ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Bandcamp ──バンドキャンプがAI音楽を禁止、人間のアーティストを優先
  2. DJ Python and Physical Therapy ──〈C.E〉からDJパイソンとフィジカル・セラピーによるB2B音源が登場
  3. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  4. interview with Sleaford Mods 「ムカついているのは君だけじゃないんだよ、ダーリン」 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー
  5. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  6. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  7. Daniel Lopatin ──映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』のサウンドトラック、日本盤がリリース
  8. interview with bar italia バー・イタリア、最新作の背景と来日公演への意気込みを語る
  9. aus - Eau | アウス
  10. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  11. 見汐麻衣 - Turn Around | Mai Mishio
  12. Ken Ishii ──74分きっかりのライヴDJ公演シリーズが始動、第一回出演はケン・イシイ
  13. 橋元優歩
  14. R.I.P マジック・アレックス,マジアレ(村松誉啓)
  15. Geese - Getting Killed | ギース
  16. IO - Soul Long
  17. Masaaki Hara × Koji Murai ──原雅明×村井康司による老舗ジャズ喫茶「いーぐる」での『アンビエント/ジャズ』刊行記念イヴェント、第2回が開催
  18. 野田 努
  19. R.I.P. Steve Cropper 追悼:スティーヴ・クロッパー
  20. Ikonika - SAD | アイコニカ

Home >  Reviews >  Album Reviews > DJ Taye- Still Trippin’

DJ Taye

FootworkGhettoRap

DJ Taye

Still Trippin’

Hyperdub

Tower HMV Amazon iTunes

野田努   Apr 10,2018 UP

 DJテイがビートを作り、同時にラップをはじめたのは11歳のとき、つまり小学時代のことだった。16歳になると彼は地元のクルー、故DJラシャド、DJスピン、トラックスマン、DJアールらのTeklifeに最年少メンバーとして加入する。

 シカゴのジューク/フットワークが発見されてから、そろそろ10年が経とうとしている。昨年はジェイリンの素晴らしい『ブラック・オリガミ』があって、今年はまずはDJテイの『スティル・トリッピン』というわけだ。DJテイの名は、OPNが3曲も参加したDJアールの『オープン・ユア・アイズ』でもクレジットされているが、わりと早いうちから〈ハイパーダブ〉がEPを出しているので、Teklife期待の若手がいよいよ同レーベルからの初アルバムを発表ということでシーンでは盛り上がっている。

 DJテイは、18歳のときに最初のアルバムを自主で出しているのだが、そのタイトルは『オーヴァードーズ・オン・テックライフ』という、若気の至りに尽きるタイトルを冠している。そして今回は、『スティル・トリッピン』、「まだぶっ飛んでるぜ」というわけだ。
 とはいえ、『スティル・トリッピン』は23歳の若さにまかせてぴょんぴょん跳びはねるというよりは、音楽的にじっくり聴かせる側面を持ち合わせているアルバムだ。ヒップホップ色も強く、ことトラップからの影響も見せてはいる。もちろん、ここ10年で発展したシカゴの革新的なダンスのビートはある。
 しかしたとえばカナダの女性シンガー、オディール・ミルティルをフィーチャーした“Same Sound”における優雅なソウル・テイスト、テンポを落とした“9090”や“Anotha4”におけるドリーミーな叙情、ニュージャージーの女性DJ、UNiiQU3を招いての活気溢れる“Gimme Some Mo”、女性シンガーのファビ・レイナをフィーチャーしたチルアウト・トラックの“I Don't Know”……。
 アルバムには多様性があり、DJペイパルやDJメニーたちに混じって、シカゴのダンスバトルには女性陣もいるんだよと言わんばかりに女性たちも参加し(サンプリングではなく実演として)、早熟なDJテイの音楽的な才能はいろんな意味で光っている。なかでも“Trippin”は最高の出来の曲のひとつ。

 うーん、日本語の「フットワーク」という文字がデザインされたジャンバーも格好いいです。そしてフットワークらしいすばしっこい動きを見せる“Need It”や“I'm Trippin”──。
 「トリップ」という言葉には、もちろん「旅をする」という意味も含まれているわけだが、じっさいにこうしてロンドンの〈ハイパーダブ〉から新作がリリースされているのであり、シカゴのフットワークはいまも世界を旅行中なのだ。シカゴがこの「旅」を止めたことはない。ハウス・ミュージックが生まれたときからずっと、シカゴはいまもなお、アンダーグラウンド・ダンス・ミュージックの王国である。

野田努