ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Brian Eno ──ブライアン・イーノがレーベル〈Opal〉を再始動、あわせて00年代の2作品がリイシュー
  2. Arca - XXXXX
  3. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  4. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  5. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  6. R.I.P. 鷲巣功
  7. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  8. Loraine James ——ロレイン・ジェイムズの新作、突如のリリース(しかも無料DL)
  9. interview with Cameron Picton (My New Band Believe) 元ブラック・ミディのキャメロン・ピクトン、新バンドにかける想い | ──初のアルバムを送り出したマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ
  10. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  11. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  12. Future Sound of Jazz ——蘇る「フューチャー・ジャズ」、ドイツの〈Compost〉の人気シリーズが16作目
  13. This Is Lorelei - The Singer in My Band | ディス・イズ・ローレライ
  14. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  15. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  16. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  17. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  18. Tohji - angel
  19. Kim Doeon - SLAPSTICK | キム・ドオン
  20. Arca - &&&&&  | アルカ、Jesse Kanda,Distroid

Home >  Reviews >  Album Reviews > Spiritualized- Sweet Heart Sweet Light

Spiritualized

Spiritualized

Sweet Heart Sweet Light

Double Six/ホステス

Amazon iTunes

Excavacations

Excavacations

Object Permanence

Weied Forest

iTunes

三田 格   May 16,2012 UP

 アルバム・タイトルとは別に大きくデザインされている文字は「ですよね?」と訳すことができる。イースト・エンド×ユリ風に「だよね?」でも、少し丁寧に「でしょう?」でもいいだろう。何かに対して同意を求めている。

 何に?

 「ロックしていること」ではないかと思われる。ローリング・ストーンズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドを適当な因数に分解して再合成したサウンドからは、これしかないという思いが感じられる。残念ながら僕にはその思いは少ししか共有できないけれど、ロックしかないと思っているリスナーは強く同意してあげるといい。もしも、この世にロック・ミュージックしかないのであれば、このアルバムはよくできた作品だと思うから。

 昨年は「ロックは死んだ」33回忌だった。ジョニー・ロットンはそのように言い放って、1978年にセックス・ピストルズから脱退し、自分の名前も変えた(そして、PiLを始動させる......そう、PiLが復活するのは2年早かった。仏教徒じゃないんだから当たり前か)。

 スピリチュアライズドは紛れもなくロックしている。『ロッキン・オン』風にいえば......掛け値なしにロックの王道を爆走している。魂が叫んじゃったり、人生とか光とか明日が大変なことになっている感じだろうか(最近の『ロッキン・オン』は違うのかな? 経済とか論じてたらどうしよう......)。とはいえ、ジミ・ヘンドリクスとルー・リードが揃って婚姻届に判を押したようなタイトルの"ヘイ・ジェーン"からいきなり弾けまくりで、途中で一回、事故を起こしたと思ったらクラウトロックになって曲は蘇ってくる。ラ・ドュッセルドルフ"ドュッセルドルフ"で飛行機が墜落しても、また、何事もなかったように飛んでいくあたりを思わせる。さすが、一度は死に掛けた男である。引用する場所が違う。一転して"リトル・ガール"では情緒的なフォーク・ロック、さらにメロトロン......じゃないと思うけど、プロコル・ハルムをバックにピーター・ペレットが渋い喉を聞かせているようなサイケデリック・ナンバーと、ある種のロック・ページェントが続く。なんというか、自分がどんどん古い男になっていく気がする。なにがダブステップだ。なにがインテリジェント・ブラック・メタルだ。やっぱ、ロックンロールだろう。だよね?

 「ユー・ゲット・ワット・ユー・ディザーブ」のアウトロはなかなかいい。少しばかりスペースメン3のことを思い出せるからである。続く「トゥー・レイト」ではそうはいかない。思い出すのはブリティッシュ・ロックがパンクに蹴散らされる前のこと。「ヘッディン・フォー・ザ・トップ・ナウ」でピアノが連打されるとエルトン・ジョンが映画『トミー』で10メートルぐらいあるブーツを履いていたことを思い出す。授業をサボって初めてひとりで観にいった洋画だった。ティナ・ターナーが全身から血を抜かれるシーン。TVから吹き出るゲロがアン・マーグレットを呑み込むシーン。教祖に扮したエリック・クラプトンの足元でアーサー・ブラウンがただひたすら蠢いているシーン。それらはみなワイルドで「ロック」だったけれど、僕の人生観とか、タマCとかは揺すぶられなかった。『タワーリング・インフェルノ』や『ロッキー』といった映画と同じ娯楽でしかなかった。そう、それがそもそもスピリチュアライズドが『レイザー・ガイデッド・メロディーズ』でデビューした時からの違和感だった。ポカホーンティッドやダブル・レオパードといったゼロ年代のドローン・バンドからそれぞれベスト・コーストやエンドレス・ブギーといったロック回帰も起きたわけだから、サイケデリック・ロックを追求していたスペースメン3からスピリチュアライズドが派生してはいけないとは言わない。しかし、僕のまわりにソニック・ブームの熱心なファンは腐るほどいても、ジェイスン・ピアースに夢中だという人がまったく見当たらないように、スペースメン3のサウンドを形作っていた基礎の方にシフトしたサウンドはやはりスリリングとは言いがたく、娯楽以上のものにはなってくれない。そう、エンターテイメントとしては本当に素晴らしい。"メアリー"から"ライフ・イズ・ア・プロブレム"への流れなんて、なにひとつ文句はないではないか。......ですよね?

 チャド・パースンズとニコラス・ロングウォースがこれまでにリリースしてきた3本のカセットからウイアード・フォレストが独自に編集したコンピレイション『オブジェクト・パーマネンス』は、スピリチュアライズドよりもスペースメン3に近く位置し、まるでゼロ年代のUSドローンからサイケデリック・ロックを捻り出そうとするダイナミズムの交差点に立っているという錯覚を与えてくれる。彼らはそれをバーニング・スター・コアやレリジャス・ナイヴスとは正反対にポップ・ミュージックとして展開しようとする意欲まで見せてくれる。こんなことはトークディモニックにも、インフィナイト・ライト・リミテッドにも、ましてやダイアモンド・グロスにもできなかった。ポスト・クラシカルへ舵を切ってしまったファック・ボタンズも論外だし、エメラルズやマウンテンズが失ってしまったハードさをどこまで持続させることができるのか。USドローン・ヴァージョンのスペースメン3だといえる"ポーター"を聴きながら、僕は不安と期待をいつしか天秤にかけている。ジョニー・ロットンは「ロックは死んだ」と言い放ったかもしれない。しかし、誰もまだ「サイケは死んだ」とは言っていない(僕は聞いたことがない)。そして、"クラッシュド・トゥ・ビッツ"がまたしても曲がりくねった奇妙なヴィジョンへと僕を誘い込む。

三田 格