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Blind Boys of Alabama

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Blind Boys of Alabama

I'll Find A Way

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木津 毅   Oct 21,2013 UP

 「ブラインド・ボーイズ」とは、1930年代にアラバマの盲学校で生まれたそのグループのアイデンティティと誇りが込められた呼び名である。が、ここにおいては「ブラインド」も「ボーイズ」もひとつのメタファーとして機能している。キリスト教時代のボブ・ディランのカヴァー、“エヴリー・グレイン・オブ・サンド”を聴いてみよう。本作のプロデューサーを務めたジャスティン・ヴァーノンはライナーノーツでこのように説明している……「この歌は僕の人生のもっとも暗い時期を支えてくれた」。その歌を、ゴスペルを何十年も歌い続けてきた高齢の「ボーイズ」とともに、地元の音楽仲間たちの演奏でヴァーノンは歌う。81年のディランの歌が時空を超えて、ゴスペルのレジェンドの力を借りてシェアされる……ここでは、様々な「ブラインド」な人間が集まり、そして同じ歌のなかを生きようとしている。

 ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマは1939年から現在まで70年以上の活動を誇るゴスペル・グループであり(初期の音源もまとめられている、創設メンバーであるジミー・カーターはいまなお堂々とその歌声を披露している。2004年のフジロックのステージで観て僕は彼らの存在を知ったが、その魂と活気に満ちたステージに圧倒された記憶がある。
 本作はボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンがプロデュースし、彼の幼なじみである音楽仲間フィル・クックが中心となって制作したボーイズの新作だ。どういう経緯で実現したプロジェクトなのかは知らない。ヴァーノンは恐らくプロデュース・ワークをやることになるだろうと僕は以前から予想していたのでその点では驚きはしなかったが、それでもこの理想主義的な振る舞いにはただ、強く胸を打たれる。伝統的なフォークをはじめとするルーツ・ミュージックを掘り起こし、それに現代的な文脈を乗せることをアメリカのインディ・ミュージシャンは近年試みており、ヴァーノンもそのひとりだが、ここではその道をさらに先まで繋げようとする。そもそもボン・イヴェールにしてもヴォルケーノ・クワイアにしても、ヴァーノンの音楽的な支柱にはフォーク以上にゴスペルがあり、彼のファルセット・ヴォイスはゴスペルやソウルを歌う黒人シンガーたちの影響を強く受けていることはよく知られている。
 だからこれは彼にとって夢の実現となる企画だっただろうが、このアルバムでは大御所との共演に過剰に気負うことなく自分たちの土俵に持ち込んでおり、たとえば“ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・エニー・ピース”におけるフォークトロニカ的なガチャガチャとしたパーカッションが聴けるイントロなどは、文句なくいまの耳に対応している。ゲスト・ヴォーカリストにフォーク・シンガーのサム・アミドン、マイ・ブライテスト・ダイアモンドのシャラ・ウォルデン、ホワイト・ヒンターランドのケイシー・ダイネル、そしてチューンヤーズ(tUnE-yArDs)のメリル・ガーバスと、若いインディ・ミュージシャンが参加しているのもいい。

 アルバムは“ゴッド・プット・ア・レインボウ・イン・ザ・クラウド”のゴキゲンなゴスペル・ロックで幕を開ける。パワフルなストンプ・ビート、弾むブラスと鍵盤、ヴァーノンいわく「クックのアイディアによるライ・クーダー風グルーヴ」、そしてしゃがれ気味の黒いヴォーカルとそれと重なる見事に温かいコーラス。オーガニックで喜びに満ち溢れ、なんというか、とにかく人間味が感じられる音楽だ。続くタイトル・トラック“アイル・ファインド・ア・ウェイ(トゥ・キャリー・オン)”でどこまでも広がる優しさと慈愛。メリル・ガーバスがセクシーでスウィートなハスキー・ヴォイスで魅了するソウル“アイヴ・ビーン・サーチング”。そしてハイ・テンポで疾走するブルージーなロックンロール“ジュビリー”のクロージングまで……トラディショナルなゴスペルを引用し、それに新しい音響を与え、過去の遺産の再発見を全身で歓喜する。そして歌う……希望と光について。
 ゴスペルをスピリチュアルな意味で霊歌と呼ぶとき、このアルバムにも様々な霊たちが息づいているように錯覚する。この歌たちを歌ってきた、歴史の表舞台には出ることのなかったひとびとの霊たち……。そして、様々な人種と年齢と宗教と性の人間たちが集い、共存し、彼らの魂を召喚する。これこそが現代においてもっともコミューナルな音楽のあり方に思える。歌は人間たちによって歌い継がれ、物語を語り継いでいく。声なき「ブラインド」なひとびとの人生と感情を。「I'll Find a Way」……けれどもこの「I」は、紛れもなく「We」であるだろう。道を見つけていくのはきっと、いつだってそんな「わたしたち」であるだろう。

木津 毅