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シノザキサトシ   Apr 02,2014 UP

 エレキング読者のみなさん、はじめまして、こんにちは。禁断の多数決というバンドで音楽活動をしているシノザキサトシです。そして、いきなり宣伝で申し訳ないのですが、禁断の多数決のセカンド・アルバム『アラビアの禁断の多数決』はもう聴いていただけたでしょうか? まだ聴いてない。または知らない方がいらっしゃいましたら、ぜひ聴いてみてくださいね。そして聴いて良いと思ったら、まわりの友だちにも教えてあげてください。きっとエレキング読者のみなさんなら気に入ってくれると思います。そんな、おもに音楽活動をしている自分ですが、縁があってレヴューを書かせてもらえることになりました。自分は音楽も文章も基本的には同じ感覚で取り組んでいます。足したり引いたりしながら、固めていく作業は楽しく、日頃の嫌なことを忘れさせてくれます。ましてや文章は、紙とペンさえあればどこでも書けるのです。漢字ができなくてPCで文字を入力することでしか書けない自分が、紙とペンさえあれば、とか、悦に入って気取ったことを言ってしまいましたが、どうかお許しください。なにせこれが初原稿ですので。そして下記がエレキングでの初レヴューとなります。読んでおもしろかったら、まわりの友だちにも読ませてあげてくださいね。それではよろしくお願いします。

 編集部にお邪魔した際、野田さんからエコープレックズのニュー・アルバム『アンフィデリティ』のCDをポンと渡され、これのレヴューを書いてみるかと言われた。すぐに家に帰ってCDを再生させてみた。そして思ったこと。謎すぎる!! この感覚は久しぶりに味わったように思う。スペインのインダストリアルバンド、エスプレンドー・ジオメトリコ(Esplendor Geométrico)を初めて聴いたとき以来かもしれない。いや、それよりも、もっといびつに聴こえた。

 この掴みどころのなさはなんだろう。〈プラネット・ミュー〉から出したこともあってか、そのワードともリンクして、ブリストル発というより、宇宙発の音みたいに感じる。そして、繰り返し聴いているうちに、ポール・アンダースンのSF小説、『タウ・ゼロ』を思い出したのだった。その理由は後で述べるが、知らない読者に『タウ・ゼロ』の内容を簡潔に説明すると、この物語は、設定があまりにもデカすぎて、語っていることすべて気違いじみていると言うことだ。読んでいるうちに、知らず知らずこの自分の生きている現実の世界が、ちっぽけで滑稽なものに成り下がっていく、そんなリアルさえも危うくさせる恐怖小説。

 こんな書き方をすると、読者は大げさだと思うかもしれないが、読めばきっとわかってもらえると思う。たとえばこうだ「宇宙船は光速に近い速さで進んでいる。その為、船内ではたった数時間の経過も、船外では既に数世紀が過ぎてしまった」と飄々と語って読者を脅かしたと思えば、さらには「ここまで進むと地球はとっくに消滅した、宇宙さえも終焉を迎えつつあるのかもしれない」などと、しれーと言って、読む者を宇宙特有の虚無の世界に引きずり込もうとする。意味わからなさすぎて怖い。だがひっくり返すと全部バカバカしいようにも思えて、妙な多幸感が湧いてきたりする。そして思わずニヤリとしてしまう。それが『タウ・ゼロ』の魅力だ。

 要するにエコープレックズのニュー・アルバムは、『タウ・ゼロ』的な──意味わからなくて怖いけど、でもなんだかバカバカしい、そんな要素が存分に詰まっている作品のように思えるのだ。ニック・エドワーズ本人名義で〈エディションズ・メゴ〉から出している音も聴いてみたのだが、やはり同じことを思った。彼の音には、彼だけが理解している理論や哲学が音に滲み出ていて妙な怖さがある。その反面、チープで若干肩すかしな音を次から次へと散らかしながら出してきては知らん顔をする、子どものような無邪気さもある。そして宇宙のように音の中心がどこにあるのか見つけることができない。もしかしたら当の本人も作品がどこへ向かって、どこに着地するのか見当もつかないで録っていたのかもしれない。ニックがアナログ機材といっしょに宇宙船に乗り込んで、あとは野となれ山となれ、成り行き次第、エフェクター同士の化学反応次第という、カオスな宇宙旅行をして得たものではないのか。

 いまいちピンとこなかった読者のために、もうひとつ書いてみようかと思う。これはずいぶん昔の話だが、学生時代に、エコープレックズを初めて聴いたときのような恐怖体験をしたことがある。それは帰宅途中にカセットテープを拾ったのがきっかけだった。昔は道端にカセットテープやらVHSテープがいかがわしい雰囲気を醸し出しながらよく落ちていたものだ。いまでも自分は、なにかしらの記録媒体が道に落ちていると、必ず拾って持ち帰る。いやらしい気持ちでCD-RとかDVD-Rとか再生させて、何が飛びだしてくるかを楽しむのが好きなのだ。このときもそれと同じ感覚で、デッキにカセットテープをセットして、こっそり再生してみた。そして流れだした音に唖然とし、ショックを受けた。いったいこのテープはなんだ? 流れてきたのは感電しそうなビリビリ鳴ってるだけの電子音やモールス信号のような謎めいた音、怪しく奏でられるストリングスや英語でなにか警告しているように聞こえる男の声。なんだか聴いてはいけないものを聴いてしまったようなヤバい感覚に襲われた。誰かに殺されるかもしれないと真面目に思った。いますぐこのカセットを持って警察に相談しに行こうかと迷ったくらいだ。だが、何度も聴いているうちに慣れてきて、この意味のわからなさが快感になり、結局のところ、しばらくこのカセットを愛聴してしまっていたのだった。
 後にそれは『アウターリミッツ』のなんでもないただのサントラだと知ったのだが、しかし、それと解るまでは、掴もうとしても何も掴めない感覚、ソース不明な怪しさで魅力いっぱいのヤバいものだった。この感じはエコープレックズの音楽とかなりの部分で重なると思う。そして、そういう感性はいつまでも大事にしたい。想像や妄想や深読みの余地がたくさんある作品は、いつの時代であれ刺激的だから。エコープレックズのニューアルバム『アンフィデリティ』はそれをじゅうぶんに満たしてくれた。だからこれからもよくわからないながらも、何回も繰り返し聴くことになるだろう。

シノザキサトシ