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三田 格   Sep 03,2010 UP

 当初はイナーゾーン・オーケストラのテレル・マクマシス(クラック・ナックルズとしても〈トレス〉から08年にアルバム『ピース・トークス』をリリース)を含む6人組として03年にデビューしたヴァイナル・ジャンキーズからレジナルド・シンクラー2世によるファースト・ソロ。オンラやハドスン・モーフォークをフィーチャーした「7×7」インチ・シングルに続いて、今年の頭からオール・シティが新たにスタートさせた「ロサンジェルズ 10×10」のトップを飾った新鋭で(テイク、ラス・G、フライング・ロータスのコラボレイターとして知られるサミヤンなどがこれに続く)、その通り、L.A.ヒップ・ホップのこれからが期待される重要人物のひとりといえる。

 オープニングでプリンス"レッツ・ゴー・クレイジー"のイントロにのせて打ち込まれるギクシャクとしたビートはいまや......クリシェに近い。ここからどう個性を編み出すかだけれど、シンクラー2世のそれは乱れ打ちになるかと思えばビートが完全に途切れてしまったりと、まるでコラージュの一部であるかのように機能するだけで、ビートを追って聴いていくことはけっこう難しい。さらにはアルバム・タイトルとなっている『イディオット・ボックス』とは実はTVのことで、最初から最後まで絶え間なくTVの音声がそのまま垂れ流され、いってみれば大音量でTVをつけながらヒップホップのアルバムを聴いているのと変わらない。ジャケット・デザインを見る限り、きっとくだらないことがサンプリングされていて、英語が母国語の人にとってはそちらのほうが耳には入っていきやすいはずである。そうなると、ビートのほうはどう考えても醒めた調子に聴こえるだろうし、それが途切れたりするということは、時々、ヒップホップにも耳が行くようなシチュエイションがわざと画策されているとしか思えない。正確なところはわからないけれど、なぜかこれが飽きないし、10年前のオッド・ノズダム『プラン9』にどこかで一脈通じるような感性ではないかと思えてくる。そう、ヒップホップという名のアメリカのゴミあさり。カット・アップされたメロドラマ風のストリングスが誰をどこにも連れていってくれない。その場でいつまでも淀んでいるだけ。映画『ブラック・ダリア』や『チェンジリング』に描かれた絶望的なL.A.に滞留を余儀なくされるだけである。

 また、09年にMP3「シュロー-ファイEP」で注目を集めたヘンリー・ローファーも夏前にはファースト・ソロをリリースし、いわゆるフライング・ロータスのフォロワーのなかでは奇妙なマイナー・チェンジを味わわせてくれる。ダブステップとのクロスオーヴァーとでもいえばいいのだろうか、スケールは小さく、感情表現も低く抑えられた8曲+リミックス4曲はP.U.D.G.E.が投げ捨ててしまったビートの快楽に疑問を投げかけ、重箱の隅をつつくように可能性の足踏みを続けていく(ちなみに彼もサン・フランシスコとL.A.を行き来するプロデューサーである)。

三田 格