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Babe,Terror

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College Clash

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三田 格   Apr 25,2013 UP

 TPP恐怖症というのもヒドい煽り方だけど、そのように言われてしまうネトウヨ経済学もアジアの経済圏といって韓国と中国しか意識に上らないのはさらに情けない。リュック・ベッソンがアウン・サン・スーチーの映画を撮るのも、ミャンマーが新たな経済圏に加わったからだというのは自明の理だし、そこまでジオメトリカル音痴になられてしまうと、ウォシャウスキー姉弟が「いまの日本は内向きすぎて、韓国みたいに映画の舞台にはできない」といったコメントがなかなか重く感じられてしまいますw。

 TPPに関しては、どっちの主張も読むにたえなくなってきた昨今、しかし、関税を撤廃した際、そのときに減る税収がどれぐらいになるのかという試算はいまのところ目にした覚えがない(中野剛志はWTOの機能不全とともにそれを言えばよかったのではw)。元々、日本の関税率は大して高くないから、平均で考えれば「税収が減る」というほどのイッシューにはならないということなのか、とはいえ、アメリカとの取引量がそんなに少ないとも思えないので(だから騒いでるんですよね?)、やっぱ、税収が落ちた分は消費税のさらなる値上げとか、そういうところに跳ね返ってくるという気がしてしょうがない。最初に参加を表明した管直人は法人税の引き下げも提案していたから、輸出がネオリベの期待通り、それなりに活発になったとしても、法人税で減収分を補うという選択肢も封じられているわけだし......(むしろ自民党の方がそれはやりそうだもんね。つーか、そういうイメージしかないしー)。ちなみに遺伝子組み換え食品の輸入を最初に認可したのも管直人(当時厚生大臣)でした(モンサントから何かもらってる?)。

 基本的にはどっちでもいいんだけど、もうひとつTPPに腰がひけてしまう要素があって、日本がいま、貿易量を増やした方がいいと言われている国々がどこも交渉にさえ参加していないことである。TPPが発効されるかもしれない10年後のことはさすがにまだわからないとしても、DJマユリが事実上、移住してしまったインドネシアはもちろん、やはりブラジルの名前が見当たらないのはかなりマイナスではないかと。ブルネイやチリに魅力がないといっているわけではないけれどw、日本中が免税店のようになってしまった場合、アメリカやカナダはもう充分なので、インドネシアの〈ワハナ〉やブラジルのアンダーグラウンド・ミュージックをもっと買いやすくしてほしいわけですねw。

 「ガーディアン」に寄せられたアラン・マッギーの投稿によると(09年3/24)、サン・パウロに住むベイブ、テラーことクロウディオ・ジンキエルの音源は彼本人からEメールでダウンロードのコードが送られてきたという。そして、それに魅了された人たちは「ピッチフォーク」をはじめ、それなりの数に上り、まずはイロール・アルカンがファースト・アルバム『ウィークエンド』から「サマータイム・アワ・リーグ」と「アヴァイ(ポルトガル語でハワイのこと)」をライセンスしてリミックス・カット。とくに前者はフォー・テットによるブロークン・スタイルが好評を博し、ベイブ、テラーの知名度は一気に上昇する。しかし、元々の『ウィークエンド』は聴いての通り、和声やコラージュを基本とした実験的な内容のアルバムで、いわゆるダンス・レコードからはかなりかけ離れたものだった。アラン・マッギーも前述の投稿で『ウィークエンド』からは60~70年代にブラジルで巻き起こったトロピカリズモ(トロピカリア)の余波を聴き取ることができると続け、それがデヴィッド・バーンによって90年代に受け継がれたムーヴメントであることにも触れながら、ベイブ、テラーをその系譜に位置づけるというものであった。ダンス・カルチャーでの知名度はつまり、2枚のシングルがヒットした時点では横道に逸れたものとも言えたのである。

 シューゲイザーっぽさを加えたセカンド・アルバム『プリペアリング・ア・ヴォイス・トゥ・ミート・ザ・ピープル・カミング』は、そして、全体的にダークになっていることでイギリスとの距離が近くなっていることを印象づける部分はあったものの、本質的な世界観に大きな変化はなかったものが、昨年、リリースされた『ナイツEP』はその延長線上にあったものがハイプ・ウイリアムスと重なっていることに気づかされる側面が多分に含まれるものとなっていた。ビートがプラスされただけでクラブ・ミュージックになったとはさすがに言わないけれど、僕にはトロピカリズモの断片を探すことさえもはや不可能で、むしろトリップ・ミュージックとしての完成度が高まっているのである。ジンキエル自身はそれをウロング・ダンス・ミュージックと呼んでいる。間違ったダンス・ミュージックだと。

 ジンキエルが送ったEメールに(強く)反応したのがアラン・マッギーやイロール・アルカンといったイギリス人たちでなければどうなっていたのだろうとは思う。しかし、ジンキエルはつまるところイギリス流のダンス・ミュージックに目覚めてしまった。それは間違いない。彼がベイブ、テラーの頭文字にUを足して、新たにBTUという名義でリリースした「ウイズアウト・アーマー(=武器のない)」はリズムやコーラスなど主要な部分はすべて逆回しで押し切ってしまうなど、「ナイツEP」をさらにダイナミックに応用させたものであり、ザラつくテクスチャーに浮かれた音の断片が降っては湧き、過剰なアトモスフェリックを巧みに操ってきた彼の資質が新たなスタイルにもうまく噛み合っていることを印象付けてやまない。期待のフリックステイラーズがメキシコのダフト・パンクになり損ねたことを思うと、ジンキエルは少なくともブラジルのハイプ・ウイリアムズにはなれたようだし、まだもう少し遠くを狙えるかもしれないと(メキシコはちなみにTPPの交渉に参加を表明)。

 ダンス・ミュージックはBTUの名義に預けたということなのか、それとも単に未発表曲を集めただけなのか、大学のバスケットボールに捧げられたベイブ、テラーのサード・アルバム『大学激突』はビートらしきものもフルに取り入れながら、イギリスを意識しないとこうなるということなのだろう、再び何がしたいのかさっぱりわからない地点へと立ち戻っている。これまでのことを考えると、これはポテンシャルとも言い換えられるし、アラン・マッギーが言うようにトロピカリズモがこじれたものと見なす視点もけして悪くはない。もっといえば、以前のアルバムよりもむしろ整合性のようなものは失われているし、どこかアンビエント・ミュージックのフォーマットを壊しはじめた時期のティム・ヘッカーを想起させるものがある。BTUでひとつの方向性が明確になってきたときに、そこに収束してしまうわけではなく、新たにこれだけ可能性の翼を広げようとする無謀さ。カセット・テープでいうと、B面に反してからのファンタジックな響きに僕はかなりやられている。エンディングは「ブライトン・ストーン・ピッチャーズ」ですよ、ブレイディみかこさん!(かつて僕はあなたのブログを読んでいて映画『アメリカン・スプレンダー』のことを知ったのでした。)

三田 格