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Savages

Post-Punk

Savages

Silence Yourself

Matador/ホステス

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ブレイディみかこ May 24,2013 UP
E王

 UKネオ・ポストパンク・バンドの雄(いや、雌というべきか)みたいな呼び方をされるバンドだが、実は、初めて彼女たちの演奏を映像で見た時、あんまりUKっぽくないなあ。と感じたのであった。それは、イアン・カーティスの伝記映画『コントロール』を見たときの印象に似ていた。なんかあれも、UK臭が希薄だった。というか、しゃれ過ぎていた。ヨーロッパ大陸の映画みたいだったのである。
 ヴォーカルのお嬢さんのせいかな。と思った。いまどきの英国に、こういう詩情ある佇まいの女の子は珍しい。が、一見するとスージー・スーとシネイド・オコーナーの娘のようなジェニー・ベス(本名はカミーユさん)が、"Shut Up"のPV冒頭で、べたべたにフレンチ訛りの英語でバンドのマニフェストを喋っているのを聞いて腑に落ちた。彼女、おフランスの人だったのである。
 どうりで、UKポストパンクというより、ポストパンク・ノワール。みたいな感じなわけだ。猥雑で何でもありだったUKポストパンクのカラフルさは、彼女たちの音楽にはない。どこまでもストイックで、あくまでもノワール(黒)で、芸術家然とマニフェストまでぶちかましてしまう。『NME』がレヴューで、「もうちょっとユーモアがあったら」と評した所以だろう。
 サウンドは、「ポストパンク・カラオケ」などと評する人もいる。ジョイ・ディヴィジョン、ザ・バースデイ・パーティ、スージー・アンド・ザ・バンシーズ、ワイアー、フォール、ギャング・オブ・フォー、バウハウス。いくらでもリファランスは出て来る。が、このお嬢さんたちのカット&ペイストには、茶化しの精神や、妙にロマンティックな過去へのリスペクトはない。ただ、息詰まるような行き詰まりのアンガーが感じられるだけで。
 息詰まりと行き詰まり。などと駄洒落で遊んでいる場合ではない。この国の若者たち(UKに住む、すべての国籍の若者の意)は、そこまでイキヅマッテいるのだろうか。

 ジェニー・ベスが書く言葉は、当然ながらネイティヴの英国人が書く歌詞とは違う。だからなのか、マニフェストなどぶちかますバンドにしては、言葉じたいは拍子抜けするほどシンプルだ。

 I am here
 I won't hide
 I am shouldering you
 This is easy
 This is not hard

 たしかにイージーで、ハードではない。邦訳の必要はないぐらいだ。そしてそれは彼女たちの絶対的な強みでもある。なぜなら、英語が多くの人びとにとって共通の第二言語となったこの世界で、誰もが原語のまま聴ける音楽を作ることができるからだ。ポストパンクは、「世の中に新しいものが生まれるとすれば、それはハイブリッドだ」という坂口安吾の言葉を体現したようなムーヴメントだった。サヴェージズも、一見とてもUKで、イキヅマッテいるようでいながら、実は混血であり、UKの外に開かれている(そもそも、純血への拘泥や鎖国幻想は、進化の否定であり、滅びのはじまりである。いい若い者が、イキヅマリなど志向してどうするのだ)。

 さらに、直接的で無駄を削ぎ落とした言葉は、逆説的な広がりを持つ。
 「起きたら一人の男の顔があった こいつ誰なんだろう 両眼がない こいつがいると落ち着かない こいつのせいで落ち着かない ああ不安になる」という"Husbands"は、ワンナイト・スタンドの歌のようでもあるが、聞く人によって「男」の定義づけは広がる。ワンナイト・スタンドの相手を単なる性器扱いにせず、「私の夫たち 夫たち 夫たち」と、いきなり法的制度で契約を交わした相手にして反復するあたり、これは実は男ではなく、社会的に圧迫感のある相手を呪詛し倒している歌じゃないかとも思えてくる。
 例のマニフェスト(ジャケットにもプリントされている)にしても言い回しはシンプルだ。「全てを解体したら、どうやって再び作るか考えないとね」というのは、ポストパンクのマニフェステーションそのものだが、「黙んなさい」というのは、凄い言い切りである。
 黙って私たちの音楽を聴け。なんて、そんな不敵な気負いをぶち投げて来たのは、UKギター・バンド復権の年にあってもこのお嬢さんたちだけだ。こんな大上段に構えた気概を持ってシーンに登場した女子バンドは、思い返してみても、ザ・スリッツ以降はいなかった。というか、もはや女子バンドの括りに入れるのがおかしいのかもしれない。サヴェージズは、余裕で男たちのバンドより格好いいからだ。パーマ・ヴァイオレッツだ何だとフライングする人もあったが、わたしは彼女たちを待っていた。

 とは言え、「黙って聴け」というわりに、革新的なサウンドやアイディアはファーストではまだ出ていない。が、スピリッツには何かただならぬものを感じる。
 おそらく、このアルバムはほんの始まりである。これから伸びて行ける幅が大きく残っている(個人的には、ニック・ケイヴのバラードのような最後の曲"Marshal Dear"に2枚目への伏線を感じた)。彼女らは、全然イキヅマッテいない。

ブレイディみかこ