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Submotion Orchestra

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小川充   Mar 16,2016 UP

 サブモーション・オーケストラは2010年にデビューEPを発表した当時、人力ダブステップ・バンドと評されることが多かった。グループのリーダー的存在のドム・ハワードはラックスピン名義で活動してきたダブステップのプロデューサーであるし、そもそも英国芸術委員会から教会でダブステップの演奏をしてほしいという依頼があったことからグループが結成されたので、こうした形容は間違いではない。ただし、それは彼らの一面をとらえただけに過ぎなかった。ファースト・アルバムの『ファイネスト・アワー』(2011年)においては、確かにリズムはダブステップのそれを踏襲するものだが、同時にジャズやファンクなどの要素も見受けられた。ピアノやトランペットの哀愁に満ちた音色はジャズとダブの融合の賜物であるし、グループの紅一点のシンガーであるルビー・ウッドの憂いを帯びた歌声はとてもソウルフルだった。ダブステップ云々というより、むしろマッシヴ・アタックやポーティスヘッドなどに代表されるUKのダウナーなソウル・ミュージックの系譜を受け継ぐものでは、という感想を抱いた。セカンド・アルバム『フラグメンツ』(2012年)はドラマティックにスケール・アップしたサウンドで、全編を通じてストリングスやホーンのアンサンブルがより強化されていた。深く、美しく沈み込んでいく場面と、エモーショナルな高揚感を放つ場面の対比が鮮やかで、サウンドの構成力やクオリティはシネマティック・オーケストラにも比類すべきものとなってきた。サード・アルバムの『アリウム』(2014年)あたりになると、もうダブステップ・バンドという括りが必要ないように感じる。もちろんダブステップも要素のひとつにあるが、ベース・ミュージック、UKガラージ、ジャズ、ソウルなどが結び付いたクロスオーヴァーなサウンドで、同時に今までの作品からよりポップに進化した面も見せた。

 『アリウム』から2年ぶりとなる通算4枚目のアルバム『カラー・セオリー』は、セオ・パリッシュとの共演で知られるガーナ系のシンガー・ソングライターのアンドリュー・アションはじめ、ビリー・ブースロイド、エド・トーマスなどゲスト・ヴォーカリストが多く参加する。ルビー・ウッドの歌声だけでなく、男性ヴォーカルの導入によって今までにない面を引き出そうとしている姿が伺える。そして、全体的に今までの作品と比べて生演奏の比重が弱まり、それによってエレクトロニックな要素の強い曲が増えている。プロデュースもドム・ハワード(ラックスピン)と個人名になっているように、どうも彼の個人ユニット的な色彩の強いアルバムだ。新鋭プロデューサーのキャッチング・ファイルズやロイス・ウッド・ジュニアらとコラボする曲があるが、そうしたバンド・サウンドでない側面がいろいろなアーティストとのコラボに表われているのだろう。その結果、今までとはまた違うサウンドの方向性を生み出しており、アンドリュー・アションとの“Needs”がその代表だ。アションの歌とギターによるフォーキーなテイストはかつては見られなかったもので、それとエレクトリックなサウンドの融合はザ・xxなどに近いだろうか。“キモノ”はタイトル通り和風の旋律を持つ作品だが、今まではあまり使ってこなかった四つ打ちのビートを用いている。キャッチング・ファイルズとの共作“Ao(エイオー)”も四つ打ち系だが、こちらはゆったりとしたテンポのアンビエントなテイスト。ビリー・ブースロイドが歌う“モア・ザン・ディス”、エド・トーマスとルビー・ウッドのデュエットによる“エンプティ・ラヴ”はジェイムズ・ブレイクの作品に通じる美しい楽曲。エレクトリックなダンス・ビートの“アミラ”や“ジャファ”はボノボの作品を彷彿とさせる。“レッド・ドレス”、“イン・ゴールド”、“イルージョンズ”のような従来の路線の作品も、ドラムの音色などでエレクトリックなテイストが強くなっている。『アリウム』でバンドとしての完成形を見せたサブモーション・オーケストラだが、『カラー・セオリー』では今までとは作品制作のプロセスなども変えているようで、また新しいスタイルに挑戦しようとしているのではないだろうか。

小川充

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