ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  2. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  3. Robert Del Naja ──マッシヴ・アタックの3D、二度目の逮捕
  4. The Clash ——ザ・クラッシュ、結成50周年記念ベストがリリース
  5. Columns 9月のジャズ Jazz in September 2026
  6. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  7. 『ユーザーズ・ヴォイス』〜VINYLVERSE愛用者と本音で語るレコード・トーク〜 第五回 映画から広がった、サウンドトラックとレコードの世界ユーザー・ネーム:nkk / 中川慧輔さん
  8. Malaria! ——80年代初頭の西ベルリンから、ポスト・パンク/アヴァンギャルド・シーンを象徴する最重要バンド、マラリア!再発
  9. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  10. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  11. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  12. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  13. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  14. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  15. Arca - XXXXX
  16. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  17. interview with Toshimaru Nakamura 世界を魅了する、類い稀なる電子音響 | ──中村としまる、待望の初期ベスト盤リリースと超ロング・インタヴュー
  18. Stones Taro ──京都のハウス・プロデューサーによる新作
  19. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum
  20. Cornelius - Refractions | コーネリアス

Home >  Reviews >  Album Reviews > Francisco Franco- Francisco Franco

Francisco Franco

AmbientElectronicKrautrock

Francisco Franco

Francisco Franco

New Images

Amazon iTunes

橋元優歩   Jan 30,2014 UP

 ダックテイルズやウッズのウォーミーでドリーミーな、きりもなくつづくギター・アンビエントに、リズムマシーンで簡素なビートを加えたのがフランシスコ・フランコの音だ。いずれも3分から5分の枠に収まるようなトラックだから、きりもないということはないけれど、ミニマルで反復的、展開がほぼないというニュアンスでとらえていただきたい。ノイ! に比較されている。エメラルズというよりもマーク・マグワイヤに近い牧歌性、そしてイナー・チューブのガレージ感や躍動がある。マニュエル・ゲッチングという感じではない。スピリチュアルな要素も薄いように思う。恍惚や忘我ではなく虚脱や弛緩──トランシーなのではなくレイジーな音の波に、心地よくさらわれる体験。

 かといってダックテイルズのようにずぶずぶにならないのは、やはりリズムトラックのためだろうか? “アベル・マナー”の生のドラムのようにも感じられる2ビートのほかは、みな何の工夫も、フィルインさえない単調なプリセットのパターンがオートマティックにつづくだけなのだけれども、硬めのプリンみたいに、音がちゃんと立っている。レイジーともいえるしクリティカルともいえる。そして、ビートを抜いて考えてみても、どこかこのトリオにはスタイリッシュに締まったところがあるように思う。“ホテル・バイ・ザ・レイルロード”のシンセなんか洒落ている。弛緩しながらもポイントをついて、目立たず引き算をする。構築的というか駆け引きがあるというか、それが本当にさりげないレベルで心憎い。
 “ウィターリス”は可愛い。“ワンショルダー・マン”なども、クラウド・ナッシングスから、ちょっと飛んで〈モール・ミュージック〉のパスカル・ピニョンなんかを好きな人まで聴けるのではないだろうか。すごいぞ、どんどん聴ける。何周かすると、全体の構成にも、アンビエントやドローンの作品の方法論ではなく、どちらかといえばポップ・アルバムのルールに近いメリハリや勾配が感じられてくる。

 というこのアルバムを作っているのは、プルリエントやあるいはピート・スワンソンにも似た、ハーシュノイズ吹き荒れるダンス・アルバムを〈ホワイト・デニム〉からリリースしているM Ax Noi Machことロブ・フランシスコと、エア・コンディショニングのメンバーとして活躍するマット・フランコのデュオ。現在はトリオのようだが、フランコでもフランシスコでもないネイト・デイヴィスもアンチェインというノイズ・プロジェクトで活動している。つまり完全にインダストリアルの文脈から出てきたノイズ・ミュージシャンたちで、〈ニュー・イメージズ〉のサイトによれば「よりメロディックで、耳障りでないものをつくりたい」から結成したということだけれど、どういうことだよというくらい対照的な音を作っている。

 ダック・テイルズ=マシュー・モンダニルが主宰の〈ニュー・イメージズ〉からリリースされているのは、音楽性からも人脈としても納得できる。ただ、筆者はフランシスコ・フランコのように手練感のある存在よりも、ディープ・マジックの昨年作(『リフレクションズ・オブ・モスト・フォーゴットン・ラヴ(Reflections Of Most Forgotten Love)』、プリザヴェーション)のような、文芸的な色彩とピュアさをたたえた、才能あふれる感じが好きで、レーベルは違えどディープ・マジックの方に〈ニュー・イメージズ〉の進化形のようなものを勝手に感じたりもする。とはいえ、何度も繰り返し聴くことになるのは間違いない、本当に本当に心地よい作品だ。好きなアルバムとよく聴くアルバムはちょっとちがう。

橋元優歩