ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Iglooghost - Tidal Memory Exo | イグルーゴースト
  2. Schoolboy Q - BLUE LIPS | スクールボーイ・Q
  3. Pet Shop Boys - Nonetheless | ペット・ショップ・ボーイズ
  4. R.I.P. Steve Albini 追悼:スティーヴ・アルビニ
  5. Adrian Sherwood presents Dub Sessions 2024 いつまでも見れると思うな、御大ホレス・アンディと偉大なるクリエイション・レベル、エイドリアン・シャーウッドが集結するダブの最強ナイト
  6. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ
  7. 『成功したオタク』 -
  8. interview with I.JORDAN ポスト・パンデミック時代の恍惚 | 7歳でトランスを聴いていたアイ・ジョーダンが完成させたファースト・アルバム
  9. 『オールド・フォックス 11歳の選択』 -
  10. interview with Yui Togashi (downt) 心地よい孤独感に満ちたdowntのオルタナティヴ・ロック・サウンド | 富樫ユイを突き動かすものとは
  11. Iglooghost ──イグルーゴーストが〈Brainfeeder〉よりデビュー・アルバムをリリース
  12. interview with Jim O’Rourke 私は音楽を楽しみのために作っているわけではありません(笑)  | ジム・オルーク、インタヴュー
  13. Sisso - Singeli Ya Maajabu | シッソ
  14. Sun Ra ——生涯をかけて作り上げた寓話を生きたジャズ・アーティスト、サン・ラー。その評伝『宇宙こそ帰る場所』刊行に寄せて
  15. Cornelius ──コーネリアスがアンビエント・アルバムをリリース、活動30周年記念ライヴも
  16. seekersinternational & juwanstockton - KINTSUGI SOUL STEPPERS | シーカーズインターナショナル&ジュワンストックトン
  17. みんなのきもち ――アンビエントに特化したデイタイム・レイヴ〈Sommer Edition Vol.3〉が年始に開催
  18. Columns ♯6:ファッション・リーダーとしてのパティ・スミスとマイルス・デイヴィス
  19. interview with Keiji Haino 灰野敬二 インタヴュー抜粋シリーズ 第3回
  20. Columns R.I.P. フィリップ・シーモア・ホフマン Philip Seymour Hoffman (1967-2014)

Home >  Reviews >  Album Reviews > !!! (Chk Chk Chk)- Shake The Shudder

!!! (Chk Chk Chk)

DiscoFunkIndie Rock

!!! (Chk Chk Chk)

Shake The Shudder

Warp / ビート

Tower HMV Amazon iTunes

デンシノオト   Jun 13,2017 UP

 「構造と力」。この浅田彰の著書をアルバム・タイトルに掲げたのは2003年のデートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンだったが、確かに、ダンス・ミュージックは「構造と力」の音楽である。ドラムとベースを背骨としつつ、ギター、キーボードなどの和声・旋律楽器が音楽を彩る・生む。そして、その「構造」には身体を動かす力、つまりは律動が生まれている。まさに構造と力。

 2000年代初頭の80年代リヴァイヴァル期(ノーウェイヴ/エレクトロ・リヴァイヴァル)において、当時のトレンドであった〈DFA〉がNWリヴァイヴァリーなディスコ・パンクの後継だったとするなら、チック・チック・チックの根底には無骨ながらハウス・ミュジックがあった。つまりは享楽的なのである。そして、彼らの7作めのアルバムである本作において、その享楽性はいっそう強くなっていた。こんな戦争とテロの時代だから? つまりはトランプ政権時代のダンス・ミュージック? まあ、いずれにせよ、まさに「恐れを振り払え!」だ。強く、しかし柔軟なビートに、幾人ものボーカリストが召喚され、盛り上げていく。その反復されるビートやフレーズは、摂取するほどにどんどん体に効いてくる音楽なのである。
 レコーディングはバンドのホームであるブルックリンでおこなわれたという。ゲストボーカルには、UKのシンガー、リー・リー、シンガーソングライター/女優のミーア・ペイス、そしてグラッサー名義でも知られるキャメロン・メジロー、チェロ奏者/シンガーのモーリー・シュニックなどが参加している。彼もまたエレガントにアジテーションするように、トラックを盛り上げていく。

 何はともあれ、まずは4曲め“NRGQ”を聴いてほしい。性急なギターのカッティングとビート、シンプルなベースライン、リー・リーらのコーラスを追いかけるシーケンス。中間部のラップ・パート、サビのコーラス。チック・チック・チック史上最高ともいえるダンス・ミュージックの醍醐味が1曲の中に凝縮されているといってもいい。この曲には、「この最高の瞬間はやがて消え去ってしまう」という諦念と、しかし、それゆえ「この瞬間の生は永遠だ」という圧倒的な肯定感が横溢している。刹那と肯定。これもまた構造と力である。

 本作のサウンドには、80年代初頭のNYのダンスフロアのムードを2017年の今、再生するという倒錯的な快楽に満ちている(むろん、私は体験したことがないので想像でしかないが、そのような想像をかきたてる作品であること自体が音楽の豊かさではないか?)。こんな最低・最悪な時代だからこそ、「音楽」という瞬間の享楽にすべてを賭けること。世界を笑い飛ばすこと。世界に、権力に、抑圧に、従わないこと。彼らは「この打ち砕かれたような状況から、何か美しいものが育ってほしい」というメッセージも発しているというが、それはつまり「音楽をする」ということであろう。
 この作品は、いわば、希望と抵抗のアルバムなのだ。「戦争に反対する唯一のことは」という有名な言葉がある。ある文学者の名文句だ。2017年現在、その後に続けるとするなら、こうなるだろうか。「踊り続けること」ではないか。闘争でも逃走でもない。踊り続けること。それは「人生」そのものだ。生きている限り、それは永遠に鳴り続ける。構造と力。踊らせること。踊ること。この身体と音楽との関係性において、ダンス・ミュージックは、どんなに最悪な状況にアジャストしつつも、しかし、本質的に心身ともにヘルシーな音楽であるのだ。ダンス・ダンス・ダンス!


デンシノオト