ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 猛暑をやり過ごすためのサウンドトラック -
  2. interview with LEO 箏とエレクトロニック・ミュージックを融合する
  3. Homie Homicide ──これまでライヴやSoundCloudで評判を上げてきた東京の4人組インディ・バンド、ついにデビューEPを発表
  4. Stereolab - Instant Holograms On Metal Film | ステレオラブ
  5. Greil Marcus ——グリール・マーカス『フォーク・ミュージック——ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』刊行のお知らせ
  6. MOODYMANN JAPAN TOUR 2025 ——ムーディーマン、久しぶりの来日ツアー、大阪公演はまだチケットあり
  7. Nick León - A Tropical Entropy | ニック・レオン
  8. interview for 『Eno』 (by Gary Hustwit) ブライアン・イーノのドキュメンタリー映画『Eno』を制作した監督へのインタヴュー
  9. Derrick May ——デリック・メイが急遽来日
  10. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  11. Columns LAでジャズとアンビエントが交わるに至った変遷をめぐる座談会 岡田拓郎×原雅明×玉井裕規(dublab.jp)
  12. Columns #14:マーク・スチュワートの遺作、フランクフルト学派、ウィリアム・ブレイクの「虎」
  13. Theo Parrish ──セオ・パリッシュ、9月に東京公演が決定
  14. What's in My Playlist 1
  15. Pulp - More | パルプ
  16. Susumu Yokota ——横田進の没後10年を節目に、超豪華なボックスセットが発売
  17. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか  | R.I.P. Frankie Knuckles
  18. R.I.P. Brian Wilson 追悼:ブライアン・ウィルソン
  19. Ellen Arkbro - Nightclouds | エレン・アークブロ
  20. 別冊ele-king イーノ入門──音楽を変革した非音楽家の頭脳

Home >  Reviews >  Album Reviews > Octavian- SPACEMAN

Octavian

UK Rap

Octavian

SPACEMAN

Black Butter

Spotify iTunes

米澤慎太朗   Oct 02,2018 UP

 UKのラッパー、オクテヴィアン(Octavian)が期待の最新のミックステープ『SPACEMAN』をリリースした。鼻歌のようなギャングスタ・ラップ、ジェイムス・ブレイクやボン・イヴェールから影響を受けたという空間的なダンス・ミュージック、その「型にはまらない」スタイルにすぐに虜になった。

 オクテヴィアンは南ロンドン出身のラッパー。アデルらを輩出した名門の音楽学校ブリットスクールに奨学生として入学したものの退学し、ホームレスになったときもあったという。昨年頃から彼のキャリアが変わり始めた。オクテヴィアンのシングル“Party Here”がドレイクの目にとまり、彼がオクテヴィアンのヴァースを歌うインスタ ストーリーをアップしたからだ。

 ドレイクのフックアップで話題になると、ルイ・ヴィトンのメンズファッションのディレクターを務めるヴァージル•アブローがルイ・ヴィトンの2019年SSコレクションのランウェイにも抜擢。メジャー契約も掴み、いまファッション界からも注目されるヒップなラッパーのひとりとなった。

 満を持してリリースされた『SPACEMAN』はメロディックなビートの上で紡がれるオクテヴィアンの「リヴェンジ」のストーリーだ。

もし俺が銃を買ったら、お前の顔にぶっ放してやる
逃げる道はどこにもない、ギャングもおまえを見捨てる、
お前に安全な場所はない “Revenge”
あのニガはファックだ
あのニガはうけつけねぇ
あのニガをぶっ潰してやる
一発はケツに、一発は口に、
もう一発はあいつらの仲間に
 “Break That”

 ヴァイオレントな歌詞はUKラップの十八番でもあるが、彼のメロディックなラップと歌詞の内容は不思議なバランスを保っている。不敵な笑みを浮かべるオクテヴィアンの姿が頭に浮かぶ。

 先月、オクテヴィアンがイタリアのブランド Stone Island の東京店のオープニング・パーティに初来日・ライヴを披露した。オクテヴィアンはビターなサウンドとダンスビートを柔らかに乗りこなしつつ、時折自身もリズムを身体で刻む。ライヴの中盤、DJからの「フロアにモッシュピットを作らせろ」という指示にも従わず、淡々と曲を披露していく。「モッシュすること」はいまのUS・UKのラップのライヴの定番となっているが、おきまりのライヴはやらないようだ。それでも、最後にムラ・マサの客演曲“Move Me”のビートが流れると、前列では自然とモッシュが起こった。

俺がお金を積み上げるところを見るだろ
あいつらだって俺を見てる、
あいつらだって俺みたくなれたのにな

あいつらはファミリーを待ってる
俺に逆らうことだってできない
だって、俺はリアルなドンダダ
俺やブラザーに近づくこともできない
そう、近づくことだってできないんだ
Mura Masa “Move Me feat. Octavian”

 型にはまったスタイルから遠く離れて、軽やかにラップの可能性を追求しているようだ。その様子は自由でエキサイティングだ。

米澤慎太朗