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橋元優歩   Jan 30,2014 UP

 ダックテイルズやウッズのウォーミーでドリーミーな、きりもなくつづくギター・アンビエントに、リズムマシーンで簡素なビートを加えたのがフランシスコ・フランコの音だ。いずれも3分から5分の枠に収まるようなトラックだから、きりもないということはないけれど、ミニマルで反復的、展開がほぼないというニュアンスでとらえていただきたい。ノイ! に比較されている。エメラルズというよりもマーク・マグワイヤに近い牧歌性、そしてイナー・チューブのガレージ感や躍動がある。マニュエル・ゲッチングという感じではない。スピリチュアルな要素も薄いように思う。恍惚や忘我ではなく虚脱や弛緩──トランシーなのではなくレイジーな音の波に、心地よくさらわれる体験。

 かといってダックテイルズのようにずぶずぶにならないのは、やはりリズムトラックのためだろうか? “アベル・マナー”の生のドラムのようにも感じられる2ビートのほかは、みな何の工夫も、フィルインさえない単調なプリセットのパターンがオートマティックにつづくだけなのだけれども、硬めのプリンみたいに、音がちゃんと立っている。レイジーともいえるしクリティカルともいえる。そして、ビートを抜いて考えてみても、どこかこのトリオにはスタイリッシュに締まったところがあるように思う。“ホテル・バイ・ザ・レイルロード”のシンセなんか洒落ている。弛緩しながらもポイントをついて、目立たず引き算をする。構築的というか駆け引きがあるというか、それが本当にさりげないレベルで心憎い。
 “ウィターリス”は可愛い。“ワンショルダー・マン”なども、クラウド・ナッシングスから、ちょっと飛んで〈モール・ミュージック〉のパスカル・ピニョンなんかを好きな人まで聴けるのではないだろうか。すごいぞ、どんどん聴ける。何周かすると、全体の構成にも、アンビエントやドローンの作品の方法論ではなく、どちらかといえばポップ・アルバムのルールに近いメリハリや勾配が感じられてくる。

 というこのアルバムを作っているのは、プルリエントやあるいはピート・スワンソンにも似た、ハーシュノイズ吹き荒れるダンス・アルバムを〈ホワイト・デニム〉からリリースしているM Ax Noi Machことロブ・フランシスコと、エア・コンディショニングのメンバーとして活躍するマット・フランコのデュオ。現在はトリオのようだが、フランコでもフランシスコでもないネイト・デイヴィスもアンチェインというノイズ・プロジェクトで活動している。つまり完全にインダストリアルの文脈から出てきたノイズ・ミュージシャンたちで、〈ニュー・イメージズ〉のサイトによれば「よりメロディックで、耳障りでないものをつくりたい」から結成したということだけれど、どういうことだよというくらい対照的な音を作っている。

 ダック・テイルズ=マシュー・モンダニルが主宰の〈ニュー・イメージズ〉からリリースされているのは、音楽性からも人脈としても納得できる。ただ、筆者はフランシスコ・フランコのように手練感のある存在よりも、ディープ・マジックの昨年作(『リフレクションズ・オブ・モスト・フォーゴットン・ラヴ(Reflections Of Most Forgotten Love)』、プリザヴェーション)のような、文芸的な色彩とピュアさをたたえた、才能あふれる感じが好きで、レーベルは違えどディープ・マジックの方に〈ニュー・イメージズ〉の進化形のようなものを勝手に感じたりもする。とはいえ、何度も繰り返し聴くことになるのは間違いない、本当に本当に心地よい作品だ。好きなアルバムとよく聴くアルバムはちょっとちがう。

橋元優歩