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Bill Laurance

ElectronicJazz

Bill Laurance

Aftersun

Ground Up / ユニバーサル

Tower HMV Amazon

小川充   Apr 18,2016 UP

 ジャズ、ロック、ファンク、ソウル、R&B、アフロ、ラテン、カントリーなど多種の音楽を融合するフュージョン・ジャム・バンドとして知られるスナーキー・パピー。グラミー賞受賞作の『ファミリー・ディナー vol. I』(2014年)の続編『ファミリー・ディナー vol. II』が先にリリースされ、そこではベッカ・スティーヴンス、ローラ・マヴーラ、クリス・ターナーなど進境著しい若手アーティストから、サリフ・ケイタやデヴィッド・クロスビーなど大御所に至る幅広いゲストとの共演を披露していた。彼らの魅力はインプロヴィゼイションに富むライヴ演奏で、このアルバムもライヴ録音によるものだったが、リーダー格のベーシストのマイケル・リーグとともに、バンド結成時からサウンドの核を担ってきたのがピアニスト/鍵盤奏者のビル・ローレンスである。スナーキー・パピーはアメリカで結成されたが、ビル自体はイギリス人で、いまもロンドンを拠点としている(スナーキーの活動時などはアメリカに遠征しているのだろう)。

 クラシック教育を受け、ロンドンのインスティテュート・オブ・コンテンポラリー・ミュージック・パフォーマンスを卒業したビル・ローレンスは、同時に14歳からプロ活動をはじめ、ライヴ・ミュージシャンとしての腕を磨いていった。スナーキー以外にもバレエ、演劇、映画、テレビ、コマーシャル・フィルムなど多方面でも演奏し、ソロ・アルバムも『フリント』(2014年)、『スウィフト』(2015年)と既に2枚発表している。それらソロ作では、クラシックの素養を感じさせる繊細なピアノ・タッチにオーケストレーションを絡め、シネマティック・オーケストラやヘリテッジ・オーケストラなどに通じる壮大で重厚な佇まいの楽曲も披露していた。これらはアメリカ録音で、マイケル・リーグが制作や指揮を行い、演奏にはスナーキー・パピーのメンバーも参加していたのだが、そのスナーキーの『ファミリー・ディナー』のようなポップ寄りの作品とはまた違うアルバムだなという印象を持った。スナーキーはオランダのメトロポール・オーケストラ(現在の指揮者はヘリテッジ・オーケストラのジュールズ・バックリー)とも共演作『シルヴァ』(2015年)を録音するが、その小型編成版的な雰囲気がビルのアルバムから感じられるのは、彼がクラシック教育を受けたことによる部分が大きい。また、『スウィフト』にはエレクトリックなテイストの作品も多かったのだが、ビルが作曲する楽曲にはUKのクラブ・サウンドの影響も表われており、それはビルが日頃接する音楽環境が関係するのだろう。

 『スウィフト』から1年ぶりの新作『アフターサン』はニューオーリンズ録音で、いままでと同じくマイケル・リーグ、ロバート・“シーライト”・スパットというスナーキーの仲間が共同プロデュース/アレンジ、及び演奏で参加する。だが、前2作とはかなりテイストが違うなということをオープニングの“ソチ”を聴いて感じた。アフロ・ビートを取り入れたかなりファンキーなフュージョン・ナンバーで、どちらかといえばスナーキー・パピー本隊が持つライヴ感が露わになっている。前2作にはホーンやストリングス・アンサンブルが入っていたが、本作はビル(キーボード)、マイケル(ベース、ギター)、ロバート(ドラムス)の3人にパーカッションが入った編成で、鍵盤が主要メロディを弾き、シンセによってサウンドを複合していく。従って個々の演奏そのものやインプロヴィゼイションに重きが置かれ、結果として演奏から生み出される熱量やグルーヴが増しているのだろう。それが顕著なのが“タイム・トゥ・ラン”で、ハモンド・オルガンが活躍するアフロ・テイストのジャズ・ファンクとなっている。“バレット”もそうだが、アフロ的なモチーフが多いのが本作の特徴でもある。この曲はディスコ・ダブ的なアレンジが施してあり、そうしたクラブ・サウンドの影響の強さも本作からは伺える。“ア・ブレイズ”はダブ色の濃いナンバーで、表題曲や“ファースト・ライト”でのバレアリック・テイストは70年代フュージョンやジャズ・ロックの現代的な解釈によるものだろう。一方、ピアニストとしてのビルを見ると、“ザ・パインズ”や“ゴールデン・アワー”での叙情的なプレイが光る。“マデリーン”はそうしたリリカルなピアノに対し、クラブ・ミュージックの影響が濃厚な太いビートが組み合わさり、ゴーゴー・ペンギンやバッドバッドナットグッドといった新世代のピアノ・トリオに比類するようなナンバーとなっている。いままでからより力強く進化したことを感じさせるアルバムだ。

小川充