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Sean Nicholas Savage

Blue-Eyed SoulIndie PopSynth-pop

Sean Nicholas Savage

Other Life

Arbutus / Signs and Symptoms

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橋元優歩   Jun 07,2013 UP

 中古屋でシンプリー・レッドとかザ・ブルー・ナイルとか、スタイル・カウンシル、レベル42、エヴリシング・バット・ザ・ガール......などなどがかたまって収まっている箱があれば、このアルバムが紛れていてもおかしくない。ざくざくと漁っていたあなたはふと手を止めて、これなんだっけ? と記憶を探りながら試聴に向かうかもしれないし、3秒ほど見て戻すかもしれないし、100円だから(あり得ることだ)衝動買いをするかもしれない。きっと同じ持ち主が売ったのだろうし、このジャケだし、埋もれていたシンセ・ポップやブルー・アイド・ソウルの良盤という可能性もある、と。

 さて、買って帰って針を落として、あなたははじめて検索窓に彼の名前を打ち込むことになる。そして2013年の作品だと知って驚くのだ。そのまま疑うことなく再度塩ビに収める人もいるかもしれない。インターネットがなければ、確実にこの『アザー・ライフ』は時の狭間で迷子になる。

 よく聴けばリヴァーブには2010年前後から現在につづくモードが感じられる。録音にだってきっと差があるのだろう。しかしナイト・ジュエルや〈イタリアンズ・ドゥー・イット・ベター〉、アリエル・ピンク、〈メキシカン・サマー〉、〈ソフトウェア〉、〈ノット・ノット・ファン〉等々、ここ数年の北米インディ・マップに浮かび上がる、ミステリアスなシンセ・ポップ・リンクに連なるようでいて、そこからこぼれ落ち掻き消えようとするような佇まいもある。中古屋でそっとしておいてくれてもよかったのに。次来たときはきっと必ずどこかに消えてもう2度とあなたの目に触れることはないのに......とでも言っているよう。マック・デマルコに比較されたりしているのはとてもよく理解できる。彼、サヴェージの音楽にもどこか拭いがたく通常の生の世界からの疎外感があり、切ないデカダンス(語義矛盾だけれども)がある。一聴したところは甘やかでソツがないようにも聴こえるが、境界を生きる人間の痕のようなものが音にもジャケットのフォトグラフにもくっきりと残されている。

 リリースはグライムスを筆頭にブルー・ハワイやドルドラムス、ブレイズなどを擁するカナダの〈アルバタス〉から。以前にグライムスにインタヴューした際のニュアンスから推して、おそらくは地元のD.I.Yなアート・コミュニティという雰囲気なのだろう。グライムスの活躍とともに世界的な関心を集めるようになったレーベルだ。サヴェージはその創設時から関わっていて、これまでの作品もすべて〈アルバタス〉から発表するなど、この界隈になくてはならない存在のようである。それでいてこれまで真っ先に注目されるということがなかったわけだが、ひたむきな支持に支えられ、本作も海を超えて各誌に取り上げられることになった。『NME』の「アリエル・ブルー」という表現は「ピンク」との対照をコミカルに言い当てているが、アリエル・ピンクのスキゾフレニックな感覚が生への意志を強く宿しているのに対し、サヴェージのブルーはずっと整理されたスマートさと様式性を持ちつつ生の困難さを際どくえぐっているように感じられる。

 ユーチューブでも聴くことのできる"モア・ザン・アイ・ラヴ・マイセルフ"が気になったら購入して間違いはない。CDの音源だけからはすんなりと伝わらないが、カラオケ状態で熱唱するライヴ映像は、タイプは異なれどハウ・トゥ・ドレス・ウェルに重なる。あまりの熱烈さは少し滑稽にも映り、観客は喝采を浴びせる。だがこの喝采には畏敬や親しみも十分こめられている。丸腰でステージに立ち、観るものに自分のなかのいのち(もうそう多くは残っていない)をすべて与えようとするようなたたずまいには、虚無とともに、それとせめぎ合う愛の過剰さが感じられるだろう。すでに彼へのトリビュート・アルバムまで存在しているのはそういうことだ。ダニエル・ジョンストンが人を惹き寄せるように、彼の立つ境界地点へとわれわれの耳はそばだてられる。ポップスが持つ、ギリギリに危険な力が宿る怪作だ。

橋元優歩

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