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Garden City Movement

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デンシノオト   Oct 11,2017 UP

 夏は終わる。必ず終わる。と思っていてもなかなか終わらないのも夏というものだ。今年の夏も長かった。日本はどこか亜熱帯な気候になってしまった。今や「エンドレス・サマー」は儚い夏の記憶というより、いつまでも終わらない夏に対する飽き飽きする感覚に近い。ロマンティックで、その一瞬、刹那にしかない楽園の記憶としての「エンドレス・サマー」は、既に一種のファンタジーだったのかもしれない。だが音楽はファンタジーである。ブライアン・ウィルソンはサーフィンができなかった。だから終わりゆく永遠の夏を音楽にすることができた。人は現実のむこうにファンタジーを感じるゆえに生きていける。夢のむこうへ。

 2001年にリリースされたフェネスの『エンドレス・サマー』以降、たとえば、マニュアル、グリム、イーサン・ローズなどエレクトロニカもまたビーチ・ボーイズ的な夏の記憶=エンドレス・サマーをポップスの並行世界的に継承してきた(00年代初頭のエレクトロニカが90年代のシカゴ音響派などのポストロックやハイ・ラマズなどのモンド・ポップを継承するものであったことの証でもある)のだが、今回紹介するイスラエルのユニット、ガーデン・シティ・ムーヴメントも、その系譜に加えてみたい。
 メンバーはRoi Avital(ヴォーカル、キーボード、ギター)、Joe Saar(ギター、サンプラー、キーボード)、Johnny Sharoni(ヴォーカル、ギター、サンプラー、パーカッション)の3人。イスラエルの人口第二の都市で「中東のヨーロッパ」とも呼ばれるテルアヴィヴで2013年に結成された。地元の優良インディ・レーベル〈BLDG5 Records〉からすでに4枚のEPをリリースしているユニットである。

 イスラエルは遠い。北にはレバノン、北東にはシリア、東にはヨルダン、南にはエジプトだ。そして彼らからみても日本は遠い。だが今はインターネットがある。そもそもインディ・シーンの少ないイスラエルにあって、インターネットで繋がる外国のシーンの方がより「近い」感覚なのかもしれない。じっさい、ガーデン・シティ・ムーヴメントは、今のエレクトロニック・ポップ・ミュージックだ。
 と「今の」、と思わず書いてしまったが、本作『Move On』は、ガーデン・シティ・ムーヴメントの日本特別編集盤である。本盤は2013年の「Entertainment」と2014年の「Bengali Cinema」のEP 2枚に加えて、最新シングル「She's So Untouchable」や初フィジカル化の音源などを日本独自にコンパイルしたアルバムなのである。つまり2013年から2016年までの3年分のトラックが収録されているわけだ。MVにMayan Toledanoを起用し、YouTubeで200万再生を記録した“Move On”は2013年の曲だ(Mayan Toledanoはアーティストであり、彼らのレーベル〈Me and You〉共同創始者)。
 だが不思議と4年の月日を感じさせないのだ。たしかにジェイムス・ブレイク以降のサウンドなのだが、彼らの音楽には不思議と普遍性がある。エンドレス・サマーの感覚だ。それは少年/少女の記憶の封じ込めなのかもしれない。

 エレクトロニカといってもガーデン・シティ・ムーヴメントの曲はどれもインディ・ロック的であり、ネオ・ソウル的ともいえる。アルバムは1曲めから4曲めまでがEP「Entertainment」収録曲で、5曲めから8曲めまでがEP「Bengali Cinema」収録曲となっている。9曲めから12曲めまでがシングル「She's So Untouchable」収録の表題曲や12インチ・ミックス、コンピレーション・アルバムなどに収録された初フィジカル化の新曲などを収録している。
 1曲め“Casa Mila”からガーデン・シティ・ムーヴメントらしさがあふれている。エディットされたヴォーカルに、夏の夕暮れの空気を感じさせる電子音とコード、細やかなビート。2曲めは彼らの代表曲ともいえる“Move On”。ぐっとBPMを落としたトラックに甘いギターとヴォーカル、ゆったりしたビートの向こうに聴こえる微かな雨の音のような環境音の組み合わせも心地良い。ちなみに“Move On”は、Teen Dazeのリミックスも知られている。4曲め“The More You Make It”はヴォーカル・エディットが控えめになり、ディスコ・ソウル風味のキャッチーな曲を聴かせる。これは2016年のシングル曲“She's So Untouchable”に聴くことができる傾向で、とても良いと思う。


 5曲め以降の「Bengali Cinema」収録曲では7曲め“Lir”に注目したい。おだやかなアコースティック・ギターとエモーショナルな電子音。彼らの曲には、良質で控えめなエモーショナルさがあるのだが、それが楽曲のメロウさを際立たせている。ボーナス・トラック曲では“The Best Of Times?”が素晴らしい。2016年にリリースされた〈BLDG5〉のレーベル・コンピレーション・アルバム『Nightingale Floor Compilation』に収録されたトラックなのだが、夜の空気に満ちたネオ・ソウル的な曲だ。

 以上のように、幅広いリスナーにアピールできそうトラックばかりである。細やかにエディットされた電子音とヴォーカル/メロディ、フローティングする甘いコードのレイヤーは、聴き手を夢の中のビーチへと誘うようなメロウな感覚に満ちている。秋が来て、やがて冬が来ても永遠の夏を夢想したい。そんな永遠のポップ中毒者におすすめしたい1枚だ。
 何より本アルバムはアートワークといい曲の並びといいオリジナル・アルバムといっても過言ではない統一感がある。 ガーデン・シティ・ムーヴメントを初めて聴くリスナーにとって最高の入り口になるだろう。

デンシノオト