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金持ちたちが税金の不払いを宣言したことで有名になったカリフォルニア州オレンジ郡からクリス・アルファーロによるアブストラクト・ヒップホップのファースト・アルバム(08年にリリースされたセルフ・タイトルの『フリー・ザ・ロボッツ』は初期作のコンピレイション)。バスドライヴァーやデイダラスをリリースしてきたフランスのレーベルからで、デザイン・センスがそれまでとはまったく違う(......ので、気になった)。
全体にB級趣味をスマートに聴かせるというか、一歩間違えば下世話になりそうなジャズ・サウンドからのサンプリングが耳を引き、オープニンングからしてクールなピアノがカッコいい。そうかと思えば"ジ・アイ"や"グローバル・ウォーニング"はかなりサイケデリックで、後半に向かってどんどんアグレッシヴになっていく。あるいは音の組み立てに関してはデプス・チャージの大味な部分をDJシャドウが起用に整えていったとでもいえばいいだろうか("ヴォイシズ"はストレートに初期のDJシャドウを思わせる)、エレクトロニクスを強調した曲はなぜかコミカルな印象を与える傾向があり、それを含めて随所でモンドなセンスにも光るものがある。ダブステップとの境界を取っ払った曲も悪くないし、地味ながら野心的という感じ。いつしかロボットたちを自由にしてあげようという気になってきます......。
実はこのアルバム、1ヶ月ぐらい前に聴いた時はあまりいいとは思えず、何度かしつこく聴き直しているうちに印象ががらりと変わってきた。おそらくアンビエント本の作業があまりにキツキツでダンス・ミュージックにおける今年の気分というものがよくわかっていなかったのだろう。ロスカのデビュー・アルバムを聴いて、一時期よりはクラブ・ミュージックに心も戻ってきたので(笑)、今年前半のリリースを改めて総ざらいしてみると、2010年前半期ベストはレインジャーズ『サバーバン・ツアー』、続いてワンオウトリックス・ポイント・ネヴァー『リターナル』、3位がポール・ホワイト『パープル・ブレイン』という感じでしょうか。次点でサン・アローか前述のロスカ。ヴォルフガング・フォイト『フライラント・クラフィエムジーク』(裏アンビエントP189)もなかなかよかったなー。
さて、後半はどんなことになるのか。音楽家の皆さん、もっと楽しませて下さいよ。
三田 格