でね。だから連中は多くの場合、自分たちの地位を向上させるために、そのメカニズムに相当に依存しているわけ。
そうは言っても、彼ら自身は自分たちがどういうことをやっているかに対する自覚がないのかもしれないよ? ただ──そういうのにはウンザリなんだって。そんなんクソだし、お前らの音楽は特にいいわけでもない。こっちにはそれはお見通しなのに、それでもお前は「音楽をケアしてます」って言うのかよ、と。まあ、彼らもたぶん少しは気にかけているんだろうな。けど、それ以上にお前が気にしているのは自身のキャリアだろ、っていうさ。

そこはミュージシャンにとっての難問ですよね。たとえば『スペア・リブズ』が売れてあなたたちがさらにビッグになったら、「ソールドアウトした」と批判する人は出てくるでしょうし。

JW:ああもちろん! っていうか、その批判を俺たちはこれまでも受けてきたし、いまですらそうだ。ただ、俺たちがかっこつけた気取り屋ではないこと、セレブではないっていう事実、そこは人びとだって俺たちからもぎ取れない。俺たちは常に、自分たちのままであり続けてきたんだしさ。

“Glimpses”や“Top Room”はロックダウン中の情景を歌っていますよね? で、“Glimpses”ですが、これは曲調こそパンク・ソングなのですが、歌詞がずいぶん抽象的というか詩的に思いました。ここにはどんな意図があるのでしょうか?

JW:“Glimpses”ね。あれは……もっとこう、子供を連れて近所の公園に出かけると、みたいな話だね。で、行ったもののCOVIDのせいで公園は封鎖されてた、と。それと、消費主義についての歌でもある。それがいかに……だから、とあるスニーカーの宣伝をちょこっとやっただけでそのスニーカーをタダで5足もらえる奴もいる、と。ところがこちらは、その同じスニーカーを買うのに500ポンドだのなんだの、大金をはたくことになる。となると、こっちはほとんどもうなんの価値もない人間だ、ってことになるよな。商品そのものの話ではなくて、マネーのことだよ。
でもいずれにせよ、俺たちだってみんな、そこは承知しているわけで。誇示的消費(=conspicuous consumption。富や地位を誇示するための消費)なんて、別に目新しいものでもなんでもないんだし。で、俺としてはある意味、その点をあそこで論議したかったんだけど──うん、果たしてそのふたつの意味合いをあの曲でちゃんと表せたか、それは我ながらよくわからないな。あれはとてもいい歌だし、すごく気に入ってる。ただ、曲のメッセージという意味では、まだほんの少し、言葉が足りないのかもしれない。

2014年のガーディアン紙の取材であなたはスリーフォード・モッズの音楽の根幹には「怒り」があると話しています。いまでも「怒り」はモチベーションだと思いますが、それはあの頃とまったく同じ「怒り」がいまも持続している感じですか?

JW:うん……だから、俺の怒りのほとんどは、他の人びとに対して感じる苦々しさや嫉妬、うらやましさから派生したものなんだよ。それとか他人をおいそれと信じないところだったり、政府に対する軽蔑もその主な要因になっている。で、その点は変化していないと思う。それらのアイディアから、俺はいまだにこうしたエネルギーのすべてを得ているわけで。ネガティヴィティにシニシズム、そして自己批判もあるけど、そうしたものからエネルギーを得ている。
というわけで、そこはいまだに継続中だな。ただ、思うにほんと唯一、自分にとって重要なことという意味で……自分にどうしても語れないのは愛だなぁ。愛というのは、(歌にして)宣伝するよりも(苦笑)、実際に体験する方がずっといいアイディアだと俺は思っているから。だからまあ、ポジティヴィティがほとんど存在しない、ポジティヴさがわずかな隙間にちょこちょことしか見出せない状況で、常にポジティヴなことばかり語るのは、どうしたって興味深いこととは思えないだろう。

トランプやボリス・ジョンソンのような右派ポピュリストは、新自由主義によるグローバリゼーション(安価の移民労働)と「Austerity」(福祉予算のカット)によって追いやられた労働者たちの心情にうまくコミットしていましたが、コロナによって、例えばトランプが選挙に負けたように、右派ポピュリズムにほころびが出てきています。しかし、それでも日本では、コロナを企業社会の新自由主義的な再編の機会として捉えている向きもあり、ますますやばい状況になりそうです。イギリスも失業者がハンパないと報道されていますが、そうした社会不安や追い詰められていくメンタリティの問題、見えない恐れの感覚は今回のアルバムに大きな影響を与えていると感じたのですが、いかがでしょうか?

JW:そうだと思うよ、うん。もちろん。だからこの、自由がみるみる奪われていくという実感に、疎外感に……日常的に同じ経験を繰り返しているなという感覚。終わりがどうにも見えてこないフィーリングに、いったい何を信じればいいのかわからないという感覚。情報よりもむしろ、「これは大丈夫だ」と思える自分のいい本能/直観に常に頼らなくてはならない状況だとか。正確な情報ってのは、誰にでもすぐ入手できるものであるべきだというのに。うん、そういったことが作品に影響したね。──と言いつつ、と同時にこれは……パンデミックが襲った際の人びとの振る舞い方とそこから生まれた結果というのは、資本主義システムの下では人びとはそう振る舞う以外にないんだし、いずれにせよそれと同じ結果になる、ということでもあって。だから今回の作品にしたって、ずっと継続している物語のエピソードのひとつというか、『オースタリティ・ドッグズ』以来俺たちが語り続けてきたこと、そのなかの一話なんだ。
というわけで、俺はその面はあまり述べたくなかった。この試練だって、後期資本主義のまた別の一面に過ぎないんだし、あまねく広がった腐敗の現れであり、遂に本当に真剣な決断を下さなくてはならない地点にまで達した文明の側面なんだから。自分たちは何を信じるのか、そして自分たちはどう振る舞っていくのか、そこについて人類はシリアスな決断を下さなくちゃならないところまで来ているわけでさ。うん、そうした思いはたしかに、アルバムにある程度までは影響を与えた。おっしゃる通りだ。

ネガティヴィティにシニシズム、そして自己批判もあるけど、そうしたものからエネルギーを得ている。というわけで、そこはいまだに継続中だな。ただ、思うにほんと唯一、自分にとって重要なことという意味で……自分にどうしても語れないのは愛だなぁ。

たとえば、ビリー・ノーメイツが参加した“Mork n Mindy”なんかはそういう気味の悪い不安をうまく捉えた曲だと思いましたが、あの曲はあなたの子供時代を反映したものらしいですよね?

JW:ああ、そうだ。あの曲は俺が子供だった頃についての歌で、そうだな、あれと“Fish Cakes”の2曲は、子供時代について歌ってる。自分の子供時代や、子供のときはどう思うんだろうといったことを考えるようになりはじめて……。俺は生まれつき、難病の二分脊椎症(spina bifida)を患っていてね。11歳のときに脊椎の大手術を体験したんだ。

ああ、そうだったんですか。

JW:うん。でも、当時は二分脊椎症だったとは知らなくて、今年の夏に(コロナの影響で)ジムが閉鎖され、自宅の庭でエクササイズ中に背中を怪我して、はじめてそうだったと知った。で……うん、そのおかげで、手術を受けた頃に引き戻されたね。あれは、かなりエモーショナルな時期だったから。というわけであの頃を思い返したし、子供だった自分のことをまた考えるようになって。それにもちろん、いまの自分には子供もできたし、彼らの子供時代と自分自身の子供時代とをしょっちゅう比較するようにもなったわけ。だから……あの曲はアルバムに入れたかったんだよ、子供時代を考えれば考えるほど、自分のなかに色んな思いがたまっていったから。

ビリー・ノーメイツは今年アルバムを出しましたが、あなたも1曲参加していますよね。彼女は抜群だと思いますが、あなたは彼女のどんなところを評価していますか? 

JW:やっぱ、あの声だよね。それと、彼女の曲の書き方も。彼女は本当に、すごく、すごく才能があるし……うん、ちゃんとした、本当にオリジナルな人で。それに、彼女を聴いていると自分の頭にかつてのグレイトなシンガーがたくさん思い浮かぶんだ。とくに、過去の優れたソウル・シンガーの数々を思い起こす。音楽という概念を実践する面でも非常に腕の長けた人だし……とにかく彼女には、どこかしらすごくソウルっぽいところがあるんだよなぁ。と同時に、80年代っぽいところもかなり備えていて。そうした点が、ほんといいなと思う。

Amyl and the Sniffersのエイミー・テイラーも参加していますが、今回なぜ女性シンガー2名とコラボしようと思ったんでしょう?

JW:俺たちも女性の存在を求めていたんだよ、だから、ほら……全般的に、女性が欠けてるわけだしさ(苦笑)。

(笑)テストステロン値が高過ぎる、と。

JW:そう(笑)! 野郎が多過ぎだって。ハッハッハッハッ……ぎゃあぎゃあ騒いでる男どもが多過ぎる(苦笑)。

アルバム名は「肋骨」で、女性はアダムの肋骨(=リブ)から作られたと旧約聖書にありますよね。それで女性が必要だったのかな?と。

JW:ああ〜! たしかに! なるほどねぇ。(笑)いや、そういうわけじゃないけど、でも実に古典的なポイントだな、それって。そういう風に自分が考えたことはなかったけどさ。

このアルバム・タイトルを知ったときに、イギリスで70年代に発刊されたフェミニスト雑誌『Spare Rib』を思い出したんですよ。その書名はもちろん、聖書の「女性は男性の一部である」という発想を茶化したもので。

JW:うん、うん(うなずく)

とはいえ、このタイトルの「スペアリブ」は、まさしく我々のことを指しているわけですよね。一本くらいなくなっても平気なあばら骨、いわば使い捨てライターのように取り替え可能な存在、という。

JW:イエス! でも……君がそうやってアルバムの概要をまとめてくれた方が実際よりはるかに面白いかもな、クハッハッハッハッ!

(笑)ふざけないでください。全部、ちゃんと考えてるんでしょ?

JW:いやいや、そうやってあれこれ言われると、俺は「違う」って言い出すっていうね! アッハッハッハッハッァ〜……! 
(ひとしきり笑った後で真顔に戻って)いや、うん、そうだよ。あのタイトルは基本的に、俺たちの政府は2020年のはじまり以来人びとをどんな風に扱ってきたか、ということで。無駄死にした死者の数──だから、あれだけ(コロナで)死者が出たけど、そのある程度までは防げたはずだった、俺はそう思っていて。そこで考えさせられたんだよ、政府は経済モデルに貢献している人民の生命よりも、その経済モデルを維持することの方に心を砕いているんだな、と。いやもちろんこれは、政府側はその点を意識してそうやっている、という意味ではないんだ。ただ、世のなかには常に、この経済モデルに貢献する人間たちが絶え間なく流入してくるわけでさ。ということは、この経済モデルを保存するためにだったら、政府の側には20万人であれ百万人の命であれ、たまにちょっとばかり人口を削ってもなんとかなる、そういう余裕があるってことだよ。
で、2020年のはじめからイギリスの公衆に対しておこなわれてきた安全対策の数々を考えれば考えるほど──わかるだろ? 英政府は(人民よりも)経済モデル維持の方をもっとケアしてきたんだな、という印象を抱くわけ。だから、政府の考え方は「肋骨をいくつか取り除いても、身体そのものはなんとか機能するからOK」みたいなものにはるかに近い、と。ということは、俺たちはみんなスペアリブだってことだよ。でも……このタイトルは、イギリスではおなじみな、中華料理のテイクアウト・メニューにもちなんでいて。

ほう。

JW:わかるかな、スペアリブ? イギリスじゃどこでもお目にかかるありふれた食い物なんだけど(※ばら肉を骨付きで揚げたりバーベキューした、イギリスのお持ち帰りチャイニーズの定番料理)。ある意味、そこにも目配せしているタイトルだし、子供時代とも繫がっていて。

……あなたはよく、食べ物について書きますよね?

JW:うん。

どうしてですか?

JW:当たり前だろ、それって。

「スペアリブ」はもちろん、これまでも「マックフルーリー」とか「イングリッシュ・タパス」とか。あなたは身体を鍛えていて、大食いしなさそうですけど、歌詞には食べ物や食べることに関する妙な執着があるように感じるんですが(笑)?

JW:いやとにかく、多くの人間が食えるのってそれくらいなわけじゃない? たとえば……ひとり分のチップス、その人が手に入れられるのはそれだけ、みたいな(※チップスはフライド・ポテト。日本のそれより厚めにカットされていてボリュームがあるにも関わらずひと袋200〜300円程度なので、本来は副菜であるチップスを主食代わりにする人もいる)。それとか、食べられるのは卵サラダサンドだけ、とか。だから、それって人びとはいかに……んー、あまりお金がない状態にいると、そういう安くてしょうもない食べ物でも美味く感じて大事に味わえる、そこに落ち着くんじゃないかと思う。それに、俺とアンドリューがふたりで話すのって、ほんと、食い物についてばっかだし。

(笑)マジですか。

JW:いやだから、そこはまた……さっき言われたイングリッシュ・タパスだとか、マックフルーリーだとか、まあなんでもいいんだけど、そうやって俺が歌で取り上げてきたことって、俺がそういった食い物を食ってる日常の周辺で起きた色んなことを表象するものでもあるんだよ。それは子供時代の話も同様で、ガキの頃はとんでもなくひどいものを食わされてたよなぁ、みたいな文句をね(笑)。その手の話はしょっちゅうやってる。

表題曲の“Spare Ribs”の歌詞にエイフェックス・ツインが出て来ますが、お好きですか?

JW:うん、彼はいいんじゃない? いやだから、あの歌詞で彼の名前を持ち出したのは、あの曲で歌っているのは──

──知ったかぶりの、マウントしたいタイプ?

JW:(顔をしかめて)うんうん、あの手合いはね〜、ほんと、もう……

(歌詞を引用して)「エイフェックス・ツインや/スペインのアナキストについてえんえん語ってる奴」と。

JW:うん、そうそう! だからさ、ああいう難しそうなことをぺらぺら触れ回ってる連中って、いざ「それってどういうことですか?」と突っ込まれると、実はそれをよく知っていないのがバレるっていう。となると、やっぱ思うよね、お前は常に「自分はこの手の世界にどっぷり浸かってますよ、熟知してます」って雰囲気を醸してきたのに、なんで自分の言ってきたあれこれをよく知らないんだい?と。

“Fish Cakes”で繰り返されている「At least we lived」という言葉に込められている感情は、やはり絶望感なのでしょうか?  すごく悲しい曲だなと思いますし、「少なくとも自分たちは生きたんだから」という一節にあなたが込めたのもそういう思いなんでしょうか。

JW:うん、ある意味、そうなのかもしれない……。うん、そうした悲しみをあの曲で伝えたかったのかもね。というのも、俺が子供の頃は……いや、そんなに悲しい子供時代だったとは思わないな。それよりもこう、とにかく退屈だった。狭く限られていたし、周囲にも大して何もなくて。しかも大人たち、当時接することになった大人のほとんどは、子供たちよりもひどい状態で。だから、とにかく何もかもがつまらなくみじめだと思えたし、憂鬱に映った。そこを歌にしたいなと。それらの体験を曲に含めたいと思ったんだ。それをやるのには、本当に苦戦したけどね。というのも、俺はあれを哀れっぽい曲には、聴き手に憐憫の情を掻き立てるような曲にはしたくなかったから。そうではなく、あの情景を表に見せたかっただけで。

今年亡くなったアンドリュー・ウェザオールから受けた影響についてお話しいただければ。Two Lone Swordsmenの“Sex Beat”(ガン・クラブのカヴァー)には影響を受けたという話は読みましたが、それ以外で彼について思うことがあればお願いします。

JW:TLSのアルバム『From the Double Gone Chapel』(2004)で、彼らは──あれはたぶん4枚目か5枚目だったはずじゃないかな? あれを聴いて、俺の抱いていた……シンガーが歌う際のいいバッキング・サウンドとはどういうものになり得るか、そこについての考え方を部分的に変えさせられた。いいサウンドってのは何かという、その見方をね。あの雷みたくゴロゴロと鳴るベース・ラインに、あのアルバムでのアンドリュー・ウェザオールの歌い方に……それにキース・テニスウッド。彼とは知り合いで、たまに話す間柄だよ。本当にいい人だけど、うん、彼の用いたプロダクションの手法だとか。そういや、彼もブライアン・イーノの大ファンなんだよな。彼に「あのアルバムであなたが影響されたのは何だったんです?」と尋ねたら、「ブライアン・イーノにめっちゃ影響されたぜ!」って答えが返ってきて、俺は「クソッ、そうなのか!」みたいな(笑)。

(苦笑)それはもう、あなたもイーノを聴かないと。意地を張らず、諦めて聴きましょう。

JW:(笑)あー、そうだねぇ、聴かないと……。ともあれ、うん、そういう話で。それに、アンドリューとも2回くらい実際に会ったことがあって。ほんと、イイ奴でね。本当にナイス・ガイで。全然──お高くとまったところや自己中心的なところのまったくない、じつに愛すべき人だった。だからうん、そこはものすごく感銘を受けたよね。でも、それだけじゃなく、彼の佇まいも印象に残ったな。ほら、あのタトゥーだったり……着る服を通じて自己表現する彼のやり方だとか、あれは無類のものだったっていう。ああいうことをやる人は決して多くなかったし、そこからも本当に影響された。とにかく、「自分の頭で考えろ」っていうこと。もっとも、その点については、他の人たちからも俺は多く学んできたんだよ。ただ、アンドリュー・ウェザオールはそのなかでもグレイトな人物のひとりだと思ってる。

ウェザオールには「彼のスタイル」がありましたよね。そこが、他の人とは違っていたんだと思います。

JW:(うなずく)ああ。

来年の抱負をお願いします。

JW:それは……やっぱ、またライヴをやることだよね。俺たち、日本にぜひ行きたいと思ってるし。

ぜひ!

JW:うん、ほんと、日本に行けたらいいなと思ってる。とにかく日本で演奏するだけでいいんだ。そうやって向こうに行って……ギグをやって守り立てることで、『スペア・リブズ』にふさわしいだけのことをちゃんとやってあげたいな、と。いまは視界も開けた状態なわけだし、うん、もっと後になってからではなく、できれば早めにそれを実現したいと思ってる。

アルバム音源も好きですが、あなたたちのエネルギーはライヴだと一層パワフルなので、日本でのショウが実現するのを祈っています。というわけで、本日はお時間いただき、ありがとうございました。

JW:こちらこそ、ありがとう。

★了

(2020年12月17日取材)

Thundercat & Squarepusher - ele-king

 重要なお知らせです。今月下旬に予定されていたサンダーキャットの来日公演、および、2月に予定されていたスクエアプッシャーの来日公演が、ともに再延期となりました。
 海外で猛威をふるう変異種ウイルス、日本国内での入国制限強化、緊急事態宣言再発令の予定など、現在の厳しい状況を受けての判断です。楽しみにしていた方も多いと思いますが、状況が状況ですのでここはぐっとこらえましょう。
 振替や払戻しについては近日あらためて発表されます。チケットをお持ちの方は大切に保管を。

THUNDERCAT、SQUAREPUSHER
来日公演に関するお知らせ

海外での変種ウイルスの感染拡大を受け、12月24日以降の当分の間において、英国からの新規入国拒否および米国からの入国制限を始め、海外から水際対策強化に係る措置が実施されることとなりました。さらに現在では、外国人の新規入国の全面停止も検討されています。またPCR検査の陽性者の拡大を受け、緊急事態宣言の発令も予定されており、そして未だイベントに対する規制緩和も延期されている状況です。

弊社並びにアーティストサイドは互いに協力し、ビザ取得に加えレジデンストラックでの入国、また公演前に15日間の隔離期間を設ける等々、様々な対策を講じることで、予定通り公演を開催すべく準備を進めてまいりましたが、今回の政府による規制強化及び、開催会場のキャパシティ制限などの規制を受けて、公演を再延期せざるを得ない状況となりました。

THUNDERCAT、SQUAREPUSHERともに来日に対する意欲は強く、新たな日程で開催を実現できるよう再調整中です。ご来場を心待ちにしていらしたお客様には、大変ご心配とご迷惑をお掛けいたしますが、振替公演、払戻し等の詳細についても、現在関係各所と調整中ですので、近日改めて発表いたします。

2021.01.27-29 THUNDERCAT JAPAN TOUR 2021 << 公演延期
2021.02.16-18 SQUAREPUSHER JAPAN TOUR 2021 << 公演延期

・現在、振替公演を開催すべく調整中です。既にチケットをお持ちのお客様は、お手持ちのチケットで振替公演にご来場いただけますので、大切に保管していただくようお願いいたします。

・振替公演に都合がつかないお客様には、払戻しの対応をさせていただきます。払戻しの詳細につきましても、現在調整中ですので、お手持ちのチケットを大切に保管していただくようお願いいたします。

外務省:新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

お客様には、ご迷惑をおかけすることになりますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

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THUNDERCAT AND SQUAREPUSHER TOURS IN JAPAN

Due to the spread of a new variant of the novel coronavirus overseas, on December 24 the Japanese government decided to enforce new restrictions on travel from all foreign countries, including refusal of new entry from the United Kingdom and the United States. In addition, due to an increase in the number of local positive PCR tests, the deregulation of events has once again been postponed.

BEATINK along with both artists were fully prepared to comply with all government regulations including undergoing quarantine in order to make these performances happen. However due to the further tightening of regulations by the government and restrictions imposed on venue capacity, we are now left with no choice other than to again postpone both tours.

Both THUNDERCAT and SQUAREPUSHER are highly motivated to perform for fans in Japan and fully intend to announce new tour dates at the earliest possible moment. We sincerely apologise for any inconvenience caused to customers who have purchased tickets, and we are currently coordinating with all parties regarding new performance dates and refunds, which will be announced very soon.

2021.01.27-29 THUNDERCAT JAPAN TOUR
2021.02.16-18 SQUAREPUSHER JAPAN TOUR 2021

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